映画『アイスクリームフィーバー』が7月14日(金)に公開を迎え、東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズにて初日舞台挨拶が開催。主演の吉岡里帆をはじめ、松本まりか、詩羽(水曜日のカンパネラ)、千原徹也監督が登壇した。
千原監督は初監督作が公開を迎え「4年ほど前にこの映画を企画して、このようなたくさんの人に集まってもらえる日を迎えるとは、全く想像してなかったので嬉しいです。(客席を)見ると泣きそうなんで、あまり見られないですが……」と感激を口にする。
それを“恋”と呼べるのかもわからない、さまざまな「好き」という感情を描いた本作だが、アイスクリーム屋で働く主人公・菜摘を演じた吉岡は、モトーラ世理奈が演じる佐保への思いについて問われ「今日、世理奈ちゃんと一緒に登壇できなかったのが残念なんですが、モトちゃん自身が、ひと目見た瞬間から心奪われるような方なんですよね。たまらないというか、会えてよかったという気持ちに自然になりました。自分に自信がなくて、『自分には何もないんだ』という思いを、人との出会いが埋めてくれるようなロマンチックさを私はこの脚本から感じていました。人によってすくい上げられるような希望的な感覚を千原さんがこの映画に込めた思い――『優しくつながっている』という、人とのつながりの尊さを感じながら演じてました」と撮影の日々で感じた思いをふり返る。
詩羽は、菜摘のアイスクリーム屋の後輩・貴子を演じたが「貴子が菜摘さんに想いを寄せているのかいないのか? 好きという確実な描写はないけど、近くにいる素敵な人に何か魅力を感じるというのは、日常でもあるんじゃないかと思います。恋か恋じゃないかの線引きは難しいけど、そういうものを細かく描き、細かく気にしながら演技させていただき、それをダンスにも落とし込んだので、切ない表情やいろいろ考えている貴子の表情をくみ取って見ていただけたら嬉しいです」と語る。
今回、演技初挑戦となったが、現在、既に2作目の現場に入っているそうで、今後について「今回、この現場で初めてお芝居を経験させていただいて、本当に楽しかったし、温かくて、かけがえのない時間を過ごせたので、これを機にどんどんいろいろな作品につなげて、またここにいる皆さんとお会いできるように頑張りたいと思います」と意欲をのぞかせた。
松本が演じた優はアイスクリーム屋の近所に暮らす女性で、物語が進むにつれて、徐々に彼女が抱える過去も明らかになっていく。松本は、優が過去に複雑な別れ方をした元カレにもう一度、コンタクトをとるというシーンに触れ「みんな、一歩を踏み出さなきゃと思っているけど、勇気が出ずにダラダラ過ごしてしまって殻が破れないんですよね。でも、一歩を踏み出してみると『あれ?』という世界が待ってるんです。こんな身軽になれるんだ? 重かった思いが、全然違う見方ができるようになって、世界が激変する瞬間があるんです。演じていてもドキドキしたし、私自身、まあまあ長い時間を生きてきて、一歩踏み出さなくちゃいけないって思えたし、その先に全然違う世界が待っていると、このシーンから教えられました」と充実した表情を見せた。
本作は音楽を田中知之が担当し、テーマソングに吉澤嘉代子の「氷菓子」、エンディング・テーマには小沢健二の「春にして君を想う」が使われているが、千原監督は「僕は京都出身ですが、レコード屋で田中さんを見かけて、サインをもらったのが出会いです。田中さんがそれを『この映画をやるためのサインだったんじゃないか?』とすごく良いことを行ってくださって、20年が経ってつながったのかなと思います。小沢健二さんはやはり90年代の僕の青春で、思い出にあるので、この曲を最後に持ってこられてよかったです。90年代をリスペクトしただけでなく、いまの渋谷が、さすがアイスクリーム!という感じで混ざり合っています。吉澤さんの曲も……(流れるシーンは)あそこは最高なので!」と嬉しそうにアピールした。
映画にちなんで「この夏、フィーバーしたいことは?」というお題に、吉岡は「最近、別の作品の現場に入ってるんですが、一日の終わりにサクレ(※カップタイプのかき氷)を食べています。切ったレモンがそのまま乗ってるんですけど、酸っぱい部分をスプーンで削りながら食べるのが好きで、サクレに背中を押されてお仕事を頑張っています!」と明かしが、千原監督、松本はサクレの存在を知らず、これには吉岡さは「え? ホントに言ってます……?」と驚いた表情。
吉岡は思わず、客席に「サクレ、好きな人?」と問いかけ、「はーい」という観客の声に「よかったぁ……私だけ違う世界で生まれて育ったかと」と安堵の表情。ちなみに千原監督は「れもんらいふ」という会社を経営していることから、吉岡から「レモンのアイスなのになぜ知らないのか(笑)?」と鋭く突っ込まれ「“れもんらいふ”と言いながら、酸っぱいものは苦手で……(苦笑)」とタジタジ。吉岡は「私は地でレモンライフしてますよ!」と語り、会場は笑いに包まれていた。
松本は「ここ数年、全然フィーバーしてないので、今年はしてやろうと思ってます」と力強く語るが、「何を?」と問われると、ちょっと考え込み「夏らしいことですよね? 海? 青い海」と答え、吉岡に「一緒に行かない?」とお誘いをかける。吉岡はノリノリで「行きましょう! 全然、いつでもお付き合いします」と語り、詩羽も「行きます!」と快諾していた。
その詩羽は「青春をフィーバーしたいです」と宣言! 現在、入っている現場の同世代の共演者が多く、友達が増えたようで「この仕事を始めるとなかなか『青春だ!』って難しいじゃないですが。歳を重ねるごとに『青春とは……?』となっちゃうけど、はっちゃけるだけはっちゃけたいです」と意気込む。ちなみに具体的に青春で謳歌したいことを尋ねると「私は最近、一番青春だと思っているのはボウリングです! 皆さんもぜひ!」と客席に向けて呼びかけていた。
最後に、詩羽は「私は『優しくつながってる』というメッセージがすごく好きで、今日、こうやって皆さんとお会いできたことも、現場でお会いした皆さんとも『つながってる』と思っています。この映画を観て、皆さんが、優しい気持ちになって夏を楽しく過ごしていただけたら嬉しいです」と語りかける。
松本は本作において、さまざまなファッションやカルチャーぶつかり合い、個性が描き出されていることに触れつつ、感極まって涙を流しながら「若い者たちの間で、いろいろなことがあるじゃないですか? 自分たちをどう表現していいかということが分からなくて、一生懸命、自分たちを表現するけど、うまくいかなかったり、批判されたり、こういう世の中になって……。でも、この映画では、どんな趣味嗜好であっても、どんなに平凡でも、どんなに奇抜だったとしても、それを認めてくれると思います。千原くんも奇抜じゃないですか? でも、メチャクチャ良いじゃないですか! そういう個性というものをもっと認め合えばいいじゃないかって思うんです。いろいろあるけれども、この映画を観て、自分の持っている“個”をもっともっと出していいんだということ、(批判の声に)負けないでほしいですし、すごく個性的な人たちがたくさん出ているので、みんなが認めあえるような世の中になったら良いなと思いました」と声を震わせながら熱く語り、会場は温かい拍手に包まれた。
吉岡は、松本の言葉に「分かります」と頷き「私が演じたキャラクターは『自分は仕事を辞めたら何も残らないんだ』という諦めみたいなものを感じたところから物語が始まるんですけど『自分は何もない』と思った時に出会ったひとりの人に人生を救われるというストーリーが私は本当に好きです。ひとりじゃ立ち向かえないことも、誰かとの出会いで乗り越えられたりすることがあるという、大きな愛の話でもあります」と語る。
さらに吉岡は「私は吉澤嘉代子さんと何年か前に出会って、『ものがたりは今日はじまるの』という曲のミュージックビデオに出させていただきました。まさに、物語があの日、始まって、『いつか、自分が出演する作品で、嘉代ちゃんが曲を書いてくれる夢がかなったらいいね』と話していたのが、やっと今日、そういう日を迎えました。長い時間をかけて夢がかなったりすることもある――捨てたもんじゃないぞってこの仕事から感じた部分がたくさんありました」と感慨深げに語った。
千原監督は「今日、実は朝、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』と観てきました」と突然の告白。そして「宮崎監督が最後にこれを伝えたかったのかって思うと涙が止まらなくて、その日に初監督の映画が公開というのも、またひとつ何かがつながっているなと思いました。宮崎監督の映画を観ていて、おこがましいですが、考え方が似ていると思ったのは、人と人との思いやり、それしかないなということ。そういう人の気持ちが、ちょっとずつ、毎日を良くしたり、今日につながっているのかなと思いました。それを感じてもらって、明日からみんなでこの映画をつないでいってもらえると嬉しいです。よろしくお願いします」と語り、温かい拍手の中で、舞台挨拶は幕を閉じた。
登壇者:吉岡里帆、松本まりか、詩羽、千原徹也監督
公開表記
配給:パルコ
7月14日(金) TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイント他にて全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)