アメリカ文壇に彗星のごとく登場し、映画スターをはじめ多くのセレブにも愛され一大センセーションを巻き起こした美少年作家をクリステン・スチュワートが演じた映画『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』が2月14日(金)よりシネマカリテ&YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開となる。この度、主演のクリステン・スチュワートのインタビューが到着した。
アメリカ文壇に彗星のごとく登場し、時代の寵児となった美少年作家J・T・リロイ。映画『サラ、いつわりの祈り』の原作者としても知られる彼は、ふたりの女性が創り上げた架空の人物だった! 2000年代に一大スキャンダルとして報じられたこの驚くべき事件について、初めてJ・Tの分身を担ったサヴァンナの視点から映画化。彼女は、なぜローラに言われるがまま数年間もJ・Tを演じ続けたのか?“嘘のような本当の話”が今、ここに紐解かれる!
『トワイライト』シリーズや『チャーリーズ・エンジェル』のクリステン・スチュワートと、『マリッジ・ストーリー』で賞レースを賑わせているローラ・ダーンの二大女優が豪華共演で鮮烈な演技を披露! さらにダイアン・クルーガー、ジム・スタージェス、ケルヴィン・ハリソン・Jrらが脇を固める。監督はガス・ヴァン・サント製作総指揮の作品でデビューを飾った新鋭ジャスティン・ケリー。最初は小さな嘘だったが、何度も演じるうちに〈架空〉が〈リアル〉を超え、サヴァンナ自身もJ・Tと一体化していく。ローラの操り人形に過ぎなかったサヴァンナが、ひとりで歩き出す瞬間はスリリングにして実にドラマティックだ。
クリステン・スチュワート
1990年、米国ロサンゼルス生まれ。
『パニック・ルーム』(02)などの子役を経て、『トワイライト』シリーズ(08~12)で世界的な人気女優となり、大作からインディペンデント系までの多彩な映画に出演している。
オリヴィエ・アサイヤス監督『アクトレス 女たちの舞台』(14)でセザール賞助演女優賞を受賞し、同監督『パーソナル・ショッパー』(16)に主演。
他の出演作に『スノーホワイト』(12)、ウォルター・サレス監督『オン・ザ・ロード』(12)、『ロスト・エモーション』(15)、アン・リー監督『ビリー・リンの永遠の一日』(16・DVD題)、ウディ・アレン監督『カフェ・ソサエティ』(16)など。新作にリブート版『チャーリーズ・エンジェル』(19)がある。
J・T・リロイを当時知っていましたか?
このワイルドなことが起きていた当時は、全く知らなかった。本は知っていたけど、読んだことはなかったし、映画も観たことがなかった。だから、脚本を読んで、ジャスティンに開口一番聞いたのは、「待って、これって本当に起きたの?」だった(笑)。どこか脚色したでしょ?ってね。事実より面白く書いたでしょ?って。みんながこれをこんなに長い間信じていたなんて信じられないと思ったから。だから、この映画を作ることになって、私はこの世界を初めて知った。
あなたがこの映画をやりたかったのはそれが理由でしたか? あまりにあり得ない話だったからですか?
私は自己発明という概念が好きなんだけど、でもそれは話すのが難しいテーマでもあると思う。また、何を持って正直というのか、何を持って真実というのか、という疑問がある。真実とは、それをどのように提示するのかで決められるべきではないと思うし、人は時に、事実の詳細にばかりに目がいってしまうことがある。でも、表面的にどう見えるのかは関係なく、曖昧なものの中にも真実があると思うから。私はそういうテーマが大好きだった。
だから彼らがやっていたことは、すごく巨大な実験的なアートに思えた。インスタレーションか、パフォーマンス・アートのように思えた。だからすごく惹かれた。
それからサバンナの物語として見た場合、彼女は、急流のどまん中にいるような状況で、まだすごく若いのに、立ち上がり、自己を見つけなくてはいけなかった。そこに美学があると思った。彼女は、しかもすごく心が温かくて、何に対して心を開いたところがあった。それはJ・Tのイメージとは逆だったように思う。だから、私はサバンナをキャラクターとして大好きになって、この映画をやりたいと思った。
この映画には6年間の物語が描かれているけど、サバンナは物語の始まりでは、すごく壊れ安くて、デリケートで、小動物のような感じだったと思う。そういう彼女が、自分より大きなものに立ち向かい、それを突破して次の次元に進む。その過程で、自己探求をし、自分のアイデンティティを確認しようとする。それが私にはすごくクールに思えた。私は、そんな彼女を守りたいとも思った。
なぜなら、私も彼女と似たような経験をしたから。自分が公で見せている姿が必ずしも自分が内面で感じていることとは同じではない。だけど、それを人に見られながら、葛藤しなくてはいけないという経験が私にもある。それって本当に気が狂ったような状況だから。サバンナを見て、『その気持ち私にも分かる!』と思った(笑)。そういう状況をくぐり抜けた彼女をどのように私が守ればいいのか、分かると思えた。だからこの物語を真実として語れると思えた。
それからローラとサバンナの関係性も興味深かったし、それにアートが人を救えるんだという物語も私自身が信じていて共感出来る部分だった。私に自己表現出来る場がなかったら、自分がどうなっていたか分からない。だからこれはサバイバル・ストーリーであり、大人のラブ・ストーリーだとも思った。
実在の人物を演じるほうが、フィクションのキャラクターを演じるより難しいですか?
確かに違いはあると思う。実在する人物を演じる場合は、ものすごい責任があるから。演じる人物を責任を持って演じ、伝える役割があるから。だから脚本を読んだ時に、『自分にはこれができると思う。それを無責任に言っているわけではない』と思えた時だけ、私はその役を演じるべきだと思っているし、やらせて欲しいと言って良い時だと思っている。
この作品も、決して簡単ではないと思った。実在する人を探求するというのは簡単ではないから。でも、目標はなんとかその人になりきるということであり、必死になって完璧にその人の“モノマネ”をすることではないと思って役作りをした。
脚本を読んだ時にどのように思いましたか?
100%ラブ・ストーリーに思えた。人によっては、サバンナが何か巨大なものに操られていたと誤解すると思うけど。でも実際は、2人とも心の奥深くに存在した真実を助長していたのだと思う。お互いにそれが見えていたと思うし、それを共有していたと思う。だからこそ、2人はお互いを守り続けたし、いまだに守り続けている。ただお互いにあまりに一緒の時間を過ごしたから、お互いを消費し、お互いを必要とし、そして中毒になったようなところもあったと思う。それって絶対に健全ではない。でも本当のラブストーリーで健全なものってないでしょ(笑)? だから彼ら2人を“カップル”として知るのは楽しかった。
それにサバンナが長年自分の中に閉じ込めていた人生を今、世界に放つことができたのも素晴らしいと思った。
サバンナは人間の性別に関してレーベルを付けられるのを拒否する部分がありますが、あなたもそれに共感できますか?
すごく共感できる。私も含め誰もが簡単にレーベルを付けて話をしがちだと思うから。そのほうが簡単に理解できるから。でも、私たちは誰もが内面に、女性か男性かでは簡単に区別できないようなものを抱えていると思う。
そして時代が進む中で、それについてこれまで語られてこなかった物語がたくさんあることが分かってきたように思う。例えば歴史ものの映画を観ていても、どこにクィアーがいるの?と思うから。彼らはそこにいるはずだけど、隠れていて、その物語が語られていない。
でも、それは今変化しつつあると思う。それに今の世代のキッズは私たちが育った時代のような差別意識が少なくなっている。ものすごい勢いで変わっていると思う。彼らには差別の概念すらないと思うから。それを見ていると感動する。だからこの作品で、そういうことについて語れてすごく嬉しかった。
ハリウッドに長年いて、人を喜ばせるために自分ではない人になりすましたことありますか?
それが私にもできたら良かったけど、できない。
でも、長い間この仕事をしてきて、それを完璧にやる人も見てきた。人に愛されるような人物に100%完璧になりきる人を間近で見てきた。実際のその人はそんな人では全然なかったりするのに(笑)。
私にも人が求める人間が演じられたら良かった。でも、どうしてもそれができなかった。
サバンナの役作りはどのように行ったのですか? リサーチによるものだったのか、自分なりに作り上げたのか?
サバンナがいつも一緒にいてくれたからすごくラッキーだった。彼女がジャスティン(・ケリー)と脚本を書いたわけだし、脚本は彼女の視点から書かれていたわけだから。
ドキュメンタリーも素晴らしくて、そこから学んだ部分もすごく多かったけど、でも、ドキュメンタリーはサバンナの内面は描かれていなかったから。ローラの視点で描かれたものだった。
サバンナを演じることで自分について学んだことはありましたか?
この映画は、もちろんアイデンティティを描いた物語だと思う。この映画を作っている時に、すごくハッピーだったのは、自分より若い年齢の人を演じられたこと。というのも、数年前自分がもう少し若い時に、本当に打ちのめされたように気分になったことがあったから。必要以上に自分らしさを隠して、自分が誰だったのかが分からなくなった時期があったから。自分がそこに存在しているのかどうか分からなくなって、無理やり自分を型に押し込めているような気分のことがあった。
この映画でサバンナがやろうとしているのは正にそれで、本当の自分は内に隠して、ポーズをして、型にはめようとしている。さらに、その過程で、自分が何を言うべきなのか?自分はどんな見た目になりたいのか?どんな人と一緒にいたいのか?どのように自分が見られたいのか?どのように自分を提示したいのか?ということと葛藤している。
それで今の私は映画の中の彼女よりは年齢が上で、自分がそういう葛藤をしていた時期からはすでに歳を重ねている。
だからこの映画をやって気づいたことのひとつは、歳を取って良かったということ(笑)。このキャラクターを演じるのが楽しいと思えたから。
サバンナは、あの当時羊飼いに馴らされたようになっていた。でも、今は自己をしっかり確立して、ものすごく明瞭だし、個性が強いし、地に足を着けている。つまり、彼女がこの映画で描かれている人物から、今そこまで辿り着いたということ自体がクールだと思う。だからこそ、そこに辿り着く前で自己が今ほど確立できていないし、しかしそこで踏ん張っている彼女を演じるのはすごく楽しかった。その後、その状況から打破すると分かっているわけだからね。だから私はこの役が演じたかったのだと思う。振り返ってみて、自分の若かった頃と似ていて共感できる部分がすごくあった。だからすごく面白いと思えた。
J・T・リロイ本人画像
公開表記
配給:ポニーキャニオン
2020.2.14(金)よりシネマカリテ&YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開!
(オフィシャル素材提供)