2月11日(金・祝)、映画『北風アウトサイダー』の初日舞台挨拶が実施され、自身と自身の周りの在日コリアンに起こったエピソードを本作に込めた監督・脚本・主演の崔 哲浩及び、日本人キャストが登壇した。崔監督は、『ホタル』(2001)で共演した高倉 健の影響などについて、田中あいみ、秋宮はるかは不妊症・養子問題・在日問題に揺れた役について話した。
初日舞台挨拶にキャスト一同は、タイトルにかけて作ったサイダーの瓶を持って登壇。
監督・脚本・主演の崔 哲浩は、日本生まれの在日コリアンで、小6の時の朝鮮学校から日本の学校に転校して在日コリアンのことも日本人のことも両方分かるとのこと。監督第1作目を在日コリアンの4兄妹とその周りの人々の話にした理由について聞かれ、「脚本を書く上で、自分の実体験を書く方が説得力があるかと思って、8割位は自分の幼少期に(自分と周りの人が)実際体験したものを盛り込みました」と答えた。
涙を流すシーンの撮影では、『ホタル』で共演した高倉 健の影響があるそう。「(高倉 健さんは)撮影中は一切涙を落とさなかったんですけれど、撮影が終わった後に、健さんがおもむろに歩き出されて、涙されてたんです。それを見て、『男の役者はカメラの前で泣いちゃダメなんだな』と思いました。男の泣くシーンはなるべくカットして、『女優はカメラの前で泣いていい』と思い込んでいます」と話し、涙の熱演シーンを短くされた伊藤は隣で苦笑い。
櫂作真帆は、演じたミョンヒについて、「私の役は、漢字で書くと『明姫』なんです。映画の中では、事件や問題が起こったりするんですけれど、みんなが笑顔で過ごせることを一番に考えている人物と思って演じました」と話した。
伊藤 航が演じた次男のチョロという名前は、崔監督のお名前・哲浩の韓国語読みだそう。チョロを演じる上で崔監督から参考にした部分を聞かれ、「厳しい部分もある方なのですが、優しさと厳しさは紙一重なので、大きい愛を持っていらっしゃる方だと思って、そこを参考にしました」と回答した。
チョロの妻・朱美を演じた田中あいみは、「朱美は、幼い頃に母親を亡くして、父親に育てられてきて、どこか寂しいと思っていて、そんな中チョロと結婚することになって、キム家の中でやっと落ち着ける自分の居場所を見つけた矢先に、自分が不妊症であるという現実を突きつけられます。悲しい中で、養子のナミが来て。何か問題が起きる度に、『自分が子供を産めなかったせい』という、後悔や悲しみや皆への感謝を常に考えて演じました」と述懐した。
秋宮はるかが演じた高校生のナミは、チョロと朱美の養子役。「思春期という難しい年頃の女の子を演じたんですけれど、養子ということだけでなく、そういう年頃の子は進路や友達だとかの悩みもある中で、在日コリアンということも悩みの一つだと思いました。この年頃の子が問題や悩みにどう葛藤して自分の中で答えを導き出していけるのかというところはすごく考えました」と話した。
新宮里奈が演じたオモニ食堂で働く日本人の和希は、「これ以上あなたたちを変な目で見たくないんですよ」という辛辣なセリフも。「私は初めて在日の方と友達になった時に、知り合って間もない段階で、『北朝鮮に行ってみない?』って冗談で言われた経験があるんです。それまで人を偏見の目で見たり敬遠するということはなかったんですけれど、拉致問題がある中で一歩引いてしまった経験があるんです。そういう感覚と、和希は似ている心境の瞬間があったんじゃないかというところを、私の経験を元に素直に演じてみました」と役に込めた想いを話した。
本作は、今後、なんばパークスシネマ(大阪)、第七藝術劇場(大阪)、神戸国際松竹(兵庫)、京都みなみ会館(京都)、名演小劇場(愛知)、刈谷日劇(愛知)、千石劇場(長野)、イオンシネマ春日部(埼玉)、イオンシネマ金沢(石川)、イオンシネマ県央(新潟)、イオンシネマ桑名(三重)、イオンシネマ広島西風新都(広島)、福山駅前シネマモード(広島)での上映が決まっている。
登壇者:崔 哲浩、櫂作真帆、伊藤 航、新宮里奈、田中あいみ、秋宮はるか
公開表記
配給:渋谷プロダクション
シネマート新宿にて公開中 全国順次公開
(オフィシャル素材提供)