登壇者:奥野瑛太、芦原優愛、河屋秀俊、小林リュージュ、川瀬陽太、影山祐子、蜷川みほ、山城達郎監督
映画『心平、』は、2014年の福島を舞台に、立ち入りを制限された町に足を踏み入れた心平と、その家族の人間ドラマ。社会に馴染めない兄と、未来を諦めた父。そして、家にしばられる妹。そんな三人が踏み出す小さな一歩を描いた映画だ。
8月17日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開中。
満席好スタートのなか、初日を迎えた映画『心平、』の初日舞台挨拶には、主人公・心平役の奥野瑛太、心平の妹・いちご役の芦原優愛ほか主要キャストの河屋秀俊、小林リュージュ、川瀬陽太、影山祐子、蜷川みほ、そして山城達郎監督が登壇。本作が長編映画2作目となる山城監督による初々しい進行のなか、あったかい雰囲気で行われた。
最初に山城達郎監督より、「本作の脚本・竹浪春花さんが震災直後に映画のメイキングで携わったことがきっかけで福島に行ったのですが、改めて福島でドキュメンタリー映画を撮影しようとなり、再び福島へ行った際に見聞きしたことからこの『心平、』の物語が始まりました。僕もそのドキュメンタリーの手伝いで現地に行ったのですが、その時に現地でめぐりあった方々がこの映画を制作する時にも多大なご協力をしてくださいました。また、若手監督支援のコンペに受かったことも制作ができたひとつのきっかけです。今日、皆さんが観て下さったスクリーンへ映画を届けられたことにとても感動しています」と作品の製作経緯について説明があった。
改めて心平の魅力についてを問われた奥野瑛太は、「監督にお会いする前に最初に台本を読ませていただきました。心平像は、ディスカッションを重ねながら撮影を経て、当初の台本からは変容していきましたが、ずっと自分のなかに通底してあったのは、福島で生きている心平がいろいろと変化していく環境のなかでもずっと純粋無垢のまま変わらない存在だということでした。それは軽度の知的障害(自閉症スペクトラム)とも絡んでくる要素だとは思うのですけど、物語の作用として魅力的に感じることでした」と答えた。
また、心平の妹・いちごについてどのような人物だと思うかを聞かれた芦原優愛は、「お父さんのことも、お兄ちゃん(心平)のことも嫌いになれず、家にしばられた役だったのですが、我慢強く、面倒見がよく、また責任感がとても強い女性だと感じていました。嫌になって逃げ出してしまうシーンがありますが、やっぱり家族を捨てきれず、いなくなったお兄ちゃんを探しにいくところにいちごらしさが出ているなと思ったシーンでもあります」といちごの魅力に感じる部分を話してくれた。
いちごが務める天文台の台長・田口省吾役の川瀬陽太は、「下元さんが演じる父・一平は変われない現状で時間が止まってしまった人たちの一人ですが、だけども兄妹は今を生きている。心平は小さい町の中だけど世の中をぐるぐる回りますが、そういう形で戯画化した福島の現状とかも見えてくる。変わりたい、変われないというなかでちょっとした希望みたいなものがささやかだけど見える映画になっていて良かったなと思いました」と作品の感想を話した。
また、心平と幼なじみ・田中 満役の小林リュージュは、「撮影では監督や奥野さんとも話しながら、心平と幼なじみだということを意識して演じました。何か言葉を交わすときには気をつかって話すのではなく、また親しみを込めて人前で軽くいじったり、小さい頃からの関係性を匂わせながらただの嫌な奴にはみせたくないと考えて演じていました」と話した。
その満の父・田中春男役の河屋秀俊は、「監督から『理想的な親子関係を体現してほしい』という言葉をもらい、下元さんが演じた一平と心平のいろいろと問題のある親子関係を際立たせるためにも満との親子の関係性があるのかなと思って演じました。ただ小林さんとは初めての共演でしたので、親子にみえたかどうか気になっています」と話した。
登場人物のなかで心平たちの外側にいるような役どころの傘屋の由香を演じた影山祐子は、「脚本を読んだときに監督とは、心平や満とは同世代で同じ福島に住んでいるけれど少し離れて暮らしていることや、そこに傘屋があることを心平たちは知っているけれど小さい時には出会っていない、ただもしかするとすれ違っているかもしれないなど、お話させていただきました。劇中、“帰ってきた……”というセリフがあって、それは震災のためなのか、由香自身のことでなのか、一度、実家を出てまた福島に戻ってきたという設定なので、そこに自分なりのドラマを描いて演じました。監督から「そんなに重々しくならずに演じればいい」とおっしゃっていただいたので、傘屋の看板娘でありつつ、妙齢の女性が出て行って帰ってきたのは何かあるなということを映画を観る方に想像してもらえればいいなと思っています」と話した。
心平といちごが子どもの頃に家を出ていった母で、劇中はいちごのイメージとして登場する蜷川みほは、「私はダメなお母さん役が多いので、お話しをいただいた際に“任せろ”という感じでしたが(笑)、いちごがどんどん母像のイメージを膨らませていくなかで、シュール感があるほうがいいかなと思って演じました」と話した。
最後に山城監督より「タイトルの読点“、”に続く皆さんなりの言葉を家路に帰るなかで考えていただけたら嬉しいです」とメッセージがあり、舞台挨拶は終了した。
公開表記
配給:インターフィルム
8月17日(土)より 新宿K’s cinema 他全国順次ロードショー
(オフィシャル素材提供)