大槻泰永(おおつき・ひろのり)は、上京してから32年、サラリーマンをしながら真黒毛ぼっくすとして活動を続けているミュージシャン。酔いどれな印象ばかりが先行してしまうが、ライブ活動だけでなく、大槻の日常を追い、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)や石川浩司(パスカルズ/ホルモン鉄道/ex.たま)などのミュージシャン仲間や元妻、娘なども取材することで、大槻の新たな一面も垣間見れ、あがた森魚とのライブタイトルを冠した代表曲「酔いどれ東京ダンスミュージック」の歌詞の内容も深みを増して感じられてくる、愛すべきドキュメンタリーが誕生した。
9月17日(金)の初日舞台挨拶には、被写体の大槻泰永及び大学時代に大槻を追った長瀬由依監督が登壇し、裏話などを語った。
冒頭大槻は、自身を追ったドキュメンタリーが公開された心境を聞かれ、「ようやくここに来られて、こんなことがあるなんて、本当に嬉しく思います」と挨拶。
大槻が本作をYouTubeにアップすることを提案したそうだが、長瀬監督は、「劇場公開をしてもらえるとは思っていなかったんですが、YouTubeって短い動画を楽しむイメージがあったので、そこにこの作品をあげるのはと思ってお断りしました」とのことで、念願の映画館での公開となった。
監督は、東京藝術大学に在学中の2017年春から年末まで大槻を撮影し、未完のまま卒業して、完成させた。大槻のドキュメンタリーを撮ることになった経緯を聞かれ、「大槻さんに最初に出会ったのは、大槻さんのライブです。そのあとに偶然最寄り駅で大槻さんをお見かけして、話しかけました。近所に住んでいたので、それもあってたまに飲みに誘ってもらって、お話をして、大槻さんに興味を持って撮らせてほしいとお願いしました」と説明。大槻は、「映画を撮られるなんてありえないことだからありがたかったです」と答えた。
本作は、石川浩司(パスカルズ/ホルモン鉄道/ex.たま)、大木温之(ピーズ)、曽我部恵一(サニーデイ・サービス)、知久寿焼(知久寿焼ちんどん楽団/パスカルズ/ex.たま)、中川五郎、ロケット・マツ(パスカルズ)とのライブの演奏やレコーディングの様子も収められている。大槻は本作を振り返り、「長瀬監督が撮ったのは半年くらいなんだよね。こんな豪華メンバー全員を撮れていたのは偶然ですね。『こんな時期だったんだ』というのは改めて観て驚きました」とこの映像がどれだけ貴重かを語った。
撮影時のエピソードを聞かれた長瀬監督が、「最寄り駅が一緒だったんですが、大槻さんは結構酔っ払うので、ライブの後一緒に帰るのが大変でした」と話すと、大槻は、「いつもぷんぷんしてたよね」と暴露。監督は、「そこは映画に入れないようにしました」と話し、会場は笑いに包まれた。
最後に大槻は、「ダメな自分を見ていただくということで、楽しめたかどうかは分からないんですが、東京での上映というのはもうないと思います。普段は真黒毛ボックスというバンドをやっています。11曲入りのCDを売店で販売しているので、興味があれば音楽のほうも聞いていただければと思います」、監督は「本当はこういう状況じゃなかったら、終わった後に楽しくお酒でも飲んでいただければと思っていたのですが、それは難しいと思いますが、楽しい気持ちになっていただけていれば嬉しいです」とメッセージを送った。
公開表記
配給:アルミード
アップリンク吉祥寺にて上映中 全国順次公開
(オフィシャル素材提供)