映画『BAD LANDS バッド・ランズ』が9月29日(金)に全国公開となる。9月7日(木)、原田眞人監督と、本作のプロデューサー・編集を担当した原田遊人氏が日本外国特派員協会での上映会および記者会見に登壇。外国人記者からの質問にじっくりと余すことなく回答した。
日本外国特派員協会への登壇は、映画監督としては最多の7度目となる原田眞人監督に加え、本作では編集だけでなく初めてプロデューサーも務め、さらに物語の重要なシーンへの出演もする原田遊人氏という、映画『BAD LAND バッド・ランズ』を誰よりも知る両名が揃い踏みとなった貴重な機会に、会場には数多くの外国人記者が詰めかけた。そして映画上映後に二人が登場すると、集まった記者たちから大きな拍手が巻き起こった。
第151回直木賞を受賞した『破門』や、『後妻業』などで人間を突き動かす欲望を描いてきた黒川博行が、高齢者をターゲットにした特殊詐欺に着目し、加害者側であるその仕掛け人を中心に、生活保護の不正受給を斡旋し巻き上げる貧困ビジネス、闇バイト、それらの犯行を取り締まろうとする刑事たちとの攻防を書き上げたクライムノベル『勁草』(読み方:けいそう)を原作とした本作。なぜこの題材を選んだのかという質問に対して原田眞人監督は「小説が出た2015年にすぐ読みました。その時、特殊詐欺がちょっとしたニュースになり始めたころで、道具屋や名簿屋など、それらの犯罪グループの分業的なプロセスがすごく面白かったんです」と原作小説を読んだ最初の印象を告白。原作では男性である主人公を“ネリ”という女性に変更したことについて質問が及ぶと「最初に読みながら、これは女性を主人公にしたほうが絶対に成功するなと思いました。僕が敬愛するハワード・ホークスの『ヒズ・ガール・フライデー』も元々は男性二人の物語だったのをケーリー・グラントとロザリンド・ラッセルに変えています。だから性転換に関しては昔から割と自然に自分の中にインプットされていました」と話した。
さらに、“原田監督作品に安藤サクラが出演するのが意外だと感じた”という外国人記者から主人公“ネリ”のキャスティングの理由を問われると「今回は当初、大阪弁のキャラクターと言うことで関西地域出身の役者をキャスティングしようとしていました。スケジュールの都合などでキャスティングが難航していた時に、名前が挙がったのが安藤さんでした。安藤さんのことは元々良い役者だなと思っていましたし、彼女はNHKのドラマで関西弁の演技に挑戦していたという点もあり、安藤さんを検討することになりました」とキャスティング秘話を明かした上で、続けて「実際に彼女にお会いすると非常に魅力的な方でしたし、すぐに大ファンになりました。撮影でもいつも準備万端の状態で、心血注いで取り組んでくれました。山田さんもそうでしたが、大阪弁の先生をつけて勉強をして非常に流暢なセリフを披露してくれたので、監督としては非常に楽でした」と撮影時のエピソードを振り返った。
キャスト陣のセリフ回しについて原田監督が絶賛のコメントを寄せたことで、続いて遊人氏には「原田監督作品における特徴的な“早いペースのセリフ”について、編集する際に監督からの指示などはあったのか?」という質問が寄せられた。遊人氏は「まず、監督がせっかちですからね(笑)」と冗談交じりに応えると会場にも笑いが沸き起こる。そして「原田組のリハーサルで一つ特徴的なのは、最初に顔あわせをするときからほぼ全てのキャストを集めて台本を読むんです。1回目は普通に読んで、2回目はとにかく早く読んでその差をつけてみるというやり方をするので、撮影が始まる頃には役者もだいぶセリフのテンポが速くなっているはずです。情報量は確かに多いのですが、編集として特別なことをしているわけではありません。基本的には監督が望むようなテンポで編集していますし、アドリブも結構多いですがなるべく生かすようにしています」と本作の編集に関して、監督の要望を細やかに汲み取り作品を仕上げていったことを明かした。
また監督は1973年のテレンス・マリックの映画『Badlands』(邦題:地獄の逃避行)を見て非常に影響を受けたそうで、「いつかこのタイトルを使いたいなと思っていました」と語る。満を持してこのタイトルで撮影された本作だが「でも実際にこの作品を作っている毎日は楽しくて、『天国の日々』でした。テレンス・マリックの別の作品ですね」と晴れやかな表情で笑い、充実した制作期間を振り返る様子には会場からは改めて拍手があがった。
登壇者:原田眞人(監督・脚本・プロデューサー)、原田遊人(プロデューサー・編集・俳優)
公開表記
配給:東映/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
9月29日(金) 全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)