『くるりのえいが』完成披露上映会舞台挨拶

　ロックバンド「くるり」の14枚目となるオリジナルアルバム制作時に撮影された、初のドキュメンタリー映画『くるりのえいが』の完成披露上映会が都内で行われ、舞台挨拶に佐藤征史、岸田繁、森信行、佐渡岳利監督が出席してトークセッションが行われた。

　本作は、くるりのメンバーの岸田繁、佐藤征史が、02年７月に脱退した元メンバーの森信行（ドラム）と３人で、新アルバム「感覚は道標」（10／４発売）を制作。静岡・伊豆で合宿して行われた約30日間のレコーディング風景に密着したドキュメンタリー映画。静岡県伊東市の伊豆スタジオで約１ヵ月合宿してレコーディングした、くるりとスタッフが中心に描かれる。メガホンを取ったのは、細野晴臣のドキュメンタリー映画『NO SMOKING』『SAYONARA AMERIKA』などの佐渡岳利監督。

　佐藤は「まさか新宿ピカデリーのこっち側（壇上）に立つことになるなんて思わなかった。ライブする何倍も緊張している(笑)」と満員の客席を眺めながら興奮気味に話す。

　岸田は「ライブでは緊張しないんだけれど……。手汗がやばい状態で、ビチョビチョです。脇汗もやばい(苦笑)」と大緊張な様子で話す。また、「音楽をやっていない人には想像できないことが多いと思います。ご覧になっていただければ分かると思います」と作品をアピール。さらに、アルバム制作時のエピソードについて聞かれると「音楽は大事だけど、食事が結構大事なんです。重要なエピソードと言えば、食事ですね」と話し、会場に笑いを誘った。

　佐藤も「食事は大事なんです(笑)」と同調。「合宿時は毎日のように10時ごろまでレコーディングして終わってから３時、４時まで飲んでいました」とエピソードを披露。なかでも「七輪で焼きながら食べたくさやが特に美味しかった」と明かしていた。

　森も、合宿は伊豆で行われたため、いろいろな食材に恵まれていたようで、マネージャーやスタッフ（エンジニア）の手料理も味わったことを明かしていた。

　「くるりの原点とは？」というトーク・テーマになると、1996年（平８）、立命大の音楽サークル「ロック・コミューン」でくるりを結成し、98年に「東京」でメジャーデビューしている。
　岸田は「大学のころこの３人で別のボーカルの人とバンドをやってて、それが自然消滅したあと、しばらくしてカラオケで歌って『あ～これやー！』っていう感じがありました。ギターを『ウワー』ってやって、『ギョエー』ってやってたんですけど『それでもええねんな』って気持ちになりました。原点は『ギョエー』です」と独特な言い回しで当時を振り返る。
　ボーカル＆ギター岸田とベース＆ボーカル佐藤が、02年８月に音楽性の違いで一度脱退したドラムの森に声をかけ新たな楽曲作りを行った。
　佐藤は「長いことバンドをやっていて学生の頃に組んでたバンドが始まりなんだっていうのがあって。ガチャガチャ３人で合わせてるうちに“やっちゃおうぜ～”となる。楽しいと思ってやってる……今回もそういう作り方ができました」と笑顔で話す。

　３人の楽しげな様子を側で見ていた佐渡監督は「ずっと密着させていただいてたあいだ、楽しく作っておられたのは素晴らしいことだなと思いました。なぜくるりが好きなのか、再確認できる内容になっています」と作品について語った。

　レコーディングに加えて、地元・京都で創業50年の老舗ライブハウス「拾得」での貴重なライブも収録されている。結成当時のプロモーション映像、ライブの映像も収録されている。森は「学生の頃が原点。学生の頃より成長した姿が見える」とコメント。
　また、３人で制作した代表曲「東京」「ばらの花」の話題になると、岸田は「長い間、愛していただいている曲を、俺らが作ったんやなという、誇らしい気持ちが今回アルバムを作るうえで安心感になりました」と話し、「『東京』は適当に作った曲だから、あんま好きやなかったんですよ。でもみんな好きやから、今もライブでやる(笑)」と語った。

　さらに、曲作りのエピソードも披露した。ある日、新幹線で乗り合わせていた人が手紙をくれたのですが、その手紙に『くるりのライブで知り合った人と結婚して上京するんです』って書いてあったのを読んで、曲を書いて良かったなと思ったんです」と素直な思いを述べていた。
　岸田は「くるりは大体、全部で300曲近く作ってますが、録音していない曲もあります。私が作った曲も佐藤さんが作った曲もあります。どの曲がどう、というのはないんですけど。改めて３人でソングライティング、レコーディングをやっている時に、同窓会をやるのではなく新しいものを作りましょうと言うことになりました」と、新アルバム制作への思いを吐露した。新アルバムについては「これから聴いていただく皆さんが、育てていただくもの」と話していた。

　終盤、佐藤監督から名曲「ばらの花」にちなみ、メンバーそれぞれにバラの花が贈られた。

　最後に岸田は「僕は佐渡監督とお仕事ができてホントに良かったなと思いました」と監督に感謝を伝えた。佐藤は「音楽を続けていると、こうやって映画になったり、いろいろなことがあるなと。曲が育つ過程を観てもらえるのは自分たちにとっても嬉しいです。楽しんで観ていただければと思います」。森は「映ってるものはすべて真実。そう思って観てもらえたらと思います」とそれぞれが映画をアピールした。