2023年12月12日に生誕120年を迎える、日本を代表する映画監督、小津安二郎。
その人気や評価は今なお色あせることなく、2022年には英国映画協会(British Film Institute)の発行する映画雑誌「Sight&Sound」誌において、『東京物語』が「史上最高の映画100選」の4位(日本映画最高位)に輝くなど、世界中の映画人や映画ファンから高い支持を得ている。
これまでも小津作品は数々の映画祭での上映が行われ、その度に観客から喝采を浴び、再評価を高めてきた。そしてこの度、小津安二郎監督作品『父ありき 4Kデジタル修復版』(1942年製作、英題:There Was a Father 4K Digitally Restored Version)が、第80回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)に選出され、現地でワールドプレミア上映を行うことが決定した。
ヴェネチア国際映画祭公式サイト
(開催日程:2023/8/30~9/9)
『父ありき 4Kデジタル修復版』作品情報
(英題:There Was a Father 4K Digitally Restored Version、1942、日本、上映時間:92分)
監督:小津安二郎
脚本:池田忠雄、柳井隆雄、小津安二郎
出演:笠智 衆、佐野周二、津田晴彦、佐分利信、坂本武、水戸光子、大塚正義、日守新一、西村青児、谷 麗光、河原侃二
<概要>
戦時下に製作された『父ありき』は、同じ教師の道を選んだ父と子の親子関係を繊細かつ濃厚に描いた、哀感に溢れた作品。笠智 衆の初主演作品であり、佐野周二など後の小津作品の常連となるスターたちを数多く起用。後の小津作品にも共通する、「人と人との繋がり」や「家族」といった、普遍的なテーマを題材としている。
<あらすじ>
金沢で中学教師をしている堀川周平(笠智 衆)は妻に先立たれ、息子の良平(佐野周二、少年時代:津田晴彦)と2人で暮らしている。そんな中、周平は修学旅行先で教え子を溺死させてしまい、責任を感じて退職。良平を寄宿舎に残し、東京の工場で働きだした。時が過ぎ、良平は仙台の帝大を卒業して、秋田の学校で教師となった。彼は久々に父親と再会するのだが……。
『父ありき』4Kデジタル修復について
戦時下に製作され、当時の社会状況や戦争に関する言及がある小津安二郎監督作品『父ありき』の公開当時のオリジナル版は、本編尺が94分、フィルムの長さにして2588mと記録に残されている。戦後占領期の1945年再公開時にGHQの検閲によりオリジナル版から多くのシーンがカットされることとなり、松竹に残された原版素材(16㎜マスターポジ)は、本編尺が87分に短縮されたものだった。
国立映画アーカイブと松竹の共同事業にて修復を行った。4Kデジタル修復《フル4K(4K解像度<4096× 3112>スキャン、4KDCP》では、松竹が所有する16mmマスターポジと、ロシアで新たに発見され、国立映画アーカイブが保管している35mmプリント(72分)の両方を4Kスキャン。双方の画と音を比較し、欠落している箇所を組み合わせ、1942年公開当時のオリジナル版に限りなく近い状態への修復を行った。4Kデジタル修復しました本作の上映尺は92分。
画像修復は、近森眞史キャメラマンが監修し、イマジカにて作業。音声修復は96kHz24bitでデジタイズし、電源、キャメラ、光学編集、ネガのキズや劣化等、さまざまな要因によるノイズ、レベルオーバーによる歪みを、原因に立ち返って類推し、清水和法氏監修のもと松竹映像センターにて修復。小津安二郎監督の製作意図を尊重して修復することを主眼に作業している。
これまでにデジタル修復された小津作品ワールドプレミア上映
小津安二郎公式WEBサイト
(オフィシャル素材提供)