映画『GREEN GRASS~生まれかわる命~』初日舞台挨拶が9月22日(金)、東京・池袋HUMAXシネマズで行われ、W主演のイシザキ マサタカ、西岡德馬、共演の小澤征悦、メガホンをとったイグナシオ・ルイス監督が登壇した。
本作は日本とチリの修好120周年記念事業として製作され、“映画界史上初”となる日本とチリ合作映画で、東日本大震災で死後の世界に旅立った息子と、息子を失った父親の2つの視点で人生が描かれ、死を受け入れられない若者の葛藤と遺された家族の複雑な心模様を独特の映像美で綴ったヒューマンドラマ。
死後の世界に旅立った息子・近藤 誠役を演じ、本作の企画にも関わったイシザキは、公開初日を迎えた心境を尋ねられると「この日が来るなんて想像もしていなかったです。長い年月をかけて監督と『あーだこーだ』言いながら13年かかったので感無量です」としみじみと語り、同舞台挨拶のためにチリから約30時間かけて来日したというイグナシオ監督は「今日、この日を日本で迎えられることを嬉しく思っています。先日、チリの映画祭でプレミアを終えて、ブラジルやニューヨークなどの映画祭で上映してきたんですけど、やはり日本とチリの合作ですので、日本での上映を心待ちにしていました。ありがとうございます」と嬉しそうに語った。
また、地球の真裏に位置していながら“地震・津波多発国”の共通項を持つ日本とチリ。2010年カンヌ国際映画祭でイシザキとイグナシオ監督が出会い、「震災による死者への想い」を抱えている国民性に注目し、「命」をテーマにした作品作りの企画がスタートしたそうで、イシザキは「企画のスタートはシンプルで、13年前にカンヌ映画祭に行きまして、たくさんの監督や俳優たちが集っていたんですけど、その中で1番美味しいお酒を飲んで、1番楽しい思い出を作れた相手がイグナシオで、『面白いことができたらいいね』と気軽なところからスタートしたんですけど、“映画を作るのって大変ですね……”ってことが身に沁みつつ、意義のあるものになったんじゃないかなと思っています」と仕上がりに手応えをにじませた。
加えて、現在ニューヨークに在住しているイシザキは、ニューヨークに住むことで役者として得られるものはあるか尋ねられると「日本だと異文化に触れる機会って少ないと思うんですね。『GREEN GRASS』の撮影の経験を経ると、相手の国の性格だったり、やり方だったり、考え方や言葉が違うので、いろいろな文化が入り混じっているニューヨークにいることで、いいステップアップといいますか、いいクッションになって(本作の撮影を)頑張れたなと思いました」と吐露し、チリの方々と撮影しての印象については「自分にとってすごく新しかったですね。撮影なのでやることは一緒なんですけど、チリではやってみたいことを先に掲げて、もし失敗したら修正しようという方針なんですけど、日本の場合は全部計算に入れますから、間違えないようにというところを徹底するんですね。どちらにしても一長一短なところがあるので、だからこそ合作で助け合うというところはマッチングしたんじゃないかなと思います」と語った。
一方、息子を失った父親・近藤清役を演じる西岡は、海外映画初主演を果たした本作について聞かれると「とってもしっとりとした映画なので、絵画を見る感じで、落ち着いて観ていただけたらと思います。ハリウッドのガンガンやる感じとはまったく違う映画なので、ゆったりとした気持ちでご覧になっていただけると嬉しいです」とアピールし、チリにはバラエティ番組で行ったことがあるなど、縁もあったそうだが「そういうチリのイメージがあったので、どういう映画になるかなと思ったんですけど、(事前の)イメージとは違う映画で、イグナシオ監督が一生懸命こだわって、時間をかけてすごく丁寧に作ってくれました」と称えた。
さらに、清の秘書・福永佑介役を演じた小澤は、本作への出演オファーを受けた際の心境を聞かれると「合作はほかにも出させてもらったことはあるんですけど、最初チリという国にピンと来なくて、地図で調べたりして、南米のほうの熱いパッションみたいなものが僕は好きなので、喜んで作品に参加させていただきました」と目を輝かせ、「台本を読んだときに独特な空気感を感じたのを覚えていますね」と回顧。今回、イグナシオ監督とは撮影以来約6年ぶりに対面したという小澤は「(撮影時は)もちろんコロナもなく、みんなで力を合わせて作ったのを覚えていますね。撮影が終わったあとにみんなで飲みに行って、外で座れるようなところで楽しいお酒を飲んだことを覚えています」と懐かしんだ。
加えて、海外の撮影隊と仕事をした感想を求められた小澤は「やっぱり言語が違う。例えば監督、スタッフも日本語がしゃべれないから少し時間がかかるというのはあったかもしれないんですけど、現場レベルで僕が感じたのは、監督の頭の中にあるイメージが明確にあって、役者はちょっと分からないと思いながらやっているところも今回あったんですけど、繋がったものを見たらすごくいいんですよ。監督の明確なイメージというものに、俳優が自分なりの演技というか、間というか、そういうもので応えているんですけど、そういう役者が100%分かっていない映画って実はいい映画になるんですよね」と持論を語り、「今回、そういうのを体験できたので、チリとか日本とかではなくて、素晴らしい監督なんだなと改めて思いました」とイグナシオ監督を絶賛した。
そして、演出をする上で大切にしていたことを聞かれたイグナシオ監督は「ストーリを伝えるということよりも、役者、キャラクター、ロケーションなどがあって、その全体の空気をどうやって映像に収めていくかということを大事にしています」と答え、「個人的に絵画鑑賞が好きなんですけど、映画言語で言うと役者の芝居、それをフレームの中でどうやって動かすか、ラインティングをどうするか、それらをフレームの中にどうやって収めていくかということを1番大事に考えました」と打ち明けた。
最後にPRコメントを求められると、西岡は「この映画は“こうやって観てほしい”というテーゼを打ち出している映画ではないので、観終わった方がそれぞれ感じることがバラバラでも結構です。自分の心の中に“人間が生きていくということはこういうことか”とか、“死んでしまったらこうなるのか”ということを、それぞれの中でお感じになってほしいです」と言葉に力を込め、イシザキは「昨今、情報がたくさんあって溢れてしまうんですけど、本来、物事というのは時間をかけて少しずつ理解していくことも部分的にあるんじゃないかなと思っていまして、この映画はまさにそれを象徴しているかのようなものだと思いますので、主人公の気持ちに沿って、徐々に人が決心したり、気持ちを得ていくさまを一緒に体験して楽しんでいただけたらなと思います」と呼びかけた。
【登壇者】W主演:イシザキ マサタカ、西岡德馬、共演:小澤征悦、監督:イグナシオ・ルイス
公開表記
配給:有限会社ベストブレーン
池袋HUMAXシネマズ他 全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)