1993年シチリアで実際に起きた誘拐事件から紡いだ、少年少女の美しくも切ない幻想的なラブストーリー『シシリアン・ゴースト・ストーリー』。この度、アントニオ・ピアッツァ監督のインタビューが到着した。
美しい自然の残るシチリアの小さな村に住む13歳のルナは同級生のジュゼッペに思いを寄せていた。2人の仲が深まろうとする矢先に、ジュゼッペは突然姿を消してしまう。なぜか周囲の大人たちが口をつぐむなか、ルナは懸命に彼の行方と失踪事件の真相を追うのだったが――。美しいシチリアの自然の風景とともに描かれる、人間の残虐さ、純粋な心の強さ。1993年にシチリアで起きた凄惨な事件が紡ぐ、美しくも切ない寓話的な恋物語が完成した。
本作は、2017年カンヌ国際映画祭批評家週間のオープニング作品に選出され、イタリアの主要映画賞を多数受賞し、海外で高い評価を受けている。日本でも2018年イタリア映画祭の上映作品として選出され好評を博した。監督・脚本は、デビュー作『狼は暗闇の天使』が2013年カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いたファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァのコンビが務め、本作がコンビ2作目となる。撮影を『グレートビューティー/追憶のローマ』のルカ・ビガッツィが担当し、光と闇を豊かな映像で映し出し幻想的な世界へと観客を誘う。
脚本・監督:ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ
ファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァはシチリア、パレルモ出身の脚本家兼監督コンビ。
2010年、短編映画『Rita』(未)で監督デビューを果たした。二人が脚本と製作も兼ねたこの作品は、イタリアのみならず海外でもいくつもの最高賞に輝いた。
長編映画デビュー作『狼は暗闇の天使』(2014年イタリア映画祭上映タイトル『サルヴォ』)で2013年カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを受賞した。米国を含む20ヵ国で公開されたほか、世界各地の映画祭で上映された。
『シシリアン・ゴースト・ストーリー』では、2017年カンヌ国際映画祭批評家週間のオープニングを飾り、2018年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞脚色賞受賞をはじめとしてイタリアの主要映画祭のみならず、海外でも高い評価を受ける。
また二人は、ベルリナーレ・レジデンシー、ロカルノ映画祭オープンドア、POWRバルチック・イベント、トリノ・フィルムラボ、カンヌ国際映画祭批評家週間ネクスト・ステップ、Nisi Masa ESPなど、ヨーロッパの主要機関で若手脚本家たちのコンサルタントも務めている。
主人公のルナは実在した人物がモデルなのか、それともこの物語を描くために想像された人物でしょうか?
ルナは想像上の人物です。当時、この事件を周囲の人々が見て見ぬふりをしていた中で、ルナは、そうしなかった人、声をあげた人の存在として必要になりました。実在したジュゼッペは、ごく普通に学校に通っていて同級生たちもいました。映画のためにリサーチをしていた際、事件の結末が明らかになった時のシチリアの新聞を見つけました。同級生がアンチマフィアの抗議デモを行っている写真があり、デモ行進の先頭に立っていて、しかも大きな旗を持っていたのが2人の女の子でした。ルナの存在の手がかりが唯一あるとしたら、その写真の女の子たちで、それ以外はすべて想像の産物です。この物語を、彼を愛した女の子の視点で語りたかったという想いが込められています。
脚本と監督を共同で手掛けていますが、役割分担は?
脚本を書くまでの草案を練るところは二人で一緒に行い、二人で脚本を書きあげることが一番軋轢をもたらす作業になります。共同監督のファビオは対立すればするほどアーティスティックなインスピレーションを得ると信じているのでケンカしてナンボといった感じです。彼の言うとおりと思う部分もありますが、私にとってケンカしながら作業することはかなり大変です。20年間一緒に仕事をしていますが、毎回脚本を書く度に、お前の顔なんてもう見たくないと思う瞬間があります。
現場で監督としてカメラの前に立つときは、すごく仲が良く調和が整っています。というのも、だいたい現場には、少し早めに赴き、写真を撮って確認しながら、カメラを回す前にどういったアングルで撮るかなどハプニングが決してないように綿密に準備をしてから撮影に臨みます。実際俳優が現場に入ると、一見二人が分担しているような感じで動きますが、ファビオはアクティブでアドレナリンが高いタイプなので、俳優の所に自ら行って手取り足取り指導します。私のほうは、体力がなく腰が重いのでモニターの前に陣取って映像をチェックする係です。
イタリアで上映したときの周囲の反応はいかがでしたか?
この映画がシチリアでどういうふうに受け止められるのか正直心配でもありましたが、シチリアでの評判はとても良かったです。特に私ぐらいの世代の人たちは、この物語は語られるべきだというふうに考えたのでしょう。また、若い世代にはきちんと受け止められて、イタリアの学校で上映する機会もあり、長期間に渡って上映が行われています。特にシチリアで上映され続けています。
公開表記
配給:ミモザフィルムズ
2018年12/22(土) 新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
(オフィシャル素材提供)