1997年『HANA-BI』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞、2003年『座頭市』で銀獅子賞を受賞、2017年『アウトレイジ 最終章』は同映画祭のクロージング作品に選ばれるなど、数々の歴史的快挙を達成してきた、日本が世界に誇る映画監督・北野 武の最新作にして構想に30年を費やした戦国スペクタクル映画『首』が2023年秋に公開することが決定した。北野武監督が初期の代表作の1本『ソナチネ』同時期に構想し、30年もの長きに渡って温めていた本作は、巨匠・黒澤 明が生前「北野くんがこれを撮れば、『七人の侍』と並ぶ傑作が生まれるはず」と期待していた念願の企画の映画化だ。“本能寺の変”が、戦国武将や忍、芸人や百姓といった多彩な人物の野望や裏切り、運命とともに描かれ、キレ味抜群のバイオレンスと笑いをはじめとした北野のワールドのエッセンスが全開する。
そんな野心作に豪華&異色のキャストが集結! 北野 武自らが“本能寺の変”を策略する羽柴秀吉を飄々と演じ、織田信長に複雑な感情を抱く明智光秀を西島秀俊が演じる。加瀬 亮が狂乱の天下人・信長を怪演し、浅野忠信と大森南朋も秀吉を支える軍師・黒田官兵衛と弟の羽柴秀長をユーモアたっぷりに演じ切る。さらには、秀吉に憧れる百姓・難波茂助を演じる中村獅童が北野組に初参戦。他にも木村祐一、遠藤憲一、桐谷健太、小林 薫、岸部一徳らが歴史上の重要人物に独自のキャラでなりきっている。
信長の跡目をめぐるさまざまな欲望と策略が入り乱れ、血肉飛び散る“山崎の戦い”から燃え上がる本能寺へと突き進むクライマックスのスペクタクル。北野 武作品史上随一のスケールと迫力で描かれる! 果たして、そのとき秀吉、光秀、信長らがとった行動とは? “世界のキタノ”だから撮ることのできた、戦国エンターテインメントの全貌がついに明らかになる!
株式会社KADOKAWA代表取締役社長・夏野 剛 ご挨拶
『首』は、日本が世界に誇る才能・北野 武監督待望の最新作であり、製作費15億円をかけた大作映画です。
本作は、北野 武監督が“いつか映画化したい”と長年構想を練られた企画であり、ご自身で原作小説と脚本を書き上げられました。そのような思い入れのある作品で、北野 武監督とご一緒できることを、大変嬉しく思っております。また本日、北野 武監督、俳優の皆様をお迎えし、お集りの皆様に映画の完成を報告できることに感謝申し上げます。一足早く本作を観させていただきました。黒澤 明監督の『七人の侍』『影武者』にも通じるスケールと、シェイクスピア作にも通じる悲劇性と喜劇性を併せ持った稀有な作品であり、北野 武監督の才能とオリジナリティがふんだんに詰め込まれた作品だと思います。弊社は今後日本国内に留まらず海外でのヒットも見据えた大作映画を取り組んでいきたいと考えておりますので、世界に向けて自信を持って送り出すことができる本作を、観客の皆様にお届けできることを大変喜ばしく思っております。皆様、映画『首』をどうぞよろしくお願いいたします。
北野 武監督 ご挨拶
構想30年というのは、3週間の間違いだと思いますが(笑)。今、時代劇といえば大河ドラマなどで描かれていますが、綺麗な出世物語ばかりで、人間の汚い部分や業というものが描かれていない。この作品は「自分が撮ればこうなる」という発想から作り上げました。完成までだいぶ苦労しましたが、スタッフ・キャストのおかげで作ることができたと思っています。
北野監督:「カンヌ・プレミア」の上映決定について
知り合いのカンヌの人に聞いたら、この作品はコンペの枠に当てはまらない、非常に強烈な映画だということで、プレミアという冠をつけて別でやりたいと言われまして、その話を聞いた時のこの作品は世界的に当たるなと思いました。
西島秀俊 ご挨拶
北野監督の作品に出るのは『Dolls』以来です。とにかく監督に成長した姿を見せようということは絶対考えないように、無欲に監督の頭の中にある作品をなんとか現実の世界に表に出すべく、力を出し尽くしました。本当に幸せな時間でした。
加瀬 亮 ご挨拶
北野監督の作品は『アウトレイジ』シリーズ以来の出演ですが、前回の『アウトレイジ』シリーズでも自分からは遠い役を演じて大変だったのですが、今作も案の定大変な目に遭いました(笑)。
中村獅童 ご挨拶
若い頃から北野監督の作品が大好きで、いつか出演するのが夢でした。仲良くさせていただいている大森さんにいつも監督の作品に出るにはどうすればいいのかと相談はしていたのですが、自分から監督に声をかけるのもおこがましく、いつか出られたらとずっと思っていました。そんな時にこの作品のお話をいただいて、今まで演じたことの無い役をいただけて、新しい中村獅童を引き出してくれたと感じています。本当に感謝しています。
浅野忠信 ご挨拶
北野監督の作品は『座頭市』以来の出演となりました。北野組で再び時代劇にまた出られて本当に嬉しくて、どうやって役を演じようか何度も台本を読んで撮影に臨みました。
大森南朋 ご挨拶
亀』に出演させてもらい、またこうして北野組に戻ってくることで自分のモチベーションを保っていたところもあったので。私の役は常に北野監督のそばにいる役でしたので、非常に濃密な時間を過ごすことができました。
北野監督:映画化実現への構想と着想
ここ何年か歴史ブームで、織田信長、明智光秀と本能寺の変が取り上げていると思いますが、歴史考証の専門家の方が調べた中で、約80の諸説があるんです。80の中で僕自身が考えていたのは、「裏で秀吉がかなり動いたのかな」と思ったのがきっかけで映画化しようと思っていた。そして、最近になって北野組に参加してくれたキャストの皆さんが皆優秀で、集まることができたら撮れるなと思い、ようやく創れるなと思いました。
北野監督:各キャストの配役について
脚本を書きながら、この役はこの人、と考えながら選んでいった。実際皆衣装をつけたら色合いは綺麗になり、フランスの友人からも「色が凄かった」と言ってもらえて、よかったです。
キャストの皆さまへ:オファーが来た際のお気持ち/撮影までに準備したこと
西島秀俊:バラエティの現場で北野監督とご一緒して、「頼むね」と一言あって、あれがオファーだったのかなと思いました(笑)。役については、光秀がどういう人物か諸説あるなかでしたが、人間的に現代に繋がるまともな部分と、あの時代で命のやり取りを毎日やっているからこそ、狂っている感覚をもったキャラクターだと思うので、シーンの中でいろいろな面を演じようと考えていました。
加瀬 亮:オファーはずいぶん前にいただいて、最初に読ませていただいた台本と完成した作品は結構違ったのですが、戦国時代のドラマや映画はどうしてもエンターテイメントとしてキレイなイメージが増幅しているように思っていて、本当のところはどうなんだろうと考えていました。
中村獅童:本当に嬉しかったですし、あまり役を作り込まないように意識して、北野監督の色に染まれるかを意識しました。あまり監督に質問をするというよりも自分で考えるという経験をさせていただき、素晴らしい時間でした。今までで一番汚い役でしたが(笑)、楽しかったですね。
浅野忠信:台本を読む前から自分に何ができるのかワクワクして自分をアピールできないかと思っていたけど、他の役者さんのキャラクターが凄くて、自分は静かにしているべきだと思って、台本を読み直しました。
大森南朋:オファーがまた来て『よかった、またオファーがあった、嫌われてなかった』と思いました(笑)。監督の現場は何が起こるか分からないので、台本をたくさん読んで何があっても対応できるようにいつも現場に参加させていただきました。
キャストの皆さまへ:北野監督だから描けたと思ったこと
西島秀俊:初日が安土城の天守閣のセットでの撮影だったのですが、とにかく美術が美しかった。常に死がとなりにある中で生きているので、滑稽なことと悲惨ことが隣り合わせ。すごく笑っていると信じられないほど悲惨なことが起きたり、悲惨なんだけど思わず笑ってしまうような、本当に北野監督にしか描けない世界観だと感じました。
加瀬 亮:自分に信長役をくれるのは、北野監督しかいないと思いました(笑)。ほぼ全員と言っていいと思いますが、全員酷い役で、残酷なシーンもたくさん出てくるのですが、北野監督がそういった残酷なシーンを描くと、最終的に品の良い映像になっていると感じましたし、他の監督では絶対に描けないと思いました。
中村獅童:今まで描かれてない戦国時代の話ばかりで、本当はこういう時代だったんだなと思いました。この作品にヒーローは出てこないですし、ハードな描写も多いですが、この作品としての品格は北野監督ならではだと感じますね。僕は時代劇が好きですし、歌舞伎の世界で生きているので、衣装とかカツラとか意識してしまうのですが、細かいところまで本当に忠実で、素晴らしい作品に参加させていただいたなと思いました。
浅野忠信:北野監督の現場は本当に進行が早いんです。そういった現場だと僕みたいな俳優は力がみなぎってくるんです。ババっと決めてもらって撮影を終えると、明日はもっとすごい演技ができると思うんです。そして、出来上がった時にテンションが上がった自分がいて、この感覚はなんだったんだろうと頭の中で考えている自分がいました。
大森南朋:北野監督の現場は、監督の頭の中の世界を映像化するという意識が現場に出ていて優秀なスタッフがたくさんいらっしゃいます。この時代にこの作品を日本で作れる人は本当にいないと思いますし、唯一無二の監督だと思います。
メディア質疑応答/北野監督への質問:NHKの大河ドラマくらいしか連ドラがないほど、ジャンルとしての時代劇は衰退していると思うのですが、なぜ今の時代に、当時の絶対的評価だった「首を取る」というところに着目して“本能寺の変”を題材とした映画を届けたいと思われたのでしょうか?
北野監督:大した理由はないのですが、『首』という映画は時期が来たら撮ろうと思っていました。今までの時代劇は、登場人物が歴史上偉大な人として描かれていて、裏に隠されている人間の業や汚さのようなものはあまり描かれていないので、正しいかは分からないけれど、実はこういう見方も1つの方法だなと思いました。
メディア質疑応答/北野監督への質問:中村獅童さんは今回初参戦ということでしたが、他の方々は再びの北野組ということで結集といった雰囲気もありますが、改めてキャストの方々が集まったことや撮影の感想をお聞かせください。
北野監督:獅童さんは初めてでしたが、あとのメンバーは北野組で撮っていて雰囲気は分かっている人ばかりでした。獅童さんはすごく芝居が好きな人だなあと思って、いずれご一緒できたらと思っていたのですが、今回縁があって出ていただきました。(信長を演じた)加瀬くんは、イメージではない役をやらしたら力を発揮する人と思っています。声をかけると役者さんがスケジュールをうまく調整してくれて、大したギャラも出ないのに(笑)。
メディア質疑応答/キャストへの質問:かなりの曲者揃いの作品になっているのではないかと思いますが、特に印象に残っている撮影のエピソードを教えてください
西島秀俊:撮影終盤に監督が「1シーン追加したい」と言ったことがあって、結構大きなセットを組んでいて、僕もシーンが追加されて嬉しくて、ワクワクしながら現場に行ったのですが、撮影は1カットで終わって、『こんなセットを作ったのに1カットで終わるのか……!』と(笑)ちょっとスタッフも呆然としながら、僕も寄りのカットの撮影もあるのかな?と気持ちを込めて演技をしていたのですが、撮影は一瞬でした。監督の欲しい絵のために、皆ワンカットの撮影であってもそれだけのものを作るという本当に贅沢で素晴らしい現場だったことがすごく記憶に残っています。
北野監督:大島 渚監督や黒澤 明監督に「大事なシーンは引きで撮るべきだ」と言われたことが印象に残っていて、それが癖になったのだと思います。
加瀬 亮:今回、信長役だったので、自分の下にいる人がみんな先輩で、台本を最初に読んだときはものすごくやりにくいなと思ったのですが、ほとんどが他作品でもご一緒したことのある方たちだったので、胸を借りるつもりで思い切って演じました。
中村獅童:秀吉が嘔吐した後の川に沈められるシーンがあったのですが、尊敬する大好きな監督なので、汚いなど思わずに喜んで演じさせていただいたのが印象に残っているのですが、本編ではカットされていました(笑)。
北野監督:ちょっと溺れ方が下手だったので(笑)。
メディア質疑応答/北野監督への質問:戦国時代だからこそ描けるバイオレンス描写もあるのか気になったのですが、映像のこだわりや意識したことを教えてください。
北野監督:やっぱり刀で切るというのは、銃を用いた殺戮シーンより残酷に見えるのかと思います。
首をはねたりするシーンは残酷だなとも思いますが、自分で切腹をする時に介錯してもらうのは当時のちゃんとした作法であるということもあるので、残酷といえば残酷なのだけれど、様式美ということでもあるのかなと思います。
メディア質疑応答北野監督へのご質問:カンヌ国際映画祭の出品おめでとうございます。世界中に監督の作品を待っているファンの人たちがいると思うのですが、監督自身はこの作品を世界にどういった形で届けていきたいと思いますか?
北野監督:日本の戦国時代を、美化することなく、成り上がりや天下をとるということの裏にある人間関係や恨みやつらみなども含めて、正しくはないかもしれないけれど、一つの解釈として描けたらと思いました。
北野監督:最後のメッセージ
スタッフや関係者に作品の出来を聞いているんですが皆褒めてくれる。自分は芸人だから嘘か本当かよく分かるんですが、その中でも大多数が本当に褒めてるなと感じて、成功したと思っています。出来たらこの映画がヒットしていただいて、あと何本か撮れる状態になればいいなと思ってます。
登壇者:北野 武監督、西島秀俊、加瀬 亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋
カンヌ・プレミアとは
コンペの枠では賄いきれない両作のプレゼンテーション(提供)を目的に設立されたセクションであり、2021年設立。コンペに選定されなかった作品が「ある視点」部門(※)に選定されることもあり、この「カンヌ・プレミア」部門も「ある視点」部門に近い位置づけとの見方もあったが、2021年の「カンヌ・プレミア」部門設立時のインタビューでも、映画祭ディレクターのティモリ―・フレモー氏が「ある視点」部門のテーマをより明確にする意味でも、「カンヌ・プレミア」部門が設立されたと答えている。より世界の歴史・民族・風土・生活習慣・信仰など現代社会を取り巻くテーマを描くワールドシネマにフォーカスした作品が選ばれる部門)。『首』は日本の実写としては初の選出となる。
カンヌ・プレミア設立以来の上映作品一覧
<2021>
『彼女のいない部屋』Mathieu Almaric(フランス)
『牛』Andrea Arnold(イギリス)
『Love Songs for Tough Guys(原題)』Samuel Benchetrit(フランス)
『レア・セドゥのいつわり』Arnaud Desplechin(フランス)
『シャルロットによるジェーン』Charlotte Gainsbourg(フランス)
『あなたの顔の前に』Hong Sang-Soo(韓国)
『帰らない日曜日』Eva Husson(フランス)
『Evolution(原題)』コーネル・ムンドルッツォ(ハンガリー)
『Val(原題)』Tin Poo(アメリカ)、Leo Scott(アメリカ)
『JFK Revisited: Through the Looking Glass(原題)』オリバー・ストーン(アメリカ)
『VORTEX(原題)』ギャスパー・ノエ(フランス、ベルギー、モナコ)
『マルクスは待ってくれる』マルコ・ベロッキオ(イタイア)
『竜とそばかすの姫』細田守(日本)
<2022>
『Dodo(原題)』パノス・H・コートラス(ギリシャ)
『夜のロケーション』マルコ・ベロッキオ(イタリア)
『イルマ・ヴェップ』オリヴィエ・アサイヤス(フランス)
『Nos Frangins(原題)』ラシッド・ブシャール(フランス)
『ドン・ジュアン』セルジュ・ボゾン(フランス)
『La Nuit Du 12(原題)』ドミニク・モル(ドイツ)
『Diary of a Fleeting Affair(原題)』エマニュエル・ムレ(フランス)
『ザ・ビースト』ロドリゴ・ソロゴイェン(スペイン)
公開表記
製作・配給:KADOKAWA
2023年 秋全国公開
(オフィシャル素材提供)