イベント・舞台挨拶

『零落』完成披露プレミア上映会舞台挨拶

©2023 浅野いにお・⼩学館/「零落」製作委員会

 映画『零落』の完成披露プレミア上映会が都内で行なわれ、舞台挨拶にキャストの斎藤 工、趣里、玉城ティナ、メガホンを取った竹中直人監督と、浅野いにお(原作者)が登壇して作品についてクロストークを繰り広げた。

 本作は、青春漫画「ソラニン」から約11年後に連載され、漫画家として残酷なまでの“業”を描いて浅野いにおの新境地となった衝撃の問題作の映画化。8年間の連載が終了した漫画家の深澤 薫(斎藤)が、自堕落で鬱屈した日々の中で人生の岐路に立つさまが描かれる。

 『無能の人』から10本目の監督作となる竹中は、書店で原作を手に取るなり、映画化したいと熱望したことを明かし、登壇したキャスト陣に目をやると、「僕の大好きな人たちがズラッとステージに並んでいて、胸がいっぱいで、夢を見ているようで、ものすごく切ないです。本当にみんな大好きな方なので、落ち着かないまま心が震えています」と自身の感動を思い入れたっぷりに伝える。

 主人公の元人気漫画家・深澤 薫役を務めた斎藤は、深澤について「心当たりしかない」と感じるほどに共鳴したという。深澤を演じるにあたり、エピソードを語った。
 竹中監督と以前にコラボした『ゾッキ』の映画宣伝中に、斎藤は竹中監督と一緒に食事する機会があり、その際に直接出演のオファーを受けたと言う。竹中監督が「次は浅野いにおさんの『零落』を撮ろうと思っているんだと話すと、すぐさま、斎藤が『大好きです』と返したので、竹中監督は『じゃ深澤やる?』と興奮気味に伝え、一気に話が進んだという話を明かした。


 2人で食事した日は、たまたま共演の山田孝之が他の仕事でいないときで、斎藤は「その時に山田さんがいて監督と一緒に食事に行っていたら、深澤の役は山田さんだったかもしれません」と話すと、竹中監督は「それはないだろう!」と斎藤の不安を一蹴した。

 深澤と出会う風俗嬢・ちふゆ役を努めた趣里は「いにお先生の描いた女の子を演じるというのは、それはそれはプレッシャーでした。竹中監督が明確にイメージを伝えてくださったので内側からちふゆというキャラクターが出来ていきました」と竹中監督に感謝を伝えた。

 猫顔の少女役を務めた玉城は、深澤の魅力について、「身勝手を自分で許しちゃっているところがかわいらしいと思います。才能があるからこその残酷さみたいなものを感じ取っています」と分析していた。

 原作者の浅野は「そもそも原作は私小説風というか、赤裸々な内容なので……。こういう場にどういう顔をして出てくればいいのか、分からないのですが、なかなかこういう機会もないので、今日はお邪魔させていただきました」と挨拶。
 竹中監督の熱い思いで映画化された本作について、浅野は「もともと原作は、みんなが面白いと思うようなものではないと思います。竹中さんと僕って、根底の部分では近しい部分があって、共鳴したのかなと思います。出来上がりにも満足していますし、竹中さんありきの映画だなと思っています」と話した。また、オファー後には、浅野は「竹中さんからとんでもない量のLINEが来た」と笑顔で明かしていた。

 本作について斎藤は「原作に出合ったのは5~6年前で、ミドルエイジ・シンドローム(中年症候群)みたいなものだったのかもしれない。最近は(スティーヴン・)スピルバーグも自分の内側に向き合う作品を作っています(『フェイブルマン』)。本作は浅野いにお作品の中でも、最も内臓を描いてくれています。その内臓が自分なんじゃないかと思えるような衝撃的な出来事という印象がありました」とコメントした。
 さらに「自分の中にある”心当たり”を頼りにして演じていました。つらいような楽しいような時間でしたが、できあがったものを見て、それは間違っていなかったなと思いました」と撮影を振り返った。

 劇中に「もう、やってらんねえよ こんなの」という場面があることにちなみ、「うんざりだよ」と思ったエピソードを聞かれた斎藤は、「う~ん」と少し考え込み、「タクシーで空車だと思ったら迎車だったんです。意味としては全然違うじゃないですか。なんで同系色なんだろうと思いませんか? どうにか色味を変えてほしいと思います(苦笑)」とコメントした。
 趣里は「掃除をしてもしても、なぜか髪の毛が落ちているとき」とコメント。

 また、「犬派か猫派か? 最近癒やされるものは?」という質問に、玉城は「犬派です」と答え、「暖かいグッズに撮影中は癒やされています」と続けた。浅野は「飼っているので、猫派。『零落』でいうとちふゆという存在は癒やし。でもそういうものはずっといてくれない。癒やしは求め続けて、流浪していくものだと思います」と話すと、その答えを聞いた竹中は「かっこいいな、憧れちゃう!」と大興奮だった。そんな竹中は犬派で、一時期12匹もの捨て犬を拾って育てていたことを明かした。

 登壇者:斎藤 工、趣里、玉城ティナ、竹中直人監督、浅野いにお(原作者)

(取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:日活/ハピネットファントム・スタジオ
 2023年3月17日(金) テアトル新宿ほか全国ロードショー

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