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『ポトフ 美⾷家と料理⼈』第36回東京国際映画祭Q&A

©2023 CURIOSA FILMS – GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA

 第76回カンヌ国際映画祭〈最優秀監督賞〉を受賞し、料理への情熱で強く結ばれた美⾷家と料理⼈の愛と⼈⽣を味わう感動の物語『ポトフ 美⾷家と料理⼈』が、12/15(⾦)よりBunkamura ル・シネマ 渋⾕宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開が決定した。
 公開に先んじて第36回東京国際映画祭にて公式上映され、10⽉23⽇(⽉)のレッドカーペットと10⽉24⽇(⽕)に開催されたQ&Aに、『⻘いパパイヤの⾹り』(93)、『シクロ』(95)など繊細な映像美で⾼く評価されてきたトラン・アン・ユン監督、『ピアニスト』(01)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞し料理⼈・ウージェニーへの切なく揺れる想いを抱える美⾷家ドダンを演じたブノワ・マジメル、さらに監督夫⼈であり本作でアートディレクションと⾐装を担当したトラン・ヌー・イェン・ケーが登壇した。

 映画『ポトフ 美⾷家と料理⼈』本編上映後、深い感動に包まれ、その余韻にひたっていた劇場内。そこにゲストの3名が登場すると、会場からは⼤きな拍⼿が。その様⼦に笑顔を⾒せたトラン・アン・ユン監督は「皆さん来てくださってありがとうございます。ここの映画館の上映環境は本当にすばらしいですからね。皆さんはここで観られてラッキーですよ」とあいさつ。そして主演のブノワ・マジメルが「この作品を皆さんに紹介できること、信じられないくらい嬉しいんです。われわれも楽しんでつくった映画なので、気に⼊ってくださったらいいなと思っています」と続けると、トラン・ヌー・イェン・ケーも「わたしたちが以前来たのは(2017年の)『エタニティ 永遠の花たちへ』の時。その時もわたしは⾐装とアートディレクションを担当しました。(劇中の19世紀末フランスという)時代は同じなんですが、今回はまったく違ったやり⽅だったんです。皆さんに気に⼊っていただけたら」とそれぞれに挨拶した。
 前⽇のオープニングセレモニーでは、東京ミッドタウン⽇⽐⾕のステップ広場から⽇⽐⾕仲通りにかけて敷かれた165mのレッドカーペットを歩いた3名。トラン監督が「観客との距離もすごく近くて、とてもすばらしかった」と振り返ると、ブノワも「本当に近い距離で歓迎してくれ、交流することができたというのは本当にすばらしいこと。しかもレッドカーペットがとても⻑かったんで、楽しかったですね」とコメント。そしてトラン・ヌー・イェン・ケーも「昨⽇もみんなで話し合っていたんですが、わたしのキャリアの中でももっともすばらしいレッドカーペット。ラグジュアリーな感じがしましたね」としみじみと付け加えた。

 本作で料理を題材にしたのはなぜなのか。その理由についてトラン監督は「実は原作(“The Life and Passion of Dodin Bouffant, Gourmet”(英題))に出合ったのが最初でした。登場⼈物が⾷べ物、料理について語るシーンがすばらしかったんで、それを映画にできないかなと思ったのがきっかけだったんですが、そんな中で、原作を離れて僕⾃⾝が⼊れたかったのが、⻑く続いているカップルの関係。うまくいっている夫婦関係を描くのって難しいんですよ。それはちょっとした挑戦でした」と振り返った。

 劇中でブノワが演じるのは“⾷”を追求し、芸術にまで⾼めた美⾷家のドダン。この役を演じるにあたり、「僕⾃⾝は実⽣活でも料理を作るタイプ。好きな⼥性であったり、友⼈たちなど、誰かのために料理をつくるというのは、⼀種の愛の告⽩だと思う。とはいえ、僕⾃⾝はドダンのようなアーティストというわけではないので、料理をする動作に⼼をこめようと思いました。そうすると直感的に、とても⾃然な形でシーンを演じることができたんです」と述懐。「しかもまわりを囲むのは、本当に才能あふれるスタッフばかりだったので、⾃分としては意外にシンプルに演じることができました。皆さんがご覧になった冒頭の料理のシーン、本当にすばらしかったですよね。トラン監督が振付師のように振り付けをしてくれて、すばらしいリズム感が⽣み出されたわけです。これはみんなでつくりあげた共同作業だったわけです」と振り返った。

 そしてここからは観客からの質問を受け付けることに。「料理のシーンに⾳楽を使わなかったのはなぜ︖」という質問には、「皆さんが料理をする時には、(下ごしらえや調理など)たくさんのしぐさがありますよね。そこで奏でられる料理の⾳というのは、とても豊かなサウンドだと思うんです。でもそこに⾳楽をつけるとそういう⾳を排除することになってしまう。だから編集の時に、そうした料理の⾳を聞いていると、それがまるで伴奏であるかのような⾳楽であることに気づいたので、そこでの⾳楽は排除することにしました。それにしても愛の物語なのに、⾳楽がない映画ってレアですよね」と笑ったトラン監督。

 そしてブノワのファンであるという⼥性からは、「昨⽇、銀座の街を歩いている様⼦を、Instagramにあげていましたが、どこかに⾏かれたんですか?」という質問も。それに対して「皆さんに告⽩することがあるんです」と切り出したブノワは、「僕は⽇本の洗練された料理に恋をしているんです。実は何年も前に、映画の撮影のために3ヵ⽉ほど⽇本に滞在したことがあったんです。その時に、⽇本にはミシュランの星付きレストランがたくさんあるということを知り、たっぷりと堪能させていただきました。そしてInstagramで⾒ていただいた写真では、ここにも⾏きたい、あそこにも⾏きたい、と夢⾒⼼地なところを象徴した写真となっているんです」と説明。
 そして「もう少し告⽩していいですか?」と付け加えたブノワは、「実はこの役のオファーをいただいた時に、監督にある提案をしたんです。グルメで、美⾷家という⼈物を演じる場合、俳優は頑丈で、かっぷくのいい体形であることを要求されがちだけど、時にはほっそりとした料理家がいてもいいんじゃないかとね。実際、この撮影に⼊る前は⾃分はもうちょっとほっそりしていたんですよ。でもこの映画の準備のために、僕の友⼈たちのために料理をつくっていくうちに、体重が10キロ増えてしまった。僕の提案は“有⾔不実⾏”になってしまった。(⾐装を担当した)トラン・ヌー・イェン・ケーさんが準備してくれた⾐装を何度も作り直すことになってしまい、本当に申し訳なかった」と語り、会場を沸かせた。

 その流れで、トラン・ヌー・イェン・ケーに⾐装・アートディレクションのこだわりを聞くことになったが、「(準備期間が)実は25⽇間しかなかったんです。現代映画だって25⽇で準備するのは⼤変なのに、コスチュームプレイですからね。信じられない挑戦でした」と明かし、会場を驚かせるも、「わたしに求められていたことは、できるだけシンプルに、的確に提出するということ。結果としてできあがったものは、とても豊かなものになったなと思います」と⾃負してみせた。また⾐装についても「20年後、30年後に⾒ても古めかしいと思われないように。モダンさを感じさせるようにと⼼がけていました」とそのコンセプトについて語った。

 そんな⼤盛り上がりのQ&Aだったが、残念ながらここで時間切れ。最後にトラン監督が「この映画は愛する喜び、⾷べる喜びが満載の映画です。ですから⽇本の観客の皆さんに、そうした喜びを再確認していただければ」と観客に向けてメッセージを送ると、会場からは万雷の拍⼿がわき起こった。

 登壇者:トラン・アン・ユン(監督/脚本)、ブノワ・マジメル(主演)、トラン・ヌー・イェン・ケー(アートディレクショ
ン/⾐装)

第36回東京国際映画祭 開催概要

 開催期間:2023年10月23日(月)~11月1日(水)
 会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
 公式サイト:https://2023.tiff-jp.net/ja/(外部サイト)


 開催期間:2023年 10 月25 日(水)~27 日(金)
 会場:東京都立産業貿易センター浜松町館
 公式サイト:https://tiffcom.jp/(外部サイト)

公開表記

 配給:ギャガ
 12⽉15⽇(⾦)より Bunkamuraル・シネマ 渋⾕宮下、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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