映画「向田理髪店」先行プレミア上映会の舞台挨拶が10月1日(土)、福岡・セントラルシネマ大牟田で行われ、主演の高橋克実、共演の富田靖子、白洲迅、メガホンをとった森岡利行監督が登壇。大牟田市長の関好孝氏もゲスト登壇した。
本作は、寂れた元炭鉱町「筑沢町」にある理髪店の親子の葛藤を軸に、過疎化、少子高齢化、介護、結婚難など、どこの地方も抱える深刻な問題に直面しながらも懸命に生きる人々の姿を通して、現在の日本で忘れられてしまった家族の絆、人とのつながりの大切さを観る人に思い出させてくれる心温まる物語となっている。
そんな本作が生まれた街・大牟田に久しぶりに訪れた感想を求められると、向田理髪店の店主・向田康彦を演じた高橋は「撮影が去年の12月に2週間あって、寒かったというイメージがあったんですけど、今日は天気もよくてポカポカしていて去年の12月とは印象が全然違いますね。僕は暖かいほうがよかったなと思いました」と本音を吐露して笑いを誘い、同じく“大牟田、暖かーい”と思ったという康彦の妻・向田恭子を演じた富田は「映画の中でも映画の撮影シーンがあるんですけど、そこで薄くてかわいいワンピースを着させていただいて、頑張って撮影させていただきました。世界遺産でもある三池炭鉱で、血を流している人を発見して『きゃー』とか言ったりもしていますが、“世界遺産でこんなことさせていただけるなんて感謝です”って思いながら、寒いながら撮影したのを思い出しました」と回顧。
康彦の息子・向田和昌を演じた白洲は「ただいま」と挨拶をし、「本当に寒かったので僕はラーメンばかり食べていました。寒くなくてもラーメンばかり食べていたと思うんですけど(笑)、東洋軒には3~4回くらい行きましたし、福龍軒にも行きましたね。なので、映画の撮影の思い出というとほぼほぼ大牟田ラーメンですね」とにっこり。続けて、「大牟田ラーメンってすごく美味しくて、博多よりもちょっと濃い目というか……。あっ、ラーメンの話はこれ以上やめておきます。(話が)止まらなくなっちゃうので(笑)。本当に美味しかったです」とラーメン愛を語った。
改めて、本作の見どころを尋ねられると、高橋は「今日、来ていらっしゃる方の中にも出演されている方が多分いらっしゃると思います。聞いた話によりますと、のべ700人の大牟田の方々に参加していただいたとのことで、まずは自分が出ているところ、あとは参加していない方でも“自分もこんなことあったなあ”と身近に感じられるシーンだけで構成されていて、押し付けがましくなく、自然に“なるほどね”って気持ちになれる映画ですので、その辺を見ていただければと思います」アピールし、富田は「息子が父親を超えるといいますか、男同士の何かがあるんですね。また息子がお父さんにいいことを言うんです。それを私は隣で『うん、うん』って聞いているだけなんですけど、とても幸せでした。なので、父親と息子のやりとりと、この2人が何を感じているのか、映画を観ながらみなさんも感じてくださったら嬉しいなと思います」とコメント。
白洲は「さっき僕ら3人で取材を受けさせていただいて、同じように見どころを聞かれたんですけど、3人ともネタバレになってしまうようなことばかり答えてしまって、(見どころが)たくさんありすぎて内容までしゃべりたくなっちゃうんですけど、息子的にはこの親父と母ちゃんがすごく素敵な言葉をかけてくれるんですね。そのワードが2人とも同じなんですけど、僕はあのシーンがすごく好きです」と目を輝かせ、「そこは(映画を見て)楽しんでもらって、自分の親に会いたくなったり、実家に帰りたくなってもらえたら成功なんじゃないかなと思っています」と語った。
そして、森岡監督は「エキストラで大牟田の方々に出ていただいて、普通は歩いたりするだけなんですけど、お芝居もしていただいているんですね。そこも見逃さないでほしいなと思います」と明かし、「あとは裏で商工会の青年部の皆さんが手伝ってくださって、本当はスタッフがやらないといけないことも全部やっていただいて、雨が降るシーンとかも手伝ってもらっていい画が撮れたので、本当に感謝しています」と頭を下げた。
また、撮影で初めて大牟田を訪れたという高橋は、その際の大牟田の印象を聞かれると「知っていることといえば三池炭鉱とか炭鉱節くらいだったんですけど、海の向こうの真ん中に島があって、『あそこが炭鉱なんです』って言われて意味が分からなくて、『あそこまでずっと掘っているんです』って聞いてとてもびっくりした思い出があります」と振り返り、「僕も田舎(出身)なんですけど、昔は栄えていて今は静かな感じが、自分が生まれたところもそんな感じなので、懐かしいというのが来たときの印象でした」としみじみと語った。
さらに、大牟田市長の関氏が映画公開を祝って劇場へ駆けつけ、高橋へ花束を贈呈すると「本当に素晴らしい映画を作っていただきました」と感謝し、すでに本作を見たそうで「3つだけお伝えしたいと思います。高橋克実さんが(筧美和子演じるスナックのママに)『年上の人が好き』と言われて鼻の下を伸ばすシーンがあります。それがとても感動しました。そして後半に白洲さんが駅で言われるセリフに涙しました。最後に素晴らしいエンディングが待っています。本当に素晴らしい映画です。みんなで応援しましょう」と呼びかけ、観客から拍手を浴びた。
登壇者:高橋克実、富田靖子、白洲 迅、森岡利行監督
特別ゲスト:関 好孝大牟田市長
配給:キャンター
10月7日(金)より福岡+熊本先行公開、10月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
(オフィシャル素材提供)