イントロダクション
第二次世界大戦末期のデンマークは未曾有の大混乱に陥った。この北欧の小さな国に、敗色濃厚となったドイツを脱出した20万人以上の難民が押し寄せてきたのだ。当時のデンマークはナチス・ドイツの占領下に置かれており、受け入れを拒否する選択肢はなかった。その驚くべき歴史的事実を今に伝える『ぼくの家族と祖国の戦争』は、日本人はもちろんのこと、当事国であるデンマークの人々にとっても知られざる実話にインスパイアされたヒューマン・ドラマである。
1945年4月、デンマーク・フュン島のリュスリンゲ市民大学の学長ヤコブが、現地のドイツ軍司令官から思いがけない命令を下される。ドイツ本国から押し寄せてくる大勢の難民を大学に受け入れろというのだ。想定をはるかに超えた500人以上の難民を体育館に収容したヤコブは、すぐさま重大な問題に直面する。それは多くの子どもを含む難民が飢えに苦しみ、感染症の蔓延によって次々と命を落としていくという、あまりにも残酷な現実。難民の苦境を見かねたヤコブと妻のリスは救いの手を差しのべるが、それは同胞たちから裏切り者の烙印を押されかねない振る舞いだった。一方、ドイツ人を憎むべき敵と信じて疑わない息子のセアンは、難民に寄り添う両親に反発するように、危険なレジスタンス活動に関わっていくのだった……。
デンマークで大きな反響を呼び、同国のアカデミー賞と呼ばれる2024年のロバート賞で5部門(美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ賞、視覚効果賞、観客賞)にノミネートされた本作は、戦時下の極限状況のもと、かけがえのない信念を貫こうとした家族の物語だ。一家の長男である12歳の少年セアンのピュアな眼差しを通して、人間が選択すべき“正しいこと”とは何なのかを問いかける。そこにこめられた根源的なテーマとメッセージは、ウクライナやパレスチナ・ガザ地区のニュースに接し、もはや戦争が遠い過去の出来事ではないと知っている観る者の心を、熱く、激しく揺さぶることだろう。また、本作は本年度、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭国際コンペティション部門に選出されている。
ストーリー
1945年デンマーク。市民大学の学長ヤコブは、ドイツによる占領末期に500人以上のドイツ人難民を受け入れるよう命じられ、妻のリスとともに耐え難いジレンマに直面する。もし一家が難民を助ければ裏切り者の烙印を押され、何もかも失う危険がある。しかしヤコブとリスが助けなければ、多くの難民が死に至る。そんな中、12歳の息子もドイツ難民の女の子と交流を持ちつつあったが彼女は感染病にかかってしまう。友達を救うべきか、祖国に従うべきか、家族は決断を迫られる。
(英題:BEFORE IT ENDS、2023年、デンマーク、上映時間:101分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:アンダース・ウォルター
出演:ピルー・アスベック、ラッセ・ピーター・ラーセン、カトリーヌ・グライス=ローゼンタール
ギャラリー
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公開表記
配給:スターキャット
8月16日全国公開
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA
(オフィシャル素材提供)