映画『札束と温泉』公開記念舞台挨拶が7月1日(土)、東京・シネマート新宿で行われ、主演の沢口愛華、共演の小浜桃奈、糸瀬七葉、大熊杏優、佐藤 京、星れいら、メガホンをとった川上 亮監督が登壇した。
高校の修学旅行で温泉宿を訪れた女子高生のリサ、ひかる、恵麻、美宇の4人が、ヤクザの愛人が持ち逃げした札束の詰まったバッグを発見したことから起こる混乱を“疑似ワンカット”で撮りきった本作。カネを取り戻すために現れる殺し屋。独り占めをもくろむ美宇。美宇と密かに交際していることが別の生徒にバレて口止め料を要求されている担任教師……。複数の思惑が交錯し、すれ違いがすれ違いを呼ぶクライム・コメディ。
主人公の高梨リサ役を演じた沢口は、出演オファーが来た際の心境を聞かれると「私が主演なんだって思いました」と目を丸くし、オーディションではなくオファーという形での出演だったことに「なんで私に主演をやらせたかったんだろうって思いましたが、女優になりたいと思って上京したので、初めてこういうふうに『やってください』とお願いされたのがすごく嬉しくて、“絶対に成功させてやる!”と思いましたね」と力強く語った。加えて、沢口は「ロケ地が大分だと言われたので、“よっしゃー! とり天!”、“毎日、温泉!”って思いましたね」と打ち明けて観客の笑いを誘った。
一方、オーディションで選ばれた関根ひかる役を演じた小浜は「女優のオーディションは書類すら通ったことがほとんどなかったんですけど、それが『通りました』って連絡がきたときに、“(面接官と)会ったらいけるかもしれない”っていう謎の自信がまず湧いてきて、4役分のセリフを覚えてきてくださいということだったので、“ちゃんと覚えて演じ分けたらいけるかもしれない”とチャンスだと思って、初めてマネージャーさんに『今回は決めてきます』ってオーディションの1時間前に電話して(オーディション会場に)行きました」と打ち明け、オーディションでは自分語りをしてしまい、不合格だと思ったそうだが「1週間後くらいにマネージャーさんから授業中に電話がかかってきて、緊急事態だと思って出たら『映画が決まりました』って言われて、もう授業なんかどうでもよくなって、勝手に教室から出て『本当ですか?』って確認して、決まったということを聞いて“これは絶対にやり切らないとな”と思って、こんなチャンス滅多にないだろうと思って全力で撮影に挑ませていただきました」と興奮気味に回顧。これに川上監督は「オーディションのときに、演じる前からしゃべりがこの調子で、いかにも芸能界慣れしている感じですごく印象が悪かったんですけど(笑)、演技をさせたら非常に上手で、完全に覚えていらして、そのときは悔しかったんですけど1番上手だったので、渋々、合格にさせていただきました」と冗談を交えて裏話を明かした。
同じくオーディションで選ばれた佐々木恵麻役を演じた糸瀬は、小浜が演じたひかるか、大熊が演じた美宇役で応募したそうで「私自身、恵麻を演じることはないだろうと思っていたんですけど、『合格しました。恵麻に決まりました』とマネージャーさんから聞いたときに“えっ? どういうこと?”と驚きました」と語り、「初めてこういう(クールな)役柄に挑戦させていただけて非常に嬉しかったですし、期待に応えられるように頑張らないとなって思いました」とコメント。合格を伝える直前まで糸瀬と大熊の役は逆になる可能性もあったそうで、川上監督は「最終的な決め手は、先生を誘惑しそうなのは大熊さんだって、プロデューサーさんと助監督と一致して、糸瀬さんはなんでも上手にやられて、陰気なキャラの研究熱心さが素晴らしかったと思います」と絶賛した。
また、役作りで意識した点や、演じて苦労したことを聞かれると、田中美宇役を演じた大熊は「美宇ちゃんは先生のことを好きになってしまう小悪魔的な存在なので、声のトーンも普段しゃべる声よりも高くしたり、仕草も女の子っぽくしたり、そういう部分を意識して役作りしました」と明かし、殺し屋の越智 遥役を演じた佐藤は「あくまでも本人は取り立て人というつもりで生きているんですけど、自分のやりたいことよりも、職業として向いていたのがたまたま一種の殺し屋でしたっていうつもりで臨んでいたので、特段、役作りで意識したことはないんですが……インナーをスポーツ・ブラにして、“どんな動きがあっても大丈夫なように”って気持ちでやっていたくらいです(笑)」と告白。ヤクザの愛人・水無月綾乃役を演じた星は「ヤクザの愛人と聞くとヤンチャそうな女性というイメージがあると思うんですけど、実際に演じてみたときに人間らしいなと思いました。演じる上で気をつけたことは、取り立て人とのツー・ショットのシーンでボソッと突っ込む箇所が何個かあって、そこのテンションが1番難しくて監督に聞いたりしましたし、最後のシーンでは弱い部分を見せながらもちょっと強い女の子でいたいという綾乃を演じられたかなと思いました」と手応えをにじませていた。
さらに、本作は“疑似ワンカット”で撮影されたが、撮影エピソードを尋ねられると、沢口は「ワンカットだからこそ、カメラとの距離感が……」と話すと、キャスト陣は頷いて共感し、それを見た沢口は「みんなも思ってた? 私も思ってたの!」と声を弾ませ、「あとは歴史ある建物で廊下が狭めなので、しかも床が軋むんですよ。その軋む音と自分のセリフが重なっちゃうと撮り直しなので、みんな心を折られながら、精神力を鍛えられながら撮影した記憶がありましたね」と吐露。小浜は「みんなで役の気持ちを合わせるのはもちろんだったんですけど、カメラマンさんや音声さんとも気持ちを合わせて一体感を作り出さないとタイミングが合わなかったので、そういうところはワンカット風ならではなのかなと思いましたし、普段は感じられない緊張感も楽しみながらできましたね」と充実した表情を浮かべた。加えて沢口は、撮影していた旅館で実際に寝泊まりをしていたことを明かし「待機中は自分たちの部屋にいたんですけど、騒いだら音声に入っちゃうので、本当に静かにしないといけなかったですし、トイレに行くのを我慢していたこともありました(笑)」と茶目っ気たっぷりに笑った。
そして、締めのコメントを求められると、川上監督は「役者のみなさんにはワンカット風の苦労に加え、コメディの演技をすごくしっかりとやってくださって、例えば私が前に作らせていただいた作品だと、セリフとセリフの間を伸ばしたいと思ったら編集でいじることができたんですけど、今回はそういったことができない状況で、しっかりとコメディの演技をしてくださった皆さんの演技を、ぜひまた観ていただきたいですし、2度、3度観ていただけるのでしたら、この瞬間、別のキャラクターはどこで何をしているのかなって考えながら観ていただけると、より楽しんでいただけるんじゃないかなと思います」とオススメし、大熊は「個性豊かなキャラクターたちが空回りしていく姿に元気をもらえるような映画になっていると思うので、2度、3度と劇場に足を運んでいただけたら嬉しいですし、この映画がもっとたくさんの方に届くことを願っております」とアピール。
小浜は「ひかるらしく最後まで自分のことを全面的にアピールして帰りたいと思うんですけど、ひかるちゃんと私は似ている部分が多くて、自然と役に入りやすくて、監督ともいろいろな話をしながらよりよいひかるちゃんを作り上げられたと思うので、自信を持って『たくさん観てください』と言えます。ひかる推しじゃなくても、次に観るときはひかるちゃんをいっぱい目に焼き付けていただけたら嬉しいです」と主張し、沢口は「私はリサと私の違うところを話そうと思うんですけど、私は名古屋出身で方言がないようであるんですね。例えば靴のことを“く(↑)つ(↓)”って言うんですよ。稽古中に散々みんなに迷惑をかけたんですけど(笑)、(劇中で)『美宇の靴ないね』って言っているのは稀な標準語ですので、そちらにも興味を持っていただきたいですし、前回、渋谷で完成披露試写会をやらせていただいて、初めて皆さんに『札束と温泉』を観ていただいたときに、たくさんの感想をいただいて、私たちが気づかなかったことにも気づいてくださって、“作ることって面白いな”ってすごく思いました。そんなことを思わせてくれた『札束と温泉』をまた皆さんに観ていただいたり、他の人にも観ていただいて、広まっていってもらえたら嬉しいなと思います。この2週間、ぜひ『札束と温泉』をよろしくお願いします」と頭を下げお願いした。
登壇者:沢口愛華、小浜桃奈、糸瀬七葉、大熊杏優、佐藤 京、星れいら、川上 亮監督
公開表記
配給:渋谷プロダクション
全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)