映画『瞼の転校生』先行公開記念舞台挨拶が2月23日(金・祝)、埼玉・MOVIX川口で行われ、主演の松藤史恩、共演の齋藤 潤、村田寛奈、市川華丸(劇団美松)、松川さなえ(劇団美松 太夫元)、メガホンをとった藤田直哉監督が登壇した。
本作は、“若手映像クリエイターの登竜門”であるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭20周年と川口市制施行90周年を記念して、埼玉県と川口市が共同製作した長編映画。大衆演劇の世界で生き、公演に合わせて1ヵ月ごとに転校を繰り返す中学生が、限られた時間の中で出会う人々と心を通わせながら、少しずつ成長してゆく姿を描いたヒューマン・ドラマとなっている。
大衆演劇一座に生まれた裕貴役を演じた松藤は、本作で映画初主演を果たしたが、主演を務めることが決まった際の心境を聞かれると「最初に親から『受かったよ』って聞いたんですけど、最初は実感がまったく湧かなくて、台本が届いたときに“セリフが多い……”と思って、そこで初めて喜びが湧き出ました」と回顧し、その後の心境については「ほぼ全部のシーンに出ていてセリフがとにかく多かったので、覚えられるかなって不安と緊張がありつつ、頑張ろうって思いました」と力強く語った。
そんな松藤と浅香役を演じる村田は、実際に“白塗り”をして着物やかつらをつけて、座員としてステージで演じる姿も撮影したが、座員の役を演じた感想を求められると、松藤は「とにかくかつらがすごく重くて、最後のほうは首が据わってなかったですね。着物も着るので、それで暑かったというのも覚えています」と吐露して会場の笑いを誘い、村田は「かつらが想像以上に重くて、パンフレットに監督と私と松藤くんの3ショットのオフショットがあって、私がこうなっていて(下を向いていて)監督に頭を下げているみたいな写真があるんですけど、それはただ頭が重すぎただけなので、ぜひ(パンフレットも)見てほしいなと思います」と苦労を告白。その状態で舞踊を踊ったりしたそうで、村田は「普段、踊ったことがないような舞踊を撮影当日に2人で合わせるって感じだったんですけど、劇団員の皆さんにいろいろ教えていただきながら、楽しく踊らせていただきました」と笑顔を見せた。
そして、成績トップで不登校中の建役を演じる齋藤は、2人のステージを見ていたそうで「振り覚えがすごいなと思いました。しなやかできれいなものを出せていて感動しましたし、かつらが重たかったのか、昼休憩のときに(かつらを取り)すっごいニコニコしながら松藤くんが走ってきて、楽しそうにご飯を食べていたので、こっちまでにやけちゃったなという思い出があります」と振り返り、松藤らと心は1つだったのか追求されると「僕は見ていただけだったんですけど、なっていたらうれしいですね」と語りながら、松藤と笑顔を交わした。
また、大衆演劇・劇団美松の市川と松川も本作に出演しているが、本作で描かれていた役者の心情や生活はリアルに近いものだったのか尋ねられると、市川は「まさにその通りでしたね。1ヵ月で公演先が変わると同時に学校も変わってしまうので、友だちも全然できない。できても次に会えるのは1年後かもしれないし、公演先にご縁がなかったら3年、5年と開いてしまうんですけど、そういう気持ちを知っているので、映画を観させていただいたときは共感しかなくて、学校に通っているときの辛かったことや楽しかったことを思い出しましたね」と懐かしんだ。
松川は「監督から撮影前に事細かに劇団の生活の取材を受けたんですけど、本当にリアルだったと思います。うちの劇団も男の子が小さい頃から舞台を踏んでいる子たちばかりで、私のせがれもそうなんですけど、思い悩んでいる姿がリアルだったなって思いました」と語り、「大衆演劇は1ヵ月ごとに公演先が変わるんですけど、1日1日の生き方が大事なんです。皆さんは1年が早く感じると思うんですけど、私たちは1年後にしか会えない人たちとも会うので、1日1日、1時間1時間をどれだけ大切に生きようかってことも学べるのが大衆演劇なので、大衆演劇と初めて出会った皆さんには、映画を通して、“こういう世界なんだな”と思い浮かべながら観ていただけたらうれしいです」とアピールした。
さらに、本作の企画意図を聞かれた藤田監督は「大衆演劇を題材に扱った理由ですが、僕は北海道出身で大衆演劇をまったく観たことがなかったんですね。上京して初めて存在を知ったんですけど、スーパー銭湯とか温泉が大好きで、地方などのスーパー銭湯に行くと常設の劇場があって、その時期にちょうど大衆演劇が好きなプロデューサーや、親族に元大衆演劇の役者さんがいるという人と知り合って、タイミングが重なって実際に観に行ったんです。そこで若い人たちが中心となって活躍しているのを見て、学生時代は1ヵ月で転校なくてはならないお話を聞いて、それを映画にできないかなと思ったのが出発点です」と明かした。キャスト陣と撮影した感想については「それこそ松藤くん、齋藤くん、葉山(さら)さんの3人の10代の若いパワーを受けて作ったなという印象があって、自分の発想だけじゃ出てこないようなアクションとか勢いみたいなものを、3人の能動的な会話から演技を作っていくみたいなことをやってきたなという記憶があります」と語った。
そして、本作の内容にちなみ、大切な人に何かを伝えるとしたら、誰にどんなことを伝えたいか質問されると、松藤は「実は最近、担任の先生が入籍されて結婚式も挙げられたんですけど、そのときに僕は結婚式に出席できなくて、クラスのみんなでお祝いのビデオを撮ったんですけど、残念ながらそこにも参加することができなかったので、この場を借りてお祝いしたいなと思います。『ご結婚おめでとうございます』」とカメラ越しに祝福し、会場から拍手を浴びた。齋藤は「芸能活動をしていく中で自分1人だけの力ではできないことばかりなので、日々支えてくださる家族だったり、周りにいてくださる方に『ありがとう』と伝えたいです」とにっこり。
村田は「この質問は難しすぎて“どうしよう”って考えていたんですけど、シンプルに『生んでくれてありがとう、お母さん』とかですかね(笑)」とコメントして照れ笑いを浮かべ、「こんなタイミングじゃないと絶対に言わないので、言えてよかったです」と吐露。
市川は「僕は生まれたとき役者の家系だったので、小さい頃から大人に囲まれて育ってきて、小さい頃から先輩方にかわいがっていただいて、劇団が変わったりして会えない先輩もいるので、そういう先輩方に『あのときはありがとうございました。今も頑張っております』という気持ちを伝えたいなと思います」としみじみと語り、松川は「大切というのはお客さんが1番大事だと思っていますし、“ご縁”という言葉が大好きなんですけど、共演者の皆さんとご一緒できたことが素晴らしく、今1番大切なのはその機会を与えてくださった監督でございます。『監督、本当にありがとうございました』」と藤田監督に頭を下げた。
そして、藤田監督は「映画はお客さんに届かないと完成とは言えないので、まず1番にここに来てくださったお客様に『ありがとうございます』と改めて伝えたいです」と会場を見渡し、「あとは、出演者の皆さん、こんな僕でも仲良く撮影できて楽しかったという記憶がすごく強くて、それは皆さんがいたからこそ、楽しくこの映画を作って、今この場にいることができたなと改めて思ったので『ありがとうございます』」とキャスト陣に頭を下げました。たくさんの『ありがとう』が飛び交い、会場が温かい空気に包まれた。
登壇者:松藤史恩、齋藤 潤、村田寛奈、市川華丸(劇団美松)、松川さなえ(劇団美松)、藤田直哉監督
公開表記
配給:インタ―フィルム
2月23日(金・祝)よりMOVIX川口先行公開中
3月2日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)