映画『アイスクリームフィーバー』の記者会見および完成披露試写会が6月20日(火)、東京・渋谷の渋谷PARCO内で行なわれ、吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽(水曜日のカンパネラ)、松本まりか、千原徹也監督が揃って出席した。
アートディレクターとして活躍してきた千原氏が初監督作品として「映画制作をデザインする」というコンセプトの下、川上未映子の短編小説「アイスクリーム熱」を実写化した本作だが、キャスト陣からは千原監督の映画制作のプロセスについて「規格外」「常識を打ち破った」などといった驚きと賛辞の言葉が口を突いて出る。
舞台挨拶に先立ちに行なわれた記者会見で、千原監督は本作の企画について「2019年の正月に『映画をつくりたい』と決めました」と明かす。その理由について、アートディレクターとしてサザンオールスターズの仕事を手がけたことで「ある意味、デザインで到達したいところに行けて、一幕が下りた感じがありました。元々、子どもの頃から映画がつくりたかったので、夢に向かっていこうと思いました」と説明。
制作のプロセスについては「金の集め方から作り方まで新しい形でやれたら」との思いで、これまでアートディレクターとして関わってきたアパレルやブランドを巻き込みつつ「広告から映画まで全てがつながっているやり方でやりましょうと」と従来の常識に捉われない方法を模索しながら作り上げていったという。
アイスクリーム屋で働く主人公・菜摘を演じた吉岡は、千原監督からのオファーについて「最初に声をかけていただいたのは3年くらい前ですが、千原さんが新しいことを始めようとされている時のワクワク感をその瞬間、感じました」と興奮気味に語り「自然と『ぜひ!』となりました」と明かす。
現場でも「いままで参加した仕事とは全然違うことばかりで驚いたけど、新しいものをつくる現場ってこういう“魔法”みたいなもの、見たことのないものを日々、見ることになるんだなという感覚になりました」とこれまでにない体験を楽しんだよう。
菜摘が働くアイスクリーム屋の常連客となる作家の佐保を演じたモトーラは2~3年前にドラマを撮っていた時期に監督から「映画を撮りたい」という話を聞かされたという。過去に原作の「アイスクリーム熱」を朗読した経験もあり「千原さんが監督をするとどうなるんだろう?」と想像を巡らせたという。
佐保という役柄については「最初に読んだ時、佐保がどんな人物なのか、あまりよく分からなくて、千原さんに『どんな人ですか?』と聞いたり、現場で菜摘と会って、なんとなく『こういう人かな……?』と想像していったりして、つくっていく感じでした。菜摘に実際、会ってみないとどんな気持ちなのか分からないので、探りながらやっていました」と述懐する。
アイスクリーム屋の近所に暮らす優を演じた松本は「私は多分、一番最後のオファーだったと思います」と語り、これまで顔を合わせたことはあったものの、一緒に仕事をした経験はない千原監督から直接、オファーの電話が来たことを明かす。監督が電話をしたのはカンヌ国際映画祭から帰国した直後の空港だったとのこと。松本によると「監督は『いまカンヌに行ってきて、いろいろ見て、自分の中の常識がぶち壊されました。『こういうことをやらないといけない』と飛行機で考えていた時、まりかさんの顔が浮かびました。ぜひ協力してほしい』とおっしゃって、それを聞いた時点でどんな話なのか知らなかったけど『やらねばいけないな』と思いました」とふり返る。
さらに松本は「決定打となったのは、台本の前書きに書かれていた監督の思いで、この作品を立ち上げて、紆余曲折があってここに至ったか。全て自分でやるしかないと情熱と衝動でここまで来たという感動の文を読んで、まだ(台本の中身を)読んでないけど『やります』とお答えしました」と明かした。
そうやって、ここまでたどり着いた監督の情熱と信念を松本は絶賛。「いま、すごく感動しています。この作品を観てもらうことで、監督の生き様が見えてくると思う。『考えるな、感じろ』――そんな映画です」と熱く語った。
詩羽が千原監督と出会ったのは、「水曜日のカンパネラ」に加入する以前で「たまたま通りすがりにお会いして、『はじめまして』とご挨拶して、『いつか面白いことができたらいいね」とゆるいお誘いをいただいたんですが、そうしたら本当にお仕事をくださるようになって、ゆるく『映画出てよ~』と言われて『出ます! 待ってまーす』くらいの答えをしたんですけど、そうしたら本当に映画のお誘いが……(笑)。しかもメンバーが『え? あの人とあの人?』みたいな感じで、まさか自分がここに立つ側になるとは……。ゆるく始まった話ですが、率直に『やります』と返事しておいてよかったなと思います」としみじみと奇妙な縁について語る。
詩羽は菜摘のアイスクリーム屋の後輩・貴子を演じたが「自分に近しいところがある女の子で、大人っぽい子にある子どもらしさ、人に言えない、でも言いたいもどかしさ、学生の頃に自分も感じてた悩みで胸がチリチリする感じがあって、高校生の頃の気持ちを思い出しながら演じさせていただきました」と語った。
今回、監督初挑戦となった千原監督だが「さっき、楽屋に入ったらすごい人たちがいるなとビックリしました(笑)。自分はド素人なので、皆さんの個性のママやってもらい、それに助けていただきました」とキャスト陣への感謝を口にした。
続いて、渋谷PARCO内のWHITE CINE QUINTOにて開催された舞台挨拶に登壇した千原監督とキャスト陣。
「100万年君を愛ス」という映画のキャッチコピーにちなんで「100万年愛し続けたいもの」を尋ねられた吉岡は「難しいですよね……。100万年後ってことは、自分は死んでますもんね……」と首をひねりつつ「私は、できればご飯は咀嚼する世界であってほしいと思っています。SF映画を観ると、(食事が)液状になってることが多いけど、しっかり噛めるご飯が長い時間、生きていたらいいなと。食卓が大好きで、みんなでゆっくり噛んで食べる時間が好きなんです」としっかりと噛んで食べる営みへの熱い愛を語る。
同じ問いにモトーラはひと言「マンゴーです」とシンプルかつ確固たる回答を口にし、会場は笑いに包まれる。
続いて松本は「美しい自然なままの地球です」と答え「100万年後も美しい自然と平和な世界」を望む。そんな松本に吉岡が「そこにマンゴーはありますか?」と問うと、松本は「あります!」と即答し「咀嚼もできます」と断言! 会場は笑いに包まれた。
詩羽は「私は、100万年後も自分のことを愛すること――いま、自分自身のことを大切にしているし、自分がいなくなったとしても、自分のことをずっと大切にしていきたい」と語り「その先にはきっと平和が必要なんじゃないかと」と松本の言葉と見事にリンクさせた回答を披露して会場をわかせていた。
最後に千原監督は劇中の「素敵さを言い表せない」という意味のセリフを引用しつつ「この映画も『ここが良かった』とか『こういう映画だ」と答えを見出すよりも、言葉にできない気持ちを残してもらえたらいいなと思ってつくりました。『なんか良かった』『なんか残った』みたいな感覚になったらいいなと思っています」と呼びかけ、舞台挨拶は幕を閉じた。
甘く、柔く、儚い、あこがれにも似た“想い”。「好き」と気軽に口にできないほど微かで淡く、でも抗えない“衝動”。切なくも爽やかな余韻を残す至極のアイスクリームのような恋物語を映し出した映画『アイスクリームフィーバー』は、7月14日(金)より全国公開。
登壇者:吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽(水曜日のカンパネラ)、松本まりか、千原徹也監督
公開表記
配給:パルコ
7月14日(金) TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他にて全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)