毎日新聞社やスポーツニッポン新聞社などが主催し、今年で78回を迎える毎日映画コンクール。2月14日(水)に、東京・めぐろパーシモンホールにて表彰式が開催され、見事受賞を果たした俳優・スタッフら豪華な面々が集結した。そんな歴史ある映画賞で今年、栄えある女優主演賞に輝いたのは、昨年12月に公開され今なおロングラン上映を続けている映画『市子』の杉咲 花だ。映画で初の単独主演を飾った本作で杉咲は、抗えない境遇に翻弄され壮絶な人生を送る主人公・川辺市子を演じている。
今回杉咲の選考理由について、「川辺市子という人物がおかれた想像しがたい困難な状況を、彼女の実在を信じられるほどまでに誠実に献身的に演じた。繊細な感情がほとばしり“ただそこに在り今を生きる”という芝居が強く印象に残る」ことが挙げられている。さらに、「実在していたなら新間報道等で容疑者/犯罪者としてしか認知できなかったであろう市子という存在に対して、戸田彬弘監督らスタッフと杉咲は想像力の限りを尽くし、声なき声を観客に届けることに挑戦した」と報道にまつわる新聞社主催の映画祭だからこその着眼点で本作の徹底的なリアリティへのこだわりが評されている(2024年1月31日付け毎日新聞朝刊より)。
表彰式に黒のシックなロング・ワンピースに身を包んで登場した杉咲は、「素敵な賞をいただき光栄に思っております。何より劇場に足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございます。物語に関わる中で、何かひとりで成し遂げることはできないと思っているので、この賞は映画に関わった皆さんと喜びを分かち合いたいと思います。自分にとってかけがえのない作品になった『市子』に関われたことを誇りに思います」と改めて女優主演賞の受賞について感謝と喜びをコメント。
その後、同会場に出席していた戸田彬弘監督が本人にサプライズで登壇し、杉咲に花束を贈呈した。改めて杉咲のオファーについて尋ねられると、「この市子という役は、杉咲さんにぜひやっていただきたいという想いで手紙を書かせていただきました。杉咲さんのおかげで作品が大きくなり、杉咲さんであるからこうして評価され業界の方にも広く観ていただけたと思っています。本当に杉咲さんに出ていただけて嬉しく思っています」と振り返り、感謝の言葉を述べた。それに対し杉咲は、「自分にとって分岐点になる作品だと思っていますと書かれていて、それだけ勝負に出ようとしている作品で自分自身のことを求めていただいたことを嬉しく思いました」と語った。司会の方がその手紙について掘り下げると戸田監督は「実は代筆でした……」と明かし会場が笑いに包まれる場面も。また、戸田監督は「たくさんの作品に出演されていますが、表現の幅を持っている女優さんですし、何より目から引力を感じる方だと思っていて、この市子という役には強い引力が必要だと思いダメ元で手紙を出させてもらいました」と、杉咲へのオファーの決め手も明かした。
複雑な背景を持った市子という役柄を演じるにあたり抵抗はなかったかという質問に杉咲は、「読んでいて、言葉にできないような感覚に襲われる脚本で、これを演じたときにどんな場所に連れて行ってもらえるんだろうという未知の感覚があって、早く現場に行きたいなと思いました」とこれまで感じたことのない心境に触れ、むしろ演じたいという気持ちになったという。
最後に、映画初単独主演で女優主演賞という快挙を果たし、何か心情の変化があるかと聞かれると、「とってもありがたく思っていますが、変化はあまり感じていません。評価というものは他者の中にあるものだと思っているので、この先も粛々と作品に向き合っていきたいと思います。ただ、このような機会をいただけたことでまだ公開が続いている『市子』について皆さんが興味を持ってもらえるのかなと思うとやっぱり嬉しいです」と笑顔をみせ、作品をしっかりアピールした。今後も主演作が続々と控えている俳優・杉咲 花の快進撃はまだまだ続きそうだ。
登壇者:杉咲 花、戸田彬弘監督
公開表記
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
大ヒット公開中
(オフィシャル素材提供)