作品紹介

『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』

©2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス

イントロダクション

 ノーベル平和賞候補(1995年)になり、朝日賞や埼玉県民栄誉賞などを受賞した水墨画で風景画家の丸木位里(1901‐1995)と人間画家の丸木 俊(1912‐2000)夫妻。二人は、「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と40年に渡り、戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた。
 1945年の沖縄戦の写真は、アメリカ側が撮影した写真しか存在していない。二人は「日本人側から見た記憶を残しておかなければいけない」と、1982年から1987年に沖縄戦を取材し、「沖縄戦の図」14部(「久米島の虐殺1」「久米島の虐殺2」「暁の実弾射撃」「亀甲墓」「喜屋武岬」「ひめゆりの塔」「沖縄戦―自然壕」「集団自決」「沖縄戦の図」「ガマ」「沖縄戦―きやん岬」「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」)を制作した。今までは二人で進めてきた共同制作だが、沖縄に来て、体験者の証言を聞き、生々しく残る戦地を歩き、村人も参加する開かれたものになっていった。完成した「沖縄戦の図」は、平和を願い描いた二人の作品群の中でも、余すことなく戦争の悪を描き、日本軍の愚かさを伝えてその記憶を未来へ継承しようとする怒り溢れる作品となった。

 本ドキュメンタリーは、個々の絵についての説明や批評はあった「沖縄戦の図」全14部を全て紹介する初めての試みである。二人が最晩年、6年かけて取り組んだ「沖縄戦の図」の制作の軌跡を辿ることで、「反戦反核の画家」と一言では語り切れない、二人の命に対する眼差しを丁寧に紹介していく。

 同時に、二人が証言を聞いた人々にインタビューすることで、二人が「戦争悪が凝縮している」と驚いた、家族同士が手をかけた集団自決など、「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた「地上戦」である沖縄戦のいろいろな側面を見せる。存命の直接戦争を語れる体験者が数少なくなっている中、貴重な映像資料となっている。

 「沖縄戦の図」全作品は、戦後米軍基地として接収されていた館長・佐喜眞道夫の先祖の土地を、交渉の末に返還させた特別な土地に建つ佐喜眞美術館に収められている。「命(ぬち)どぅ宝(命こそ宝)」という概念コンセプトが来場者に伝わる空間とするための工夫も紹介されている。

 また、深い心の傷を負い、戦争の出来事を語ることができない戦争体験者は多いが、沖縄民謡のなかには、その悲しみと二度と戦争を起こしてはならないという切実な思いが歌詞に込められた歌も残されている。若い沖縄民謡唄者の新垣成世と同級生で平和ガイドでもある平仲稚菜が「沖縄戦の図」などから戦争について学び、民謡でも戦争体験を継承していく姿も織り込まれている。

 沖縄にて先行公開中の本作は、7月15日(土)~7月28日(金)にポレポレ東中野、8月1日(火)~8月6日(日)に東京都写真美術館ホールほかにて全国順次公開される。

ストーリー

 ノーベル平和賞候補(1995年)になり、朝日賞や埼玉県民栄誉賞などを受賞した水墨画家の丸木位里(1901‐1995)と洋画家の丸木俊(1912‐2000)夫妻は、「日本人側から見た記憶を残しておかなければいけない」と、1982年から沖縄戦の取材を始める。

 夫妻が最初に描いたのは、日本兵によって行われ敗戦後まで続いた、あらぬスパイ容疑をかけての久米島住民虐殺。しかし、「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と40年に渡り、戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた二人は、いつかは希望を描きたいと願っていた。二人が最後に描いたものとは?

 1987年までの6年間で描かれた「沖縄戦の図」14部の制作の軌跡を辿ることで、二人の思考を明らかにし、二人が出会った人たちを通して、沖縄戦以降の沖縄の歴史を振り返る。

 (2023年、日本、上映時間:88分)

キャスト&スタッフ

 ナレーション:ジョン・カビラ
 朗読:山根基世

 出演:新垣成世、平仲稚菜、島袋由美子、平良 修、平良悦美、真喜志好一、佐喜眞道夫、山城博明、吉川嘉勝、丸木ひさ子、岡村幸宣、知花昌一、山内徳信、金城 実、本橋成一、石川文洋

 資料提供:沖縄県公文書館、ひめゆり平和祈念資料館、久米島博物館、読谷村教育委員会、原爆の図 丸木美術館、琉球新報社
 映像提供:NHK 1984年「日曜美術館 戦世の画譜」、シグロ/パラブラ 1983年「水俣の図 物語」1987年「ゆんたんざ 沖縄」
 リサーチャー:上間かな恵
 イラスト:黒田征太郎
 ポスターデザイン:ぎすじみち
 タイトルCG:中村照雄、中村博子
 技術:丸山 俊、鈴木絢子、赤川 淳
 編集:荊尾明子
 主題曲:川田俊介
 音楽監督・音響デザイナー:尾上政幸
 助監督:佐喜眞淳

監督:撮影:河邑厚徳

ギャラリー

予告編

オフィシャル・サイト(外部サイト)

『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』
丸木位里、丸木俊の大作「沖縄戦の図」は複数の時が運命的に交錯して生まれた。「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた二人は、最晩年、沖縄戦に六年かけて取り組んだ。そこには星が会合するような奇跡の物語...

 公式Twitter:@OKNWsen14movie

公開表記

 配給宣伝:海燕社、アルミード
 沖縄にて先行公開中
 7月15日(土)~7月28日(金) ポレポレ東中野
 8月1日(火)~8月6日(日) 東京都写真美術館ホールほかにて公開

(オフィシャル素材提供)

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