映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』の完成披露舞台挨拶イベントが都内で行なわれ、主要キャストの坂口健太郎、齋藤飛鳥、市川実日子とメガホンを取った伊藤ちひろ監督が登壇してクロストークを繰り広げた。
『サイド バイ サイド』=「隣同士で/一緒に」という題名を冠された本作は、心で、愛をさけぶ』(04)などの行定 勲が企画・プロデュースを担当。伊藤監督がオリジナル脚本を書き、メガホンを取った。そこに存在しない“誰かの思い”が見える青年・未山(坂口)が他者の思いをたどったことをきっかけに、自分の過去と向き合うさまが描かれる、リアルとファンタジーが混在するラブ・ストーリー。
共演は、未山のかつての恋人・莉子役を齋藤、未山と生活をともにする看護師・詩織役を市川、詩織の娘・美々役を磯村アメリが演じている。
そこに存在しない“誰かの想い”が見える不思議な力を持ち、傷ついた人を癒す主人公の青年・未山役を演じた坂口は、本作について「不思議な感覚です」と話し、「この作品を観終わった後にスッキリした気持ちで『面白かったね』と言っていただけるようなジャンルの作品ではないんですが、余白の部分を大事にして説明する部分を省いていて観客に投げかけるような作品になっています。お客さまがどんなふうに受け止めてくれるか楽しみです」と続けた。
乃木坂46からの卒業を発表後、初の映画出演で元恋人・莉子役を演じた齋藤は自身の役について「莉子はわたし自身ともぜんぜん違いますし、わたしのファンが観ても喜ぶような役ではないと思います」とちょっと不安をもらし、「映画出演が少なくて役作りとかもよく分からなくて……。莉子はつかみどころのない女の子。監督からは『暗いだけしゃないし、闇を抱えているだけの女の子じゃない』と聞いていたので、準備していったというよりは、監督のおっしゃったことをそのまんま咀嚼(そしゃく)してどうにか形にして、ずっとついていった感じです」と話した。また、「役が半分、素が半分で現場にいたんですけど、現場の雰囲気がすごくきれいだったから、これを経験できてすごく良かった」と撮影を振り返った。莉子との再会によって、未山の秘密が明らかになっていく……。
市川は「齋藤さんは映画作品への出演経験が少ないって言っていたので、(坂口と)2人で『飛鳥ちゃんのいい経験になってほしね』と話していました」と齋藤へのエールを明かす。坂口も「嫌にならないでほしいなと思っていた」とエール。伊藤監督も「齋藤さんは、存在から目が離せない、目で追っちゃうような人。以前からすごく気になっていた」と齋藤の魅力について話した。
伊藤監督は本作を制作するにあたり、「映画監督をやろうと思った時に、最初に着手した脚本」と明かし、「以前、『ナラタージュ』でご一緒してから、すごく可能性があって、面白い役者さんだなと思っていたので坂口健太郎で何か撮ってみたいと思っていました。この作品で、いろいろなものの共存とか、自然とか、人間関係やつながりとか、そういったものを大切に描きたいと思いました」と続けた。坂口は「監督から坂口で撮りたいと思っていただけて光栄です。役者冥利に尽きます。この形でこのキャラクターというのはすごく嬉しかった。台本をいただいた時には、未山のことがちょっとだけ分かった気にもなっていました。ちょっとした隣人感がありました」と役柄への思いも語った。
また、未山と詩織の関係性について、伊藤監督は「カメラが回っていない時の無意識な坂口さんと市川さんのコミュニケーションが役立っていました。市川さんからアイデアをたくさんもらいました」と話す。たとえば、詩織が濡れた手を未山のパーカーで拭くシーンについて「何気なくいつもやっているんだという空気感が出ていて気に入っているシーンです」おススメのシーンを明かしていた。
最後に坂口が「一つひとつのシーンを丁寧に作って、みんなで探しながらキャラクターを作っていった特別な作品です。監督が言葉や語ることを排除して、余白を大事にして皆さんに投げかけるように作った作品です。とても挑戦的でもあり、観る人のこころを豊かにしてくれる作品です。キャラクターの感情の機微を大きなスクリーンで観てほしいです」と熱い思いを伝えた。
登壇者:坂口健太郎、齋藤飛鳥、市川実日子
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:ハピネットファントム・スタジオ
4月14日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー