登壇者:河合優実、入江 悠監督
MC:伊藤さとり
映画『あんのこと』が新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国公開中。このたび本作の大ヒットを記念し、6月28日(金)に池袋シネマ・ロサにて主演の河合優実と入江 悠監督が登壇する大ヒット御礼舞台挨拶を行い、異例の大ヒットを受けての率直な気持ちを語った。
6月7日(金)に全国58館でスタートした本作は、その後62館まで上映館数を増やし、公開19日目にして、小規模公開ながら興収1億円を突破した。そんな大ヒットを受けて、河合優実と入江 悠監督が登壇して行われたこの日の舞台挨拶。
満員の客席を見た河合は「本当に来てくださってありがとうございます」と語ると「こういう形で大ヒット舞台挨拶を行えると聞いたとき、本当に嬉しかったです」と笑顔を見せる。入江監督も「個人的な話になりますが、この池袋シネマ・ロサは、大学時代の自主映画から上映してくれた映画館で、もう20年以上の付き合いなんです。そんな場所で公開後にまた舞台挨拶で戻ってこられるなんて、本当に嬉しいです」と熱い思いを吐露する。
非常にメッセージ性の強い作品。河合は初号試写の打ち上げで、スタッフの一人が「大ヒットは難しい作品なのもしれません」と話していたことに触れると「ヒットしてほしいという思いよりも、どうやったら正しく誠実に作品の思いが届けられるのか……ということを考えていました」と回顧する。
しかしふたを開ければ、作品は多くの人に届いた。河合は「観に行ってくれた知り合いの方から連絡をもらうときも、実感がこもった感想をいただくことが多いんです。映画レビューサイトも初日に読んでいて、人前だったのでぐっと涙をこらえることもありました。観てくださった方の感想の熱量が、明らかに他の作品と違うように感じました。これからは独りよがりにならないで、観てくださっている人たちの想像力を信じようと思えました」と特別な出合いだったことを強調する。
入江監督も「河合さんや、お母さん役の河井青葉さんと一緒にQ&Aをやったりしたとき、お客さんの質問の濃さや鋭さがすごくて、皆さんが自分の問題、もしくは自分の近くの問題として受け止めてくださっているのだなと思えたのが嬉しかったです」と感想を述べていた。
河合も入江監督も、数々の作品に携わってきたが、河合は「『あんのこと』という作品を経験したあとに出会った役を演じるとき、『杏が見ているから頑張ろう』とか、杏のモデルになった方を含めて、その人たちに恥じないようにしようとか、演じるということの心の支えになってくれるような瞬間があります」と本作との出合いによって変化が生じたことを明かすと、入江監督も「今までは映画が公開されると、僕の手元から離れていく印象があったのですが、今回はずっと自分の近くに杏という子がいて、死ぬまでずっと一緒に歩いていくのだろうなという感覚になっています」とこれまでの作品との違いを語っていた。
また撮影、プロモーション活動を通じて忘れられない出来事について聞かれた河合は「宣伝活動をしているなかで、ある雑誌のカメラマンさんが、撮影の時間になると涙ぐんで止まってしまったんです。撮影の午前中に映画を観てくれていたそうで……。そんなことこれまで経験したことがなかったので、すごく忘れられません」としみじみ。
同じ質問に入江監督は「今回撮影していて一番嬉しかったのが、劇中に河合さんが小さな男の子の赤ちゃんにご飯を食べさせてあげる場面。好みを母親に聞いたりしていたのですが、全然食べてくれなかったんです」とあるシーンについて触れると「河合さんと二人きりでお任せしたら、最後のほうでお米を食べてくれたんです。そのとき河合さんがすごく嬉しそうな顔をしていたんですよね。人がご飯を食べてくれるって、こんなに嬉しいことなんだと思ったことが印象に残っています」と撮影を振り返っていた。
舞台挨拶後半には、それぞれ「今だからこそ聞きたいこと」を尋ねるコーナーも。河合は「編集中は何を考えていたんですか?」と問うと、入江監督は「脚本段階では、杏と佐藤二朗さん演じる刑事・多々羅、そして稲垣さん演じる記者の桐野の三者三様の視点を描くという要素が強かったのですが、編集をしている中で、どんどん杏を見つめていこうという方針になったんです。タイトルもまだ仮の状態だったのですが、杏と共に歩いていく映画で、そこに二人が引き寄せられるという形になりました」と回答。
一方、入江監督は「河合さん、2024年すごいことになっているじゃないですか。それをどう感じているのかな。カンヌも行きましたし、また新作映画も続きます。俳優としての転機になった年なのかなと思うのですが、ご自身はどう思っているんですか?」と質問する。
河合は「取材とかでもそういう質問されるのですが、そのときは『一生懸命やっています』みたいな回答をしていました。でも、今はちゃんと実感しなければいけないなと思っています。ちゃんと自覚しないと自分も迷子になってしまいそうなので」と照れくさそうに語る。
さらに入江監督は「『SR サイタマノラッパー』がシネマ・ロサさんで、毎回満席続きでヒットしたことによって、商業映画へ行く道ができました。そのとき僕は自惚れたんです。河合さんはそういう鼻高々な自覚はありますか?」と聞くと、河合は「『ブレイクしていますよね』と聞かれると『いやいや……』って鼻が高くならないようにいろいろ遠ざけています。でも最近は先ほど話したように『いやいや、そんな』って言い過ぎてしまわないようにしています」と複雑な胸の内を語っていた。
最後に河合は「劇場に入る前に、皆さんの拍手を聞いて、すごく熱い気持ちを感じました。皆さんの映画に対する期待を感じました。何か映画を通じて感じたことを、生活の中に持ち帰ってもらって、周囲の人々と話していただけたら幸いです」とメッセージを送ると、入江監督も7月からミニシアター系で映画が拡大していくことに「感想などをつぶやいていただいて『7月に入江の映画を上映してやろうか』と思っていただいているミニシアターの人たちに繋いでいただけると嬉しいです」と呼び掛けていた。
公開表記
配給:キノフィルムズ
新宿武蔵野館、丸の内TOEI、池袋シネマ・ロサほか全国公開中!
(オフィシャル素材提供)