A24が新たに贈る注目作『THE INSPECTION』が、『インスペクション ここで生きる』の邦題で8月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにて全国公開となる。
『ムーンライト』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ほか、革新的な作品を次々と送り出してきた映画会社A24。業界屈指の目利きたちが次に見出したのは、ある新鋭監督の半生を描いた実話だった――。
イラク戦争が長期化する2005年、アメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年。しかし、彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。
海兵隊に在職中だった20代で初めてカメラを手にし、そこから映像記録担当としてキャリアを始めたエレガンス・ブラットン監督の長編デビューにして、彼の体験に基づく実話である本作。 主人公であるエリス・フレンチを演じるのは、俳優、そして歌手としても活動し、2019年のトニー賞では別々のパフォーマンスで2つの部門(演劇主演男優賞/ミュージカル助演男優賞)にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープ。本作では第80回ゴールデングローブ賞で主演男優賞(映画・ドラマ部門)にノミネートされたほか、世界各国で高い評価を受けた。また、音楽は「21世紀の最重要バンド」と評されるアニマル・コレクティヴが担当。逆境に屈せず前を向く主人公フレンチの姿をエモーショナルに彩っている。
この度、2005年のアメリカで、監督自身の実体験に基づく本作から、新兵たちがブート・キャンプに到着するやいなや“インスペクション=点検・検閲”される、タイトルに紐づく象徴的なシーンの本編映像を解禁。
ゆっくりと停車するバスの中から走って飛び出してくる青年たち。それもそのはず、両サイドから「降りろ!」「さっさと並べ!」「早く行け!」と教官たちが大袈裟な身振り手振りとともにがなり立てているからだ。「シャツをズボンに入れろ」と数秒で服装のチェックまで入る。荷物を抱えた青年たちは黄色い足形のあるエリアまで誘導されるが、これは気を付けの姿勢とされる印。複数の指導者を取りまとめるロウズ上官は、新兵達に正しい足の揃え方を指示しながら、「3ヵ月でお前らを最強の兵にして戦闘に送り出す」と宣言する。新兵たちの不安そうな顔とは対照的に、その顔には微かな笑みが浮かぶ。
ゴールドのアクセサリーで装う者や、花柄のトップス、赤いパーカー、ジーンズに身を包む者、彼らはまだ制服に袖を通すことを許されていない海兵隊の卵たちだ。そんな彼らに最初に待ち受けている試練は、教官たちから徹底的に行われる“インスペクション”。点検・検査といった意味を持つ言葉だが、彼らがブート・キャンプに足を踏み入れた瞬間から、「重罪歴はあるか? 最近大麻を吸ったか? テロ組織に所属していたことは? 共産主義者か? 同性愛者か?」と、全員が海兵隊の物差しで教官たちから詰問される。顔に唾がかかるほどの大声、至近距離で問われた新兵たちも、全力で「ノー、サー!」と叫び返さなければならない。その時に教官と目を合わせることは許されず、茶化した者には腕立て伏せが命じられ、例えその場で自分の父親が教官と元同僚だったことを伝えても何の役にも立たない。新兵それぞれが一人の人間として“インスペクション”される、タイトルにも紐づく象徴的なシーンである。
「今までの軍隊ものでは描かれなかったシーンだと思います」とブラットン監督は話す。鬼教官にしごかれるハードなシーンは、軍隊を描く名作の数々でも散見されてきたが、今回の映像のような入隊前のやり取りはあまり馴染がないかもしれない。それは全てエレガンス・ブラットン監督自身の身に起きた事柄であり、彼の経験を色濃く反映している映画だからであろう。
また、「インスペクション」というタイトルに関して監督は、「海兵隊という場では日々、点検・検査が行われているのでもちろん軍隊・上官からフレンチへの“インスペクション”ということもあるし、同時に社会の中で自分が“インスペクション”されるという意味合いも込められています」と明かしている。「私は、軍隊に対して否定も賛同もしていない。この映画を通して会話を生み出して欲しかったのです」と話すように、物語の本質は軍隊の描写のその先にある。軍隊で、延いては社会で誰かが誰かを“インスペクション”すること。それは誰の物差しで、誰が良し悪しをジャッジするものなのか。多様性について世界中が議論を続けている昨今、あなたの考えを巡らせるきっかけにして欲しい。
公開表記
配給:ハピネットファントム・スタジオ
8/4(金) TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開
(オフィシャル素材提供)