ドキュメンタリー『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』が急遽、東京2020オリンピックの開催に合わせ、7月29日(木)までアップリンク吉祥寺及びアップリンク京都にて、緊急先行上映が始まり、初日舞台挨拶には、青山真也監督と元アパート住民のひとりである菊池浩司氏が登壇、五輪開催の裏で押し殺された声などについて、開会式直前の想いを語った。
冒頭で監督は、「オリンピックの開会式がある日に集まっていただき、とても嬉しく思います」と挨拶。
監督は改めて、本作を作りたいと思った理由を聞かれ、「人生で2回、オリンピックによって立ち退きを強いられる人がいるというニュースを聞きつけて、霞ヶ丘アパートに足を運びました。50年ぶりのオリンピックがあって立ち退きとなりました。そこに住んでいた方々は、高齢者の方が多く、もし50年後大きなイベントがまた東京で開かれるとすると、私が菊池さんのような高齢者の年で、他人事ではないと思いました」と、住民に寄り添って取材・撮影をした理由を説明した。
本作は、8月13日からここアップリンク吉祥寺他で公開が決まっているが、お客様の声に応え、急遽23日(金)から1週間アップリンク吉祥寺とアップリンク京都で緊急先行上映をすることになった。監督は「この映画はオリンピックの開発により立ち退きになった都営住宅をテーマにした映画です。都営住宅が残っている時から、多くの方が住んでいて、立ち退きに不満を覚え、眠れない日々を過ごし、結果的に住んでいた方々は皆立ち退きました。当時も『立ち退きとは何事だ』と、こういった問題に関心のある方が声をあげていたけれど、残念ながら、今の世論のような、オリンピックに対する批判ほど多くなかったと思います。」と悔しい想いを口にする場面も。
菊池氏は、東京オリンピックのために立ち退くよう言われた時のことを聞かれ、「僕は生涯を霞ヶ丘で過ごすつもりでいましたので、びっくりしましたし、僕は障害があるので、福祉関係や病院関係もあって簡単には動けないので、一時途方に暮れました。何人かのグループが反対運動を起こしたので、そこに入りまして、最後の最後まで国会議事堂に行ったり、いろいろな方に相談しましたが、とにかくどうにもならないんです。一度決まったことはどんどん進められちゃうので、それに従うしかならなかった状態です。今まで一生懸命反対運動をして結局は何も報われなかった。みんな『頑張れよ』と言うだけで、どうにもならなかった」と回想した。
一昨日から競技が始まり、今日この上映が終わったタイミングで、開会式が始まる。現在の気持ちを聞かれた監督は、「バブルも本当に意味があるのかという報道もありますし、オリンピックを見る気にはなれないけれど、しっかり目撃したいと思います」と話した。
最後に8月13日からの公開に先駆けて鑑賞する観客へのメッセージとして、菊池氏は「現在、国立競技場の周辺は厳重に二重にも三重にも囲いがあって、絶対に中に入れない状態なんです。霞ヶ丘にいる時に皆が飼っていた猫たちを引っ越す際に放して、現在野生化して住んでいます。その猫たちに餌をやるおばちゃんたちも入れなくて今日も右往左往していました。『動物はどうでもいい』ではなく、もう少し思いやり・人間味を持って考えて欲しいと思います」と新たな問題についても言及。「いくら私が考えても、みんなに相談してもどうにもならないので、現在は、神頼みというか、因果応報が来るんじゃないかと、自分自身を慰めております」と現在の想いを率直に語った。
監督は「ここまでの話を総合すると、『オリンピックけしからん』という映画に聞こえるかもしれないんですけれど、決してそれだけの映画ではなく、住民がアパートで過ごすたわいもない日常だったり、一緒に掃除をしたり、引越しする場面も、普遍性があると思って撮影をしました。幅広く、いろいろな見方ができる映画かと思いますので、しっかり観ていただければと思います」と熱いメッセージを送った。
登壇者:青山真也監督、菊池浩司氏(元アパート住民)
公開表記
配給:アルミード
7月29日(木)までアップリンク吉祥寺&アップリンク京都にて先行上映中
8月13日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開
(オフィシャル素材提供)