世界で注目を浴びる『片袖の魚』(21)の東海林毅監督初のオリジナル長編となる本作は、レインボー・リール東京グランプリをはじめ国内外の映画祭で10冠を獲得した自身の傑作短編『老ナルキソス』(2017)の待望の長編化。監督は、自身バイセクシュアル当事者でもあり、主に自主作品の中でLGBTQ+と社会との関わりを探ってきた。
「ゲイ」という呼び名もまだ一般的ではない時代から日陰者として社会の方隅で生きてきたナルシストの老絵本作家。差別や偏見との闘いの時代を経てすでに性的マイノリティが可視化されたLGBT世代のウリセンボーイ。世代も考え方も違う二人の個人的な関係の中から立ち現れる、同性愛者たちの過去と未来の「家族」にまつわる葛藤の物語だ。パートナーシップ制度は「ある」が同性婚は「ない」という中で、「家族」のあり方を問いかける。
また、今回同時に公開されたメインビジュアルは、黒バックに水石亜飛夢が田村泰二郎を後ろから抱きかかえる写真が浮かび上がる。水石の下についた左手は水面に映っているように見えて、2人とも「水面に映る美しい自分に口づけしようとして水に落ちる」神話の中のナルキソスのような、メインビジュアルになっている。
主演は、名バイプレーヤー田村泰二郎と、主演作が続き勢いにのる水石亜飛夢のW主演。田村は長編初主演で、出演作に『太陽』(2005/アレクサンドル・ソクーロフ監督)や『沈黙 -サイレンス』(2017/マーティン・スコセッシ監督)がある。水石亜飛夢は、2021年『国民の選択』(宮本正樹監督)と『黄龍の村』(阪元裕吾監督)の2作品で初主演を果たした。
ウリセンボーイ(水石亜飛夢)のパートナー役では寺山武志、絵本作家(田村泰二郎)の青年時代を田中理来といった若手俳優が熱演し、日出郎、モロ師岡、津田寛治、千葉雅子といったベテランが脇を固める。また、絵本作家のかつての恋人役を村井國夫が存在感たっぷりに演じる。
音楽は『舟を編む』(2013/石井裕也監督)で日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞の渡邊 崇、撮影はこれまでも東海林監督と多くの作品でタッグを組んできた大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022)の神田 創。
公開表記
配給:オンリー・ハーツ
5月20日(土)より新宿K’s cinema 他にて全国順次公開
(オフィシャル素材提供)