公開中の映画『唄う六人の女』の公開記念舞台挨拶が、10月28日(土)に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催され、W主演の竹野内豊と山田孝之をはじめ、共演のアオイヤマダ、萩原みのり、桃果、武田玲奈、そして石橋義正監督が登壇した。
石橋監督が監督・脚本・編集を手掛け、約10年ぶりの新作映画となる本作は、森の奥深くに迷い込んでしまった正反対な性格の二人の男と、そこに暮らす美しくも奇妙な“六人の女たち”を巡るサスペンス・スリラー。主人公・萱島森一郎を竹野内豊、宇和島凌を山田孝之がWキャストで演じ、“刺す女”(水川あさみ)”、“濡れる女”(アオイヤマダ)、“撒き散らす女”(服部樹咲)、“牙を剥く女”(萩原みのり)、“見つめる女”(桃果)、“包み込む女”(武田玲奈)たちに翻弄されていく。他にも津田寛治、白川和子、竹中直人など個性豊かな実力派俳優が脇を固める。
石橋監督は、冒頭で「この脚本を書き始めてから約5年が経ちますが、こうしてたくさんの方に観ていただけることを本当に嬉しく思っています。この5年間いろいろありましたが、多くのスタッフに支えられて、何とか奇跡的に完成した映画です。キャストの皆さんが愛情を持ってこの作品に向き合ってくださいました」と感謝の気持ちを表し、「この映画を観るというより体感するような感覚で楽しんでいただければ」とアピール。
約10年ぶりの共演となった竹野内と山田だが、お互いの印象について竹野内が「以前は戦争映画(『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』(2011年公開)でご一緒したのですが、その当時から同じ世代の役者さんとは空気感が全然違っていて、今回さらに研ぎ澄まされていて、いい意味で動物的な感覚を持っている感じでした。見ていて非常に面白かったですね」と明かす。
山田も「前回は兵隊の役だったので、ざっくばらんに話をする雰囲気ではなかったのですが、今回もバチバチの関係性なので、何か話すというよりも僕は森の中で動植物を愛でる竹野内さんを見て癒されていました(笑)」と笑顔で語る。「ちょっと記憶がないんだけど……」という竹野内だったが、山田に「写真を撮られていましたよね。苔とか愛おしそうに見ている竹野内さんを僕は水川あさみさんと一緒に後ろから愛おしそうに見ていたんですよ。蛇とかトカゲとか捕まえていましたね」とバラされ、「ああ、そうだったね」と照れ笑いする竹野内。会場は和やかな空気に包まれた。
2人のキャスティングを、監督は「今回(2人は)対照的な役ですが、どちらも人間が持っている二つの面だと思っていて。明らかにその違いを伝えるには、竹野内さんと山田さんがバッチリだろうと。実際に撮影現場でも、出来上がったものを観ても本当に頼んでよかったと思うし、この2人しか考えられないと思っております」と絶賛し、竹野内と山田に絶対的な信頼を寄せていた。
非常に暴力的な役どころを演じた山田だが、「私はどうしても真面目な部分が出てしまうんです。普通は泊まり込みで撮影し、そこに体が馴染むようにずっと居続けたりするんですけども、今回の役は欲望むき出しな人間なので、あえて、撮影がないときは街に出て、人と会い、酒を飲み、ここが俺の帰る場所なんだと言い聞かせて、演技中は“こんなくそみたいなところ早く出ていくんだ”と思い演技してましたね」と役と向き合っていた様子。
MCから「枕を持っていかれたそうですね?」と聞かれると、「そうなんです。あまり頑丈なほうじゃないので、そうやって精神的に追い込んでいくと、疲弊してくるんです。なので、宿に戻ったときぐらいは癒したいから、家からパジャマと枕を持ってきて、少しでも家と同じ環境にしてアロマを焚いてリラックスして、また現場に行って切り替えるということをしていました。根が真面目なのが出ちゃうんですよね(笑)」と恥ずかしそうに告白した。
そんな山田を竹野内は「現場で見ていると役に対する入り込み方とか、小手先でやっていない。山田くんの場合は、別の視点から役に対してアプローチしてるような印象がありますね」と分析し、「すっごく真面目だと思います(笑)」と山田の言葉にのっかり、会場を沸かせていた。
本作ではそれぞれの衣装にも思考をこらせ、この日アオイヤマダが着用していた衣装も劇中で披露されている。また、原生林を撮ることにこだわりがあったという監督。竹野内も「とても神々しい感じがしました」と振り返った。その効果は竹野内の頭皮にも影響していたそうで、アオイヤマダが「ヘアメイクさんに、頭皮が柔らかいと言われたんです。竹野内さんは普段すごく硬いらしいのですが、撮影現場では柔らかくなっていたそうです。自然の力があったんですね」と裏話を明かした。
萩原は「オーディションの時に、監督から突然『プロデューサーさんと戦ってみて』と言われて。そうしたら“牙を剥く女”の役に決まりました(笑)。まさか斧をもって戦う日が来るとは、緊張しました」とコメント。
山田と対峙した桃果は「とにかく宇和島が悪い人間なんです」と前置きをし、「役として人間らしい感情を排除しなければいけなかったんですが、山田さんの迫力あるお芝居に吞み込まれそうになって怖かった。宇和島ほど悪い人には会ったことはないです!」と力を込めると、慌てて山田が「僕じゃなくて、悪いのは宇和島ですからね(笑)」と念を押す場面も。
武田は竹野内との共演に「年の差があるので、ちゃんとカップルに見えるか不安もあった」としつつ、「でも、竹野内さんに実際お会いしてみると、年の差を感じさせないような穏やかに受け入れてくれる感じがしたので、自分自身も年の差を感じずに役に入れました」と述懐。一人二役を演じたが、「衣装も場所も違うので、自然に役を切り替えることができました」と振り返っていた。
最後に、竹野内は「この作品は、人間社会だけではなく、生命そのものに目を向けようとしている映画です。人間を生き物として、さまざまな視点で監督が映し出してくださっていますので、感じ方は人さまざまだと思いますが、議論することに大きな意味があると思います」。山田は「怖いとか動物的とか、目が強いや優しいとも言われたり、いろいろ褒めの言葉もいただきながらプラマイゼロかなと思うんですけども(笑)。人間社会の中で人が評価するかということを私は全く気にしていません。この映画はそういうことではなく、もう少し視野を広げて、人は自然や動植物と同じように生きてるんだというようなことを伝えていると思います」と声をかける。
監督は「この映画はエンターテイメント作品ではありますが、自然との共生というものがテーマにもなっています。実際にはなかなか難しいことですが、この映画を通して自然との共生に対して考えるきっかけになればいいなと思っています。皆さんと一緒に考えていってそれを次の世代に繋げていくことをできればと思っております」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
登壇者:竹野内豊、山田孝之、アオイヤマダ、萩原みのり、桃果、武田玲奈、石橋義正監督
公開表記
配給:ナカチカピクチャーズ/パルコ
10月27日(金)、TOHOシネマズ日比谷他、全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)