3月15日より、第2回新潟国際アニメーション映画祭が開幕した。昨年3月の第1回映画祭より、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、日本のみならず世界へも発信される映画祭。
映画祭5日目となる3月19日(火)、【長編コンペティション】ノミネートの3作品の監督・プロデューサーが記者会見に登場した。
【長編コンペティション】記者会見
講演:ジョエル・ヴォードロイユ監督、ディエゴ・フェリペ・グスマン監督、ディエゴ・エルグエラプロデューサー
『アダムが変わるとき』のヴォードロイユ監督は、「初めての長編アニメーション。元々ドキュメンタリーの編集や音楽を作っていまして、独学でアニメーションを楽しみながら作っていました。これまでの経験を全てつぎ込んだ作品です」と挨拶。『アザー・シェイプ』のグスマン監督は「私もファイン・アートをやっていて、絵画芸術からアニメーションにシフトしました。アニメーションは世界を表現するベストなフォーマット。この作品は私の初めての長編作品です」と挨拶した。また、『スルタナの夢』のエルグエラプロデューサーは、「今回、全てのセレクションで素晴らしい作品が揃っていて、ここで上映されるのがありがたいことだと感じています。同じフィロソフィーを感じます」と顔をほころばせた。
ノミネート作品の中でもとりわけ不思議なキャラクター・デザインとなっている『アダムが変わるとき』。ヴォードロイユ監督は「人が言ったことによって身体の形が変わる主人公。それは魔法なのか、人が見ることでそうなっているのか、明かしていません。皆さんの自由な見方にしたいと考えました。それは、人生が思った通りにいかない、自分でコントロールできないことで自分が変わっていくことを感じていただきたかった。見た目が不思議ということは、実は見る方によってどういうふうに捉えるかということ。自分ではどうにもならない残念で悔しい複雑な気持ちを表現したいと思いました。どんなことがあっても最終的に結果は同じ、人生は学ぶものだということを込めたかった」と語る。
また、バンド・デシネのメビウスや今 敏監督からの影響について問われたグスマン監督は「もちろん影響を受けています。特に今監督、それからもう一人、湯浅政明監督からは生涯をかけて影響を受けていると言えます。湯浅監督には新潟でお会いできました」と笑顔。さらに「キャラクター・デザインについてですが、一人ひとり別のやり方で四角い人間になる方法を模索しました。この映画の中では一人も普通の人間というのは存在しません。200人くらいの登場人物がいますが、それぞれみんな違うやり方で四角になる。クリエイティブな作業でした。自分はかつて印刷会社で働いていて、レバーを引いて印刷するところだったんです。『アザー・シェイプ』でもみんなネジを巻いてレバーを引いている。意識していなかったけど、人生経験を作品に取り込んでいくのはカタルシスがあり、経験を浄化させていくプロセスなのかもしれない」と振り返った。
『スルタナの夢』では、さまざまなアートの手法が取り入れられているが「監督のイザベル・エルゲラがアートに長けた人で、こうした技法で“美”を作り上げることは当然のことでした。インドに何百年も伝わる、ヘナタトゥーとして知られるアートを取り入れたのは私たちが初めてだと思います。また、影絵も1900年代インドで使用された方法です。水彩もイザベルの得意分野で、デジタルで取り込んで“デジタル水彩画”として使用しました。この3つを取り入れるこのはとても当然、自然なことだったんです」と明かした。本作はジェンダーの視点でもすでに大きな注目を集めているが「作品に携わった人はほとんど女性スタッフ。この本に出合ったときに“なぜ今まで作らなかったのか”と思ったほど」と語った。
また、前日にはクリエイティブ・ミーティングと題し、“アニメーション・キャンプ”に参加したアジアの若いクリエイターとの交流も行われた。若いクリエイターとの交流についてヴォードロイユ監督は「意識の高い若者と話すのは楽しい。技術に対するディスカッションもあり、インスピレーションもいただいて非常に楽しかった。自分も若い頃にそういうことがしたかった」と笑顔。グスマン監督は「他の人たちと経験をシェアすることは大きな力になる。時にミステイクを伝えることができるのは良いこと。同じ失敗をしないよう、リピートしないことを学べる。良い経験と共に間違いもシェアできたことはとてもよかった。観客に何を伝えたいのか、若い人たちから聞けたことは力になりました」と語った。エルグエラプロデューサーも「マジカルな時間だった。我々も友情を深められたり、親交が深まるいい時間だった」と振り返った。
■国際映画祭の舞台となる新潟市とは
19世紀、海外への窓口となる世界港をもつ新潟は、江戸を凌ぐ国際的な商業都市でした。また新潟は、多くの著名なマンガ家、アニメ・クリエーターを輩出し、2012年から10年間、「マンガとアニメを活用した街づくり構想」を実施、継続的なイベントとして「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」(来場者約5万人)、1996年から全国対象で「にいがたマンガ大賞」も実施。また、「新潟市マンガ・アニメ情報館」や蔵書1万冊を誇るマンガ図書館「新潟市マンガの家」を運営、マンガ家志望者のための家賃補助施設「トキワ荘」、そしてマンガ雑誌編集部と結んだ無料「ON LINE添削」を実施するなど、日本有数の熱烈なアニメ・マンガ都市でもあります。そして──21世紀、本映画祭に集結したエネルギーを、グローバル・アニメーションの創造へのマグマとし、新潟は世界のアニメーションの首都を目指します。
■新潟アニメーション首都宣言
新潟はアニメーションやマンガ関連に従事する人々を約3,000名以上排出している、日本有数のアニメ都市です。世界に向けてアニメーションやマンガという日本特有の文化を発信していく拠点となる新潟が、世界のアニメーション作品が交差する文化と産業のハブとして発展していくことを目指すアジア最大規模の「新潟国際アニメーション映画祭」第2回の展開にぜひともご注目ください。
第2回新潟国際アニメーション映画祭
英語表記:Niigata International Animation Film Festival
主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
会期:2024年3月15日(金)~20日(水)
公式サイト:https://niaff.net(外部サイト)
公式X(旧Twitter):@NIAFF_animation(外部サイト)
公式Youtube:https://www.youtube.com/channel/UC81m7n8a8MgQGC-8MUXs7pA(外部サイト)
(オフィシャル素材提供)