イベント・舞台挨拶

『パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜』トークイベント

@ DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinéma

 22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝き、彗星の如くスイーツ界に登場した若き天才パティシエ ヤジッド・イシュムラエン。彼の自伝書(※)を元に映画化、不遇な少年時代を過ごした孤独な青年が、極上のスイーツで奇跡を巻き起こす感動のサクセス・ストーリー『パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜』3月29日(金)から公開決定!
 ※ 「Un rêve d’enfant étoilé: Comment la pâtisserie lui a sauvé a vie et l’a éduqué」(スターを夢見た幼少時代:菓子作りが彼を救った理由)

 スイーツに魅了された人間の物語であり、同時にさまざまな夢を追いかける多くの人にとっての、応援歌でもある本作。この度、本作のモデルとなり、今や世界各地の最高級ホテルのコンサルタントやルイ・ヴィトンなど高級ブランドとのコラボレーションを務め、南仏アヴィニョンにやギリシャ、スイス、カタールなど世界各地に店舗を持つ人気パティシエ、ヤジッド・イシュムラエンと、自身も過酷な境遇ながらパティシエへの夢に向かって無我夢中で挑み続け、ヤジッドと同じく洋菓子の世界大会で数々の優勝を経験。現在は後進育成やスイーツ文化の振興に取り組むほか、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県七尾市の出身で、ふるさと・能登地方への支援を続ける、世界的パティシエの辻口博啓を迎えトークセッションを開催。スイーツの世界についてはもちろん<世界で戦うこと><夢を叶えること>など、大いに語り合った。

 企画が立ち上がってから実に5年の歳月を経て、ついに日本での公開を迎える本作。ヤジッドも「<君はこの作品を携えて日本に行くよ>なんて5年前に言われても全く信じられなかった。皆さんの前にこうしていることが本当に嬉しくて、ありがとうございます」と感激。

 本作は不遇な少年時代を過ごした孤独な青年がパティシエという夢を見つけ、そして叶えるためにどんな困難が立ちはだかっても何度でも立ち上がっていくストーリーだが、辻口自身も「ちょうど僕も18歳の頃に実家が倒産してしまって、本当にゼロからスタートだったので。そこで世界大会で個人優勝をしてそこから<モンサンクレール>を立ち上げていった」と自らの経験を語り「非常にヤジッドさんの人生とすごく重なるところがあります。皆さんの前で、こういう形で二人で話ができるのは、本当に夢のような感じですね」と感謝する。

 5回目の来日だというヤジッド。日本のスイーツでは「ドラ焼きがとても大好き」と明かし「大好きなのは日本風のパンケーキです」ともコメント。
 <パンケーキは海外のスイーツでは?>と、辻口とMCが一瞬戸惑いを見せるも、どうやらヤジッドが説明しているのは<厚めのふかふかホットケーキ>。謎が解けた辻口は「私もこの厚いパンケーキが本当においしくて大好きです」と賛同した。

 続いて、本作で共感したポイントについて質問を受けた辻口。「夢を諦めないで、しっかりと自分の目標に向かって歩いているところがすごく素晴らしかった」と言う。

 「ヤジッドさんの生い立ちの中で、ヤジッドさんを育ててくれた家庭が、お菓子を作る環境にあったということ。それが子どもの頃にいろいろなお菓子を作ってくれる、そういう思い出が、こうやって大きくなったときにパティシエとして今、花開いた」と振り返りつつ、「僕の実家も和菓子屋だったので、小さい頃から鉄板が温まる音が聞こえたら<どら焼き焼くだろう>とか、ピーって音が聞こえたら、赤飯が蒸されているだろうとか、厨房の上にいると今、下でどういう職人たちが動きをしているのかというのは手に取るように感じました。そういう子どもの頃の思い出が今につながっているというところです」と語った。

 劇中には20種以上登場!華やかでシズル感あふれるスイーツの数々も見どころの本作。これらのスイーツは全てヤジッド本人が撮影のために自ら製作したものだが、特に存在感を放つのは“ある理由”により、通常よりタイトな時間の中で作られた<氷細工の彫刻>。圧倒的な美しさと力強さを感じさせ、同時にその造形が持つパワーがあふれるこの彫刻について質問が及ぶと、ヤジッドは「これも自身が手がけたんです」と明かし「チョコレートでも、日本の飴細工でも、どんな素材でも彫刻にしてみせますよ」と自信を見せた。

 世界の名だたるコンテストで優勝してきた二人はそれぞれの苦労したエピソードも披露。ヤジッドは、もし失敗したら「洋菓子協会の連盟から排除されるぞ」とコンテストのチームの仲間たちからの反対を押し切り、あるアイデアを強行、見事チームを優勝に導いたチャレンジに触れ<リスクを伴わない成功はない>ことを語り、辻口は23歳で日本でスイーツの全国大会に最年少で優勝するも、スポンサー集めにひと苦労。<世界に照準を当てないと自分の人生変わらない>と思い至り、「お金が無かった時代に、住み込みで働き、なんとか150万円を貯金しました。<シャルル・プルースト>のコンクールにエントリーして、150万円を握りしめてフランスに渡航」したという。ウィークリーのアパートに住みながら、近くのパティスリーの厨房を借りて制作を続け、銀賞を獲得した当時の思い出を語りながら「その時の銀賞は、どの優勝作品よりも思い出深いです。<とことんやったなというのは、本当にこういうことなのかな>って思いましたね。日本にはそういう代表選手権の大会がなくて、フランスのサン・ミシェル協会に応募して、そこからいろいろな情報を取りながら、アメ細工の技術なんかもほとんど独学ですから。そうやってスイーツを作り上げていったコンクールの時代でしたね」と振り返った。

 最後に、パティシエとして今後の目標についてヤジッドは「将来の目標は、皆さんに私のお菓子を通して喜んでもらえる、それを続けていきたいなと思っています。それを世界中で、文化の違う国でもお菓子を通してメッセージを伝えていきたいなと思います」と宣言。「お菓子は、文化というものの象徴でもあると思います。そして、その人間のつながりを作るものだというふうに思います。それが私の哲学であって、この映画の中にもそういう私のお菓子作りの哲学が表現されていたと思います」と、改めて日本で本作が公開されることに感謝を述べつつ、「私たちパティシエの仕事で大事なのは、厳格さ、厳密さ、そして一回きりでなく、定期的に着実にコツコツとやること、それから反省もすること、そして粘り強く続けることです。パティシエとしての価値観で一番大切にしているのは、粘り強さ、そして皆さんに喜んでもらうということを忘れないことです。それをこれからもずっと、将来も続けていきたいと思っています」とコメント。

 スーパースイーツ製菓専門学校の校長、日本スイーツ協会の代表理事を務めるなど、後進の育成に力を入れる辻口。能登半島地震発生後、大きな被害を受けた自身の故郷でもある石川県七尾市(ななお)への支援も積極的に続けている。「自分自身がこうやってパティシエの道を歩んでこられたのも、能登半島七尾市の街の風景があったからです。そこには和菓子屋の紅屋があり、いろいろな思いがこもっている場所です。正直、能登半島の震災がなかったらこういうことは言わなかったかもしれませんが、たくさんの方々が亡くなって子どもたちも勉強する環境を奪われ、食の環境も非常に劣悪になっていて、感染症が広がっています。水のライフラインが上下水道全部ダメになってしまっており、非常に厳しい状況です」と現状を説明。自身が被災地に入った際にそれを目の当たりにして「自分自身の今後の人生を考えるならば、お菓子を極めていくということは当然続けていくんですけど、自分がやれる可能な限り、能登半島の支援を続けていきたいです」と言い、「そういうことも通してヤジッドさんとか僕のようにパティシエを目指す子どもたちがいれば、いろいろな形で手を差し伸べていきたいと思っています」と決意を語った。

 登壇者:ヤジッド・イシュムラエン(パティシエ、実業家)&辻口博啓(「モンサンクレール」オーナーシェフ/日本スイーツ協会代表理事)

プロフィール

ヤジッド・イシュムラエン Yazid Ichemrahen

 1991年、フランスのエペルネ生まれ。パティシエであり実業家としても活躍。モロッコ生まれの両親をもつが父親は不在で、母親はアルコール依存症だったため2歳半からホスト・ファミリーに預けられる。ホスト・ファミリーの息子がパティシエだったことで、お菓子作りで他者から認められることを初めて経験、8歳で里親のもとを離れ、養護施設で暮らす。
 14歳の時パティシエとしての見習いを始め、17歳でパリにあるパスカル・カフェ (世界菓子チャンピオン) で働き始める。1年後、モナコにあるジョル・ロブションの「ル・メトロポール」でスーシェフとして働き、2014年、22歳の時、フランス・チームのリーダーとして参加したGelato World Cup(冷菓世界選手権)で世界チャンピオンとなる。
 現在、アヴィニョンに自身の店舗を構えているほか、ギリシャ、スイス、カタールなどに店舗をオープンし実業家としても活躍している。ルイ・ヴィトン、バルマンなどのハイブランドとのコラボレーションなどでも話題となった。
 著書に「Un rêve d’enfant étoilé: Comment la pâtisserie lui a sauvé la vie et l’a éduqué」(星の少年の夢:菓子作りが彼を救った理由)、「Créer pour survivre et vivre pour ne pas sombrer(生き延びるために創作し、沈まないために生きる)」がある。

辻口博啓

 「モンサンクレール」オーナーシェフ/日本スイーツ協会代表理事。石川県生まれ。
 洋菓子の世界大会で数々の優勝経験を持つパティシエ、ショコラティエ。「モンサンクレール」「ル ショコラ ドゥ アッシュ」など、コンセプトの異なるブランドを多数展開。世界最大級のショコラ品評会C.C.C.では7年連続で最高評価を獲得し、2度アワードを受賞。スーパースイーツ製菓専門学校の校長、日本スイーツ協会の代表理事を務めるなど、後進育成やスイーツ文化の振興に取り組む。2015年には、NHK朝の連続テレビ小説「まれ」の製菓指導を務めた。

公開表記

 配給:ハーク
 3/29(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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