イベント・舞台挨拶

『ミツバチと私』トークショー

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 現在公開中の『ミツバチと私』。映画の公開を記念して、1/13(土)には新宿武蔵野館にてゲストを迎えたトークイベントが行われた。
 ゲストは、ジェンダーやセクシュアリティの視点、フェミニズム、クィア理論について執筆活動を行っている作家の鈴木みのりさんと、映画監督のほかに、映画評の執筆活動も行っている鈴木 史さん。

 上映終了後、たった今鑑賞を終えた観客の盛大な拍手に迎えられ、鈴木みのりさんと鈴木 史さんが登壇。さっそく本作の感想として、みのりさんは「多層的でいろいろな見方ができ、映画として素晴らしい」と率直な感想を述べた。更に、「バスク地方の風景や俳優の表情など、映像や音だけでも見ごたえがあり、語るべき点がたくさんある」と本作の魅力が一つだけではないことにも言及。自身も映画監督として活動する史さんは、「カメラを手持ちで撮影しているため、揺れている感じや、ソフィア・オテロの機微が描かれていて素晴らしかった」と監督の視点から、撮影の技法についてもコメントした。

 次に「名指し」というテーマを巡ってトークが展開された。みのりさんは、「トランスジェンダーや性別違和を訴える子どもたちにとって、名指しは大事なテーマである」と言及。さらに本作の主人公が“アイトール”や“ココ(バスク地方では(坊や)を意味する)”と複数の名前で呼ばれていることに、「最初は混乱した」とコメントするも、最終的に“ルシア(主人公が憧れる聖ルチア)”という名前が登場することから、「名前を獲得していくドラマとして構成がよかった」と熱く語った。これに対し、史さんも同意を示した。

 また、自分がドレスを着たことが原因で家族が喧嘩になったことから、森の中に失踪した主人公を、家族が探すシーンについて触れた。兄が耐えきれなくなり“ルシア”と叫ぶことについて「うまく行っていなかった家族が、それぞれの役割を初めて引き受けられている。むしろお兄ちゃんやお母さんが誕生した産声とも言える」と解説。さらに「周囲の人々の(主人公に対する)アプローチ」が本作の鍵となっていることを熱弁した。このシーンについてみのりさんも家族それぞれの役割を発見していくという分析が腑に落ちたと、賛同の様子を見せた。

 続けて、物語のモチーフになっているバスク地方についてのトークが展開。史さんは「薄暗い森が家族の不安を象徴し、ルシア(ラテン語で光)と叫ばれることで光が開ける様子がバスク地方を写しただけでなく、物語の比喩にもなっている」と解説。「中心部から離れた場所にあるバスク地方と、主人公がシンクロしてくる部分もおもしろい」とみのりさんも感慨深く語った。

 そして2人は、「(主人公の)お兄ちゃんが好き」と意気投合。史さんは「ラスト・シーンの涙で上手く”ルシア”と叫ぶことができない姿を観て、お兄ちゃんらしさを獲得したのだと感じた」と好きなシーンを力説。さらに、好きなシーンはどこかと尋ねられたみのりさんは、主人公が大叔母のルルデスに「生まれ変わったら女の子になれるかなという」と問うたシーンを挙げた。ルルデスから「もう女の子だよ」と言われたにも関わらず、主人公が真に受けすぎていない感じが好きと明かした。

 最後に「喜びの瞬間が無数にあったと思い出させてくれるような作品」と本作の魅力を語り、終始笑顔が絶えない中、イベントは幕を閉じた。

 登壇者:鈴木みのり(作家)/鈴木 史(映画監督・文筆家)

公開表記

 配給:アンプラグド
 2024.1.5(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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