第18回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門に正式出品された、福岡、佐賀を舞台に、3人の異母姉妹が織りなす物語を描いた『緑のざわめき』。この度、主人公・響子役を演じた松井玲奈のオフィシャル・インタビューが到着した。
松井玲奈
1991年7月27日生まれ。愛知県出身。
2008年デビュー。主な出演作は、『よだかの片想い』(安川有果監督)、『幕が下りたら会いましょう』(前田聖来監督)、NHK連続テレビ小説「まんぷく」、「エール」、NHK大河ドラマ「どうする家康」、舞台『ミナト町純情オセロ ~月がとっても慕情篇~』(いのうえひでのり演出)等。8月スタートのテレビ東京系「やわ男とカタ子」ではヒロインを演じている。
脚本を読んだ時の感想はいかがでしたか?
ちょっと人間模様が複雑なお話だなと思ったんですけれど、夏都監督に、「人と人との関わりの物語であって、ファミリー・ツリーだったり葉っぱの葉脈のイメージがこの作品にはあって、関わり方・ありようが木々の葉みたいにいろいろなところにあるけれども繋がっている、それが3姉妹の繋がりにも影響してくる」というお話を聞いた時に、自分の中でも腑に落ちるところがありました。
実は最初に頂いた脚本が、4時間分ぐらいの、『ロード・オブ・ザ・リング』みたいな、読めども読めども終わらない超大作だったんです。けれど、ある意味削ぎ落としていない監督が一番やりたいことを先に提示していただいたお蔭で、映画では描かれていないそれぞれのキャラクターのバックボーンを事前に知ることができました。役の情報が全て織り込まれていたのですが、その中でも監督が特に描きたくて表現したい部分が今の脚本になって作品になりました。最初の稿は、ほぼ資料でした(笑)。
響子役を演じるにあたり、何を大事に演じましたか?
響子は、お父さんがいなくなっていて片親で、病気を患っていて、女優を辞めたのですが、私には家族がいるし、病気にもかかっていないし、女優の仕事も続けられているし、と並べた時に真逆だったので、それを分かったつもりになったらダメだなと思いました。彼女に寄り添うつもりで、友達の話をしっかり聞くみたいな気持ちで頂いた資料や脚本を読み込む中で、どういう表現ができるかということを第一に考えていました。それでもやっぱり全ては理解ができないからこそ岡崎さんと倉島さんと一緒にお芝居をして、彼女たちが役として乗っかってきた時に、響子として出てきた気持ちを大切にして、その時に初めて「彼女はこういう気持ちだったんだ」と気付ける瞬間を大切にしながら演じていました。
岡崎紗絵さんとの共演はいかがでしたか?
岡崎さんは、初めて会った時から前のめりというくらい「玲奈さんのことを教えてください!」みたいな、「菜穂子がいる!」と感じるくらいぐいぐいきてくれました。
倉島さんとは本が好きという共通点があったので、お互いに今読んでいる本や好きな本を共有し合うというのが、ある意味姉妹でもあり得そうな関わり方だなと思っていて、撮影の待ち時間が嬉しかったです。彼女が待機場の畳の上で寝ているのを見ていると、すごく微笑ましい気持ちになりました。
黒沢あすかさんとの共演はいかがでしたか?
黒沢さんもすごく強い想いを持ってこの作品に臨んでくださったというのを、クランクアップの時に知りました。「年齢を重ねていっている自分にこういう大切な役を任せてくれた監督に感謝しています」と涙しながら語ってくださって、その想いはお芝居から伝わってきていました。姉妹に関わってくる大事な役を演じることができて嬉しかったというお話をしていただきました。撮影中、黒沢さんには、包容力みたいなものがずっとあったんです。そこに甘えていた部分があったのですが、それが腑に落ちました。完成した映画を観て、黒沢さんと一緒に演じたシーンも大切な場面になっているなと思いました。
佐賀での撮影はいかがでしたか?
緑が多いところや田んぼの中や茶畑などのロケ地に行って、監督がこのタイトルをつけた理由だったり、緑の多いところで撮影したいと言っていた理由が分かった気がしています。響子が生まれ育った場所でもあるので、彼女のこれまでの人生のことを感じることができて良かったなと思います。響子の実家も、趣があって、時間が刻まれている感じがすごく良かったです。
完成した映画を観ていかがでしたか?
撮っている間は場面場面で起きていることを感じるのに精一杯だったんですけれど、完成して繋がったものを観た時に初めて夏都監督が何を表現したかったかが明確に見えた気がしています。引きのカットが多い作品なんですけれど、だからこそ、監督が一番伝えたいことになると、登場人物のクロースアップが増えるんです。そのメリハリが面白いなと思いました。
本作の見どころはどこだと思いますか?
人と人との関わり方というのが、複雑ではあるんだけれども、繋がった時に人が生きていくことの難しさと美しさというものがこの作品の中で描かれている気がします。人と人同士が繋がった瞬間をぜひ見ていただきたいと思います。
読者にメッセージをお願いします。
一度だけでなく、二度三度観るととても面白い映画だと思っています。それは、「二度三度観て欲しいです」ということではなくて、とても考察し甲斐がある作品だと思うからです。謎の部分が多かったり、登場人物一人ひとりの表情にしても、なぜこの時こういう顔をしていたのか、それがどこに繋がってくるのか、過去に何があったんだろう、ということが、考えれば考えるほど面白い作品だと思っています。なので、一度観て、作品の大枠を知った上で、二度三度観ると、作品をよりよく知ることができたり、描きたかったことの本質をさらに深く知ることができるんじゃないかと思います。
公開表記
配給:S・D・P
9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)