現在ハリウッドを拠点に活躍する、『あずみ』『ルパン三世』、そしてジャン・レノ主演『ドアマン』の北村龍平監督が、その作風と世界観で熱狂的なフォロワーを持つ髙橋ツトムの代表作『スカイハイ』のスピンオフ作品『天間荘の三姉妹』を映画化。いのち、ひとの生と死、家族や近しい人たちとのつながり、など誰にとっても他人事ではないテーマを、観る者の心に問いかけながら見つめていく映画『天間荘の三姉妹』の舞台挨拶付き試写会が、10月12日(水)に秋田で行われ、天界と地上の間の街・三ツ瀬で漁師と鮮魚店を営む魚堂源一を演じた柳葉敏郎と、プロデューサーの真木太郎が登壇した。
本作の原作となるのは、東日本大震災をきっかけに作られた髙橋ツトムの「天間荘の三姉妹-スカイハイー」。真木プロデューサーは、震災から10年以上経った今、原作の映像化に臨むにあたり、「東日本大震災が“きっかけ”でうまれたドラマなので、東日本大震災を描いた物語ではないんです。10年以上経ったからいい、というわけでは全くなくて、今もなお、まだまだ苦しんでおられる方はたくさんいらっしゃると思うんです。でも、東京で暮らしていると、震災についての報道が特にあるわけではないですよね。そんな日々の中で、震災のことを決して忘れてはいけないんだ、というメッセージを込めました」と、原作の映像化にあたり大切にしていたことを明かした。
また、話題が会場に設置された本作のポスターについて移ると、「これから映画をご覧になる方へのちょっとしたヒントになるかもしれません。このポスターに映っている三姉妹の中で、のん演じる三女・たまえだけが目線が違うんです。なぜ、彼女だけ目線が違うのか、映画を観終わった後に、“あ、なるほど”と納得していただけると思います。また、ポスターにも書いてある「ひとは生きていく。いのちよりも長く。」というのは、本作のキャッチコピーになるのですが、この言葉は、よく考えるとおかしいですよね。いのちより長く生きるというのは。この言葉が何を意味しているのか、というのは僕ら作り手からのメッセージになるので、この言葉を頭の片隅に置きながら、本作をご覧いただけるとより楽しめると思います」と、本作のポスターに秘められたあるメッセージについて明かすと、すかさず柳葉から「「一番大切なものは、天と地の間にありました。」というキャッチコピーも良いですよね! この作品を象徴している気がして、好きです!」という発言も飛び出し、これから一足先に本作を鑑賞する観客の期待を煽った。
そんな柳葉は、本作のオファーが来たときの心境を「嬉しかったです(笑)」と端的に語り、会場の笑いを誘いつつ、「台本を読んだとき、いわゆるあの世とこの世のちょうど中間という、ファンタジーな世界で、そんな空間の中で表現するからこそ、人が本来持っているとても純粋な思いが表現できる。こんな素敵なことないなと思いました。僕ぐらいベテランになると、作品ごとにちょっと小細工なんかもしたりするのですが(笑)、この作品では一切なしです! 台本のまま、全て純粋に演じさせていただきました。とっても気持ち良かったです!」と熱く回答。完成した本作を観た柳葉は「思い通りでした。この作品に自分を指名してもらったことに感謝しました。自分で言うのもあれですが、泣きました。自分のシーンではないのですが……。おそらく皆さん、この作品に登場する誰かにご自身を重ねることができると思います」と本作の出来に太鼓判を押した。「僕自身は3.11の時は東京にいて、大きな被害にはあっていないので、無責任なことは言えない、というのが正直なところです。ただ、東北人として、復興に向けて頑張っている方々に、少しでも気持ちの足しになってほしいという思いで現場にいました」と東北人として、強い想いをもって撮影に臨んだ当時の心境を回顧した。さらには、急に「なまっててもいいか(笑)!? なんか今日気取ってるよな!」と自身のホームである秋田でしか聞けないようなお茶目な発言も飛び出し、会場を大いに沸かせた。
劇中では、鮮魚店を営む漁師であり、高良健吾演じる一馬の父親・源一を演じた柳葉。高良とは「同じ釜の飯を食べて、同じトイレに入り、良い親子関係が築けました」と当時を振り返り、そんな現場での二人を観ていた真木プロデューサーも、「日本の寡黙な、典型的な親子の関係がとても泣けるんです」と男二人の親子関係を絶賛した。
最後に、本イベントの会場が地元・秋田であるということで、東京からやってきた真木プロデューサーに秋田でごちそうするなら何がいいか聞かれた柳葉は「それは米でしょう! なあ!!」と秋田弁なまりの力強い回答で笑いを誘い、温かい空気に包まれたままイベントは幕を閉じた。
登壇者:柳葉敏郎、真木太郎(プロデューサー)
公開表記
配給:東映
10月28日(金) 全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)