京都国際映画祭2018 クリエイターズ・ファクトリーほか9つの映画祭にてグランプリを受賞した他、文化庁メディア芸術祭2019 新人賞(大森 歩)、TAMA NEW WAVE ベスト女優賞(古川琴音)も受賞した短編映画『春』が、10月1日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて、大森歩監督の新作『リッちゃん、健ちゃんの夏。』(出演:武イリヤ 笈川健太)と同時上映される。この度、本作で映画初監督となった大森 歩監督のオフィシャルインタビューが届いた。
大森 歩監督
東京生まれ。愛知県の大森牧場で育ち、実家は骨董屋。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。
Club_A所属、CMディレクター。ダイワハウス「かぞくの群像」、ミルボン「美容室の帰り道」、ケアリーヴ「僕は、ばんそうこう」、ラインクリスマス、マンダム・ビフェスタなど。
本作『春』が映画初監督作となる。
2021年公開作に【SSFF & ASIA 2020 クリエイターズ支援プロジェクト】の短編映画『卵と彩子』(出演:剛力彩芽、岡山天音)がある。
本作の制作の経緯をお教えください。
予備校と大学1~2年の時に、上京しておじいちゃんと一緒に暮らしていました。社会人になって7~8年しておじいちゃんが亡くなった時に、当時、自分の中に気持ち悪さや吐き出したい気持ちとかがあり、映画で表現しようと、おじいちゃんと暮らしていた時のことを思い出しながら脚本を書きました。「映画を作りたい!」というより、おじいちゃんや自分に対して、モヤモヤする部分をひとつ形にしたいという気持ちが先でした。
アミ役の古川琴音さんのキャスティング理由は?
アミ役では18歳から23歳位の女優さんから気になる女優さん3人位にお会いしたのですが、自分自身が映画は初めてだったので、役にあってるとか雰囲気よりも、信頼できる、任せられるほどの役者さんに頼もうと思いました。古川さんに初めて会った時は、圧倒されました。上手い下手とかの次元ではなく、役が確実に存在していると思い、『ガラスの仮面』の北島マヤを見ているような気分になりました。当時古川さんはまだデビューしたばっかりだったんですけれど、古川さんに全部任せようと思いました。
ジィちゃん役の花王おさむさんは、ご一緒していかがでしたか?
花王さんはキャリアも長く、舞台が多いので、全身で表現される役者さんでした。特に重要な独白シーンではアミに伝える説得力があって、言葉に重みを感じました。
どのくらいが実話なんですか?
一握りな気も、半分くらいな気もします。結構創作もあります。おじいちゃんとの二人暮らしは、実際は苦しいというより、もっと楽しかったです。
そうなんですね! どのシーンにもリアルがあったように感じました。
その時に思った「ムカつく」とか切ないとかそういう感情が大事だと思うので、事・物よりかは、空気の重さとか軽さに共感してもらえたら嬉しいです。
春から翌年の春までの話ですけれど、タイトルを『春』とした理由をお教えください。
もともと『家』というタイトルだったんですけれど、編集の途中で、『家』じゃないなと思いました。『家』というと家族という結びつきが強くなるし、閉鎖された檻の中に入っている気がして、見ていて逃げ場がなくなって苦しくなって嫌だなと思いました。春夏秋冬春という構成は考えていたので、人間の常として、「巡っていく」だとか、認知症だとかを感じさせられるのではないかと思いました。また、アミが大人っぽくなって、おじいちゃんが子どもっぽくなっていく話なので、「思春期」だったり、「青春」「色めき」……気持ちがワクワクすることにも使う「春」という言葉は、ちょうどいいなと思いました。
劇中の広告のゼミで主人公・アミが作るチョコレートの広告のエピソードには、監督の本職が広告業だからこそ、日々感じていることが込められているのかと思いましたが、いかがですか?
私は油絵やアニメばかり描いていたので、大学で広告のグラフィックデザイン科に入っても、広告のことは分からずに、気持ちだけでデザインを制作していました。先生に怒られたり、「そんなんじゃダメだよ」と言われたことが多かったです。広告として表現することと、自分の内面を表現することは全然違って、美大だとその差を考えながら自分の道を考えていく人が多いと思います。最初、社会の一員として広告を作るということができなかったアミが、大人になる過程を描いています。
アニメオタクの同級生・橋本に込めた思いはありますか?
本作のキャラクターは、私の仲の良い友達や自分自身がモデルになっています。みんな絵がうまかったり、何か表現するのが得意っていう状態で美大に入って、迷いながらやっていくんですが、18歳位から画風や作風が変わらない人がいて、そういう作家性がある人って一番強いと思うんです。売れる売れないではなく、好きなものがあって、好きなものを武器にしている人は少ないです。私の親友は、オタクではないですけれど、17歳位から描く絵や好きなものが全く変わらないので、そういう作家としての強さをモデルにしました。
読者の方々へのメッセージをお願いします。
もし観に来てもらって、思うところがあれば、なんでもつぶやいていただけたら嬉しいです。Twitterが大好きなので、どんな意見や感想も隈なくチェックしますし、たまにリプしたりもします。人の意見に興味津々です。
公開表記
配給:アルミード
10月1日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)