イントロダクション
時の記憶を、どう服ははらんでいくのか……
季節、風景、ことば、匂い、手触り、視線。
服を創るということ、服を着るということを記録したアートドキュメンタリーの誕生
日本の美意識をコンセプトに独自のスタイルを発信し続けている服飾ブランドmatohu(まとふ)。本作は、デザイナーの堀畑裕之と関口真希子の視点や哲学を通して、日常の中に潜む美や豊かさを再発見していくドキュメンタリーである。matohuは、身近な風景や物に目を向け、そこから得たインスピレーションを“ことば”に変えて服に昇華していく。たったひとつの“ことば”から形となって現れた服は、着る者たちの想像力をかきたてる。二人の創作から見えてくるのは、日本人が長い歴史の中で育んできた“ものの見方”であり、普段は見過ごしてしまいがちな足元の“美を見つける心”だ。
監督は、実験映画の制作を経て、これまで『躍る旅人 ─能楽師・津村禮次郎の肖像』(2015)など、伝統芸能をテーマにコミュニケーションと身体のありようを描き続けてきた三宅 流。これまでは自身で撮影も兼務してきたが、今回初めてカメラマンと手を組み、新たに「ファッション」という分野に挑んだ。デザイナーから溢れ出る言葉とものづくりの姿を丹念に捉え、うつろいゆく地上の時間や物のディテール、そして服のテクスチュアを繊細な映像美で紡いでいる。
大量消費、情報過多の時代に、本当に大切なことは何か、本当に必要なものはどこにあるのか。気鋭のファション・デザイナーのクリエーションを通して、日常の身近な気づきに出会う旅へ。驚きと発見に満ちたアート・ドキュメンタリーの誕生である。
ストーリー
2020年1月。東京・青山のスパイラルホールで、服飾ブランドmatohuの8年間のコレクションをまとめた展覧会『日本の眼』が開催された。matohuは“日本の眼”というタイトルのもと、「かさね」「ふきよせ」「なごり」など日本古来の洗練された美意識を表す言葉をテーマに2010年から2018年までの各シーズン、全17章のコレクションを発表してきた。
デザイナーの堀畑裕之は大学でドイツ哲学を、関口真希子は法律を学んでいたが手仕事や服作りへの思いからファッションの世界に飛び込む。堀畑はコム デ ギャルソン、関口はヨウジヤマモトでパタンナーとしてキャリアを積む。
そして2005年にブランド「matohu」を立ち上げ、彼らは“長着”という独自のアイテムを考案した。着物の着心地や着方の自由さから着想を得ながら、今の生活に合わせた形で作り出されたモダンなデザインの服である。2018年、matohuは『日本の眼』最後のテーマとなる「なごり」コレクションの制作に取りかかり、伝統的な技術を持つ機屋や工房と協業しつつ、テキスタイルを作り上げていく。堀畑と関口はアトリエで激しい議論を繰り返しながら妥協することなくデザインを完成させ、そしてファッションショーの日を迎える。
(2022年、日本、上映時間:96分)
キャスト&スタッフ
監督:三宅 流
撮影:加藤孝信
整音・音響効果:高木 創
音楽:渋谷牧人
プロデューサー:藤田功一
出演:堀畑裕之、関口真希子/赤木明登、津村禮次郎、大高 翔 ほか
ギャラリー
本編映像
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公式Twitter/Instagram:@tokiwomatohu
公式Facebook:@gendaimatohu
クラウドファンディング:https://motion-gallery.net/projects/utsuroinotokiomatou(外部サイト)
公開表記
製作・配給:グループ現代
3月25日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)