イベント・舞台挨拶

『ぼくのお日さま』先行公開記念舞台挨拶

© 2024「ぼくのお日さま」製作委員会/COMME DES CINÉMAS

 登壇者:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、ハンバート ハンバート、奥山大史監督

 大学在学中に制作した長編初監督作『僕はイエス様が嫌い』(2019)で、第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞! 5月に開催された第77回カンヌ国際映画祭では、日本作品で唯一オフィシャルセレクション部門に選出。上映後は約8分間のスタンディングオーベーションで歓迎を受け、トロント、釜山、サンセバスチャンから招待されている、現在世界が最も注目する日本人監督の1人、奥山大史監督の最新作『ぼくのお日さま』の先行公開記念舞台挨拶が9月7日(土)にTOHOシネマズシャンテにて開催。越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、佐野遊穂<ハンバート ハンバート>、佐藤良成<ハンバート ハンバート>、奥山監督が登壇した。

 先行上映を観終えたばかりの人々を前に、本作で映画初主演を務めた越山は「皆様にこの作品をひと足先に観ていただけて嬉しいです」と挨拶。本作が演技初挑戦となった中西は緊張した面持ちで「みんなで大切につくった映画をご覧になってくださって、とても嬉しいです」と語り、温かい拍手がわき起こる。中西は、初めて目にする映画の撮影の現場で驚いたことを尋ねられると「いっぱいあるんですけど、映像に映っていない部分がとても多くて、こんなに多くの人が関わって、協力し合って映画をつくっているんだなと思いました」と初々しく語ってくれた。

 奥山監督は「ハンバート ハンバートさんの音楽に出合うことで『映画をつくってみたいな』と思い、池松さんと出会うことで『この人に出てもらえたら映画になるかもしれない』と信じさせてもらい、2人(越山さん&中西さん)に出会い『これはいま、つくるしかない!』と思えました。そう思わせてくださった皆さんとこの日を迎えられて、本当に嬉しく思っています」と感慨を口にする。

 越山と中西は、4歳の頃からアイス・スケートを習っていたが、越山はアイス・ホッケー、アイス・ダンスは初挑戦。奥山監督曰く「アイス・ホッケーはすごく嫌そうでした(笑)。あの防具を着けられると毎回、不機嫌になっていました」と証言。越山は「(防具が)ガンダムみたいで重くて、動きたくてしょうがない僕からすると、動けないことが本当に嫌でした……」と苦笑交じりに述懐する。

 奥山監督は、スケートのシーンについて「(台本の記述が)ほとんどないし、そもそも台本を2人には渡していなかったですし、池松さんや他のキャストの皆さんに渡したのも薄いもので『だんだん上達していく3人』くらいしか書いてないんですが、池松さんがコーチっぽい言葉をアドリブで言ってくださって、それに2人が応える形で、ドキュメンタリーを撮っている感じでした」と明かし、客席は驚きに包まれる。

 越山は、シーンによってはあまりアイス・スケートが上手ではない演技、初心者のように転ぶ演技も求められたが「初心というか、(習い始めた)最初の頃はどんな感じだったかと思い出しながらやっていました」とふり返る。コーチの荒川役の池松は、そんな越山を絶賛! 「本当に上手でびっくりしました。『敬達、多分タクヤは、まだそこまで上手じゃないよ』と言うと『OK!』って。希亜良もそうですけど、ひと言言うだけで、ムード、エモーションを掴むのが本当に上手で『すごいな』と日々、感動して見ていました。もう可能性の塊でしたね」と称えた。

 本作はハンバート ハンバートの楽曲「僕のお日さま」に奥山監督が着想を得て誕生したが、佐藤は奥山監督から同楽曲を主題歌と映画のタイトルとして使用したいという手紙を受け取った時のことをふり返り「手紙を読んで、奥山監督の熱意、真剣さ、誠実さが伝わってきて、その時点で『これはきっと良いんじゃないかな』と思いました。その後、監督の前作(『僕はイエス様が嫌い』)を拝見して、ものすごくきれいで『これは絶対一緒にやりたい』と快諾しました」と経緯を明かす。

 佐野は「良成から話を聞いて、監督の『つくりたい』という気持ちがすごく強いんだというのが分かりました。いろいろお誘いをいただくことはあっても、なかなか『どうかな……?』みたいなことが多いんですが、これはもう本当に強い気持ちが伝わったんだなと思いました」とふり返る。

 奥山監督は「プロットを書き終わった時、すごく(楽曲に)影響を受けていたので、これをエンドロールでかけたい――かけられないなら企画として成立しないかもしれないと思っていたので、『快諾します』という返事をいただけて嬉しかったですし、『やっと2本目ができる』、『やっと商業映画デビューできる』と嬉しさと安堵の気持ちでいっぱいでした」と語る。
 また、完成した映画についても佐野は「音楽を映像にすると、(映画の)設定があったり、具体的な登場人物が動き出すことで、ともすれば、音楽の余白をだいぶ残している部分を限定的にしてしまう危険性もがあると思うんですけど今回、そういうことがなく、映像にすることによって、さらに想像力が膨らむような感じで『世界が広がったな』という気がしています。ご一緒できてよかったです」と称賛。さらに先ほどのスケートのシーンの撮影の演出に関する奥山監督の話に触れ「台本が薄く、指定があまりなかったと、いま、初めて知りましたが、そういう演出だったからこそ限定的にならず、広がっていったんだなとわかりました」とうなずく。
 佐藤は、映画の終盤で、越山が演じるタクヤが見せる表情に触れつつ「それを見て胸がいっぱいになって……。本当に良い映画に出合えてよかったなと、こっちのほうが感謝です」と嬉しそうに語った。
 奥山監督、越山、中西、池松、佐藤は本作を携えて、第77回カンヌ国際映画祭にも足を運んだが、その時の思い出、印象深いエピソードを尋ねると、佐藤は「77回もやっているにもかかわらず、段取りがグチャグチャで、いいかげんな感じがすごかったです(笑)。いまから、専用の黒塗りの車で出発という時に、運転手が警察官に職務質問で連れていかれたり『どうなるんだ?』と面白かったです」と語り、笑いを誘う。
 カンヌが初海外となった越山は「ヨーロッパの文化に追いつけず、お風呂のドアの閉め方が全然分かんなくて、『どうすれば閉まるの……? ま、いっか』って入っていたら、外の脱衣所が浸水していました」と失敗談を告白。また、現地で初めて食べた生牡蠣に「どっぷりハマりました」とも。
 中西はレッドカーペットの様子について「目の前がミシェル・ヨーさん、後ろがケビン・コスナーさんで、(すごい面々に)挟まれて『わー!』みたいな(笑)」と感動と興奮を明かす。
 池松は、そんな2人のトークを温かく見守りつつ「敬達に『いろんな人がいたけど誰が一番感動した?』と聞いたら『ゆりやんレトリィバァさん』でした(笑)」と暴露し会場は爆笑に包まれる。さらに池松は「(カンヌ映画祭に)ものすごく感動して、2人も泣いてたんですけど、帰りの車で『よかったね。いい経験になったね』という話をしたんですけど、『これで終わりじゃないかもしれないよ。この映画で釜山(※釜山国際映画祭)とかに行くかもしれないよ』と言ったら、2人とも『韓国のほうが行きたい!』と。カンヌよりも韓国でした(笑)」と明かし、天真爛漫な2人の様子に会場は温かい笑いに包まれていた。

 奥山監督は、やはり公式上映が忘れられない思い出になったようで、「ある視点」部門の審査委員長のグザヴィエ・ドランやコンペティション部門の審査委員を務めた是枝裕和監督らが本作の公式上映に足を運んでいたことに触れつつ「ずっと背中を追いかけてきた監督たちが観に来てくれて、『あの人もいるんだ!』と緊張もしましたし、すごく光栄でした。上映後にみんなと拍手を受けられのはすごく幸せな時間で、つくってよかったと心から思える時間でした」としみじみと喜びを語ってくれた。

 舞台挨拶の最後に、池松は改めて、越山の初主演、中西の映画初出演、そして奥山監督の商業映画デビューを「本当におめでとうございます」と祝福。そして「いまから3年前くらいに奥山さんから、まだ脚本になる前の6ページくらいのプロットと2枚のお手紙をいただいたんですが、その最後に『いまだからこそ優しい映画をつくりたいんです』と真っすぐに書かれていました。ふり返って、本当にその通りになったなと思います。この現実世界を映画でカバーしていくような奥山さんの感性にとても共感できましたし、こういう新たな時代に向けた、雪解けのような映画をつくってくれたことを心から感謝しています。温かくてピュアで美しくて静謐で優しい映画になったこと、それを一緒につくり上げることができたことを誇りに思っています」と感謝と感動の言葉を口にした。
 奥山監督は「最初に池松さんにお話をして、プロット段階で『出ます』と言ってくださり、共犯関係というか、ずっとここまで並走し続けてくださって、心から感謝しています。一緒につくり上げてくださったスタッフ、キャストの皆さんにも感謝をお伝えしたいです」と池松さんをはじめ、映画に携わってきた全ての人々への感謝の思いを吐露。そして客席に向けて「こうやって観に来てくださる方がいてこそ映画は上映し続けられるので、ぜひ楽しめた方は、お薦めしていただけると嬉しいです」と呼びかけ、温かい拍手の中、舞台挨拶は幕を閉じた。

 『ぼくのお日さま』は9月6日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行公開中。9月13日(金)より全国公開。

公開表記

 配給:東京テアトル
 全国の劇場にて絶賛公開中!

(オフィシャル素材提供)

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