インタビュー

『デヴィッド・リンチ:アートライフ』ジョン・グエン監督 オフィシャル・インタビュー

© Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

 1月27日(土)より、デヴィッド・リンチ監督のドキュメンタリー『デヴィッド・リンチ:アートライフ』が新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、立川シネマシティほかにて全国順次公開となる。この度、『インランド・エンパイア』撮影の裏側に迫った『リンチ1』(2007年)から10年におよぶ信頼関係を築いてきたジョン・グエン監督のインタビューが到着した。
 映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』の公開を記念して、1月13日(土)より立川シネマシティ、2月17日(土)よりアップリンク渋谷にて、デヴィッド・リンチ監督の過去作を一挙上映する「デヴィッド・リンチの映画」特集が実施される。そして、1月18日(木)から2月12日(月)まで、渋谷ヒカリエの弊廊にて「デヴィッド・リンチ 版画展」が開催。『ツイン・ピークス The Return』で世界中が熱狂した2017年に引き続き、今年もリンチに沸くこと間違いなしだ。

ジョン・グエン監督

 デヴィッド・リンチのドキュメンタリー3部作『リンチ1』(07年)、『Lynch 2』、『デヴィッド・リンチ:アートライフ』(16年)に携わる。
 デヴィッド・リンチが提供するインタビュー作品『Germany』の共同プロデューサーでもある。

監督は、2007年にも『リンチ1』というドキュメンタリーを撮っています。『インランド・エンパイア』の撮影でリンチの激しい側面が記録されていますが、普段の彼は静かなたたずまいで知られていて、今回のドキュメンタリーでもそうですよね。

 言いたいことはよく分かるよ。デヴィッドの場合、怒りをぶつけたりする相手は、彼をよく知っている人なんだ。カメラが回っていないところでは、笑顔で彼らに接している。もしかしたら、デヴィッドは観客に対して怒鳴ったり、怒ったりしているのかもしれない。ぶっきらぼうに見える時もあるけど、デヴィッドはいつも同じチームで仕事をしてる。みんな笑顔で戻ってくるんだ。

解説やボイスオーバーなしで、制作するリンチを淡々と見せる映像から、とても親密な印象を受けました。

 デヴィッドのことは、今までにたくさん撮ってきた。最初のドキュメンタリーから、もう10年にもなるからね。6年前の時点で、僕らがいても全く気にならなくなったと言っていた。だから、カメラが介入している感じがないんだろうね。デヴィッドはカメラに気づいてもいないんだ。僕らはしょっちゅう彼の頭の上でカメラを動かしたり、顔の前に迫ったりしたけど、そうしているうちにカメラは透明なもの、存在しないものになったんだ。
 最初のドキュメンタリーでは、“ああ、撮られたくないんだな、話したくないんだな”と感じた時もあった。でも10年後の今はそんな段階は超えている。今回はとても個人的な映画になったけれど、全く問題なかった。今の僕らは彼をよく知っているし、彼もとてもリラックスしてる。カメラはデヴィッドに気づかれることなく彼を追い、2年半の間ずっと密着してるんだ。
 他の人がアトリエを訪ねてカメラを回し始めたら、デヴィッドは固まってしまっただろう。でも僕らだとそんなことにはならなくて、“まあいいや”という感じだった。

© Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
大量の撮影データを前に、これを編集しなきゃと思った時の気持ちは?

 最初のドキュメンタリーでは、使える映像が700時間分あったけど、今回は25時間分だった。それでも圧倒されたけどね。デヴィッドが25時間も人生を語ってるんだから。結局、ある2つのエピソードに関して欠けた部分があったから、補足のためにもう少し掘り下げて語ってもらった。埋められる範囲の穴が埋まると、インタビューはやめた。そんな感じで、25時間分の映像と補足に2年半を費やした。

この映画で印象深かったのは、フィラデルフィアが意地の悪い街だったこと、その一方でアートや創造性にとって完璧な刺激になったということを、リンチが語っている点です。

 だからこそ、デヴィッドの映画にはフィラデルフィアと同じ雰囲気があるんだろうね。彼の映画からは不安と恐れが伝わってくる。ある時期、彼が実際にそれを感じていたからだ。恐怖を表現できるのは、フィラデルフィアで身を持って経験したから。
 デヴィッドは田舎育ちの白人の少年で、フィラデルフィアに引っ越したのは、200軒以上の店が焼かれる暴動が起きた2週間後だった。安全な場所とは言いがたい雰囲気を、デヴィッドは肌で感じていた。同時に、それに引き込まれてもいたんだ。

© Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016
リンチのインタビューを読んだり見たりすると、彼の作品について、違う視点から考えさせられます。膨大な時間を彼と過ごすことで、全作品への認識はどう変わりましたか?

 この映画を撮ることで、美大生時代のデヴィッドの不安を知った。彼が“アートライフ”を、家族との暮らしや友達付き合いとは分けて考えていて、友達や家族をアトリエには寄せつけなかったことをね。
 デヴィッドは3つの生活を切り離していたんだ。全部をごっちゃにするとどうなるか分からなくて怖かったから。デヴィッドは実人生で自分を完全に切り分けているから、映画の人物にもそれを投影する。彼の映画のバラバラな感じ、突然切り替わる人物たちを理解するのに、デヴィッドの話が役立った。家族と話す時、友達と話す時、アトリエでジャック・フィスクと話す時のデヴィッドは全く違う。彼の映画の人物も同じだってことがよく分かるよ。
 デヴィッドにこの話をしたら同意するか、“ああ、気づかなかった”と言うかだろうね。いずれ彼とも話すかもしれないけど、僕が考えたことは筋が通ってると思う。彼のファンにも自分で感じ取ってほしい。デヴィッドの映画の観客は、作品と真剣に向き合っている。彼の作品をよく知っているし、僕らが解説しなくても作品を見直して分析するし、そのほうが彼らにとって満足度が高いはずだ。

© Duck Diver Films & Kong Gulerod Film 2016

公開表記

 配給・宣伝:アップリンク
 2018年1月27日(土)、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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