イベント・舞台挨拶

『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』“英国のシンドラー”を解説する特別映像が解禁!

© WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023

 登壇者:藤井貴彦さん(キャスター)
 参加者:東京都立西高校生徒(21名)

 アンソニー・ホプキンス主演の最新作、ナチスの脅威から669人の子どもたちを救った“イギリス版シンドラー”ニコラス・ウィントンの半生を描いた『ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命』が6月21日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて全国ロードショーとなる。

 日本公開を今週末に控えた本日、都内の高校にキャスターの藤井貴彦さんが訪れ、特別授業を実施した。

 この日行われた特別授業では「戦争を直接知らない私たちが考える平和の尊さ」「現代におけるメディアの役割」「いま、そしてこれからに向けて、なにができるか」という3つのテーマを軸に、本作を多角的に検証・分析する内容となった。

 冒頭に映画の感想を生徒たちに尋ねた藤井。生徒のひとりから「ニコラスが自分のことを『普通の人』だとしきりに言っていたことが印象に残った」という声があがると「ニコラスは普通の人でも、行動を起こすことで大きな影響を人々に与えられることを示してくれた。そして彼はずっと、助けた669人のことではなく助けられなかった多くの命に囚われ後悔し続けていたけれど、それはまさに普通の人だから。普通の人間でなければ“669人を救った! すごいだろ!”と成功にばかり意識が向いていたかもしれないけれど、ニコラスは真面目な人で、普通の感覚を持っていたからこそこんな偉業を達成することができたのかもしれない」と頷いた。

 本作をすでに2度鑑賞したという藤井は、戦争を知る世代が少なくなっている現状に触れながら「戦争を知らない我々世代が今回のような映画を通して、戦争や侵攻が一般市民にどんな影響を与えるのかを知り、世界各国で紛争が起きている現実から目を背けないことが大切」と“知る”ことの重要性を熱弁。平和について生徒から「みんなで美味しいご飯を食べて“美味しいね!”と言い合えるのが平和」「家族や友達、身近な人たちと一緒にいられることが平和」だと考えるという意見が挙がると、「劇中では衛生状態の悪い中、さらには親と離れる不安の中で生きる難民の子どもたちの姿が描かれました。平和でないと美味しいご飯は食べられませんし、好きな人たちとも離ればなれになってしまうかもしれません。戦争や紛争によって子どもたちが学校にすら通えない国がある中で、このように学校で勉強ができることは贅沢であり最高に平和。好きなところに行ける自由も平和だからこそあり得ること。次の移動先を選べる自由すらなくなるのが戦争や侵攻。家に帰って明かりが灯り、食事や風呂があり、家族がいる。戦争時だったらそんな幸せはありません。今回のような映画を観ることによってそれを感じてほしい」と述べた。

 またメディアが大きな役割を果たす様子が描かれる本作にちなみ、メディアの役割についても話が及んだ。テレビや新聞ではなくネットやSNSを情報源にする昨今の傾向について藤井は「スマホで見る映像や音声はその人の傾向から勝手に選ばれて流れてくるものが多い。自分で検索して見たもの、その履歴からアルゴリズムで流れてくる類似した映像や画像が自分のメディアに対する視野を狭めていることを忘れないで欲しい。昨今、陰謀論を信用する人が多くなったのも、自分が信じている人からもたらされた情報しか信用しなくなっているからです」と警鐘を鳴らし「私たちテレビやラジオは皆さんに選択肢を提供するのが役目。正解を教えているわけではなく、さまざまな意見を提示しています。スマホの一画面ばかりではなく、テレビや新聞を見ることによって、自分が今まで知らなかった意見や情報を知る発見がある。若い皆さんは情報を誰よりも多く手にしているかもしれないけれど、質の高い選択肢と情報を手にしているのか? ツールに利用されるのではなく、ツールを上手く使ってほしい。それが、戦争が起こらないよう我々ができる小さな抵抗であると思っています」と呼び掛けた。

 さらに生徒から「情報が多すぎて惑わされてしまうことがある」という声が上がると、「時にメディアが『マスゴミ』などと揶揄されることもありますよね。テレビは政府からの意見を言わされているだけに過ぎないと言う人もいます。しかし我々メディアの役割は、事実を伝え、こんな意見もあるという選択肢を提示するだけです。私は日本テレビの報道で30年程働いてきましたが、それぞれ自浄作用を持って、そこだけは揺らぎがないように真摯に取り組んでいます。誰かに言わされて伝えるなどの緩くだらしない根性で記事を書いている人はいません。みんなにとっていい選択肢を出すという約束を果たしているのがメディアです」などと熱く語った。

 そんな藤井自身が常日頃から意識しているのは「自分と異なった意見にも耳を向けること」だという。「自分と異なった考えを持つ相手の意見を体に入れてみることも大切。自分の意見だと“点”だけれど、相手の意見を理解すると“線”になる、それを続けるとやがて“面”になり、もっと多くの意見を理解しようとすると最終的に“球”になる。相手の意見にも耳を傾けて自分の意見を深める。そのバランスが大切です」と実感を込めていた。

 最後に藤井は「学生ならば1,000円で映画を観ることが出来ます。自分の知らなかったことを知れて意見を形作ることができるならば、ご家族は喜んで1,000円を出すはず。自分が観たことのないジャンルの映画に触れるのも大切です。観ないことには自分の立ち位置や平和のありがたさを考えるまでには至りません。知らないよりは知ること。この映画が大ヒットしても私にメリットはないけれど、将来あの時から平和で良かったねと言えるようにしたい。それを作るのは皆さん若い世代の方々。皆さんも歳を重ねれば誰かにアドバイスをしたり、国を動かしたり、戦争を回避したりする世代になっていきます。それを忘れないで欲しいです」と生徒たちへのエールと共に平和の尊さを説いていた。

ニコラス・ウィントンはどんな人?

 イギリスの人道活動家。ロンドンに住むドイツ系ユダヤ人の両親のもとに生まれる。株式仲買人の仕事をしていたが、労働党左派の活動家と親交があり、早くからヒトラーの政策の行く末に疑問を抱いていた。
 イギリスに子どもたちを避難させる活動〈チェコ・キンダー・トランスポート〉を組織し、第二次世界大戦がはじまる直前(1939年3月14日から8月2日までの間)、ナチス・ドイツによるユダヤ人強制収容所に送られようとしていたチェコスロバキアのユダヤ人の子どもたちおよそ669名をチェコから脱出させることに成功。9月3日にも最大規模となる250名の子どもたちの救出が予定されていたが、9月1日の第二次世界大戦勃発により、その子どもたちを含め、以降チェコからの脱出は不可能となる。

© WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023

公開表記

 配給:キノフィルムズ
 6月21日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国ロードショー

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