登壇者:橋本 紡、櫛島想史、楠田悠人、宇乃うめの、磯西真喜、柴田義之、安宅陽子、志村 魁、東 直子(原作者)、東かほり監督
9月7日(土)に新宿武蔵野館にて映画『とりつくしま』の公開記念舞台挨拶が開催。橋本 紡、櫛島想史、楠田悠人、宇乃うめの、磯西真喜、柴田義之、安宅陽子、志村 魁、原作者の東 直子氏、東かほり監督が登壇した。
東 直子氏による小説「とりつくしま」を原作に、その娘である東かほり監督が脚本・監督を手掛けた本作。この日劇場に集まった観客に向けて、東監督は「本当は9月6日公開だったんですが、いろんな諸事情がございまして幻の初日を迎え、今日が本当の初日となりました。本当に観ていただけてうれしいです。このお話も『人生の本当の最後の時間』というものがテーマになっているので、そういう映画なのかなと改めて思いました」と喜びを語った。
また直子氏は「この原作は2006年に筑摩書房のウェブで連載して、18年経ちました。原作は『新しく生き直す』みたいな話なんですけど、原作を書いた時には夢にもよらないような形で、こうやってまた物語も“生き直す”ことができて、今日、その一歩を迎えられて、本当に感無量でございます。本当にありがとうございます」と自身が描いた物語の映画化に感謝した。
母親が手掛けた原作について、東監督は「小説は私が高校生くらいの時に母が書いていたものなんです。最初に読んだ時にちょっと悲しみがあってすごく泣いちゃったんですけど、でも温かさもあるというところがこの小説の良いところだなと思っていた」と回顧。作品を映像化するにあたっては「映像にした時に、その悲しみが生々しく出るかもしれないなと思ったので、少し自分の色というか、あまり悲しくなりすぎないようなものを少し意識したりしていました」と明かした。
直子氏は「私の小説を娘が映画化してくれるなんて、こんな夢のようなことがあっていいのかというくらいうれしかったです」としみじみ。「いくつか、かほりの作品は見てきたので、『かほりらしい作品だな』と思って。私の原作をベースにして、新しい味付けをしてくれた」と作品の感想を語り、「それぞれの役者さんの持ち味を当て書きのように作品の中に溶け込ませていて、新しい世界として生きている人間の味わいが生き生きと出た、良い作品だったなと思っています」と感心した。
本作では、原作の11篇から「トリケラトプス」「あおいの」「レンズ」「ロージン」の4篇にオリジナル・ストーリーを加えて映像化。東監督は「今回撮れなかった、撮りたかったお話もいっぱいあった」と映像化していない7篇に触れ、「今後、続編を作りたいという願望はもちろんあります」と意欲を見せた。
直子氏も「続きも作ってもらえたらすごくうれしいですね。今年、ちょっと病気をしちゃったんですけど、続編を作っていただけるなら、それを観るために頑張って体も大事にして、『それを見届けるまでは死なないぞ』とすごく楽しみです」と笑顔。母の言葉に東監督が思わず涙を流す場面もあった。
“とりつくしま係”として出演した女優・小泉今日子の話題になると、楠田が「小泉さんがすごくやさしくて、うれしいなと思いました」とコメント。
橋本は「小泉さんがいらっしゃると場がピッとするというか。本当に包み込んでくれるような人だったので、大安心で委ねることができました」と語り、「私が昔、エキストラで初めて行った現場が小泉さんのドラマの現場で『あの時実は』と言ったら『そうなの!?』とすごく気さくに話してくれる方だったので、楽しく軽やかに撮影に臨めました」と現場での小泉の様子を伝えた。
安宅は「小泉さんの眼差しがすごく印象的で、目が合うと全部を見透かされている気持ちになる」と話し、「『もうちょっとこうしようかな』と考えているのも、全部見透かされてしまって、委ねるしかなくなっている感覚があったて、それがすごく“とりつくしま係”の部屋とそこに訪れた魂の関係にすごくリンクしたなという瞬間を覚えています」と撮影を振り返った。
「トリケラトプス」で橋本と共に夫婦を演じた櫛島は「2人のシーンは結構少なかったと思うんですけど、東さんに自由やらせていただいて、いろんなパターンを撮った」と告白。劇中での櫛島について、東監督が「髪をかく癖とかイーってやる顔とかがあるんですが、あれは全部(櫛島)本人の癖をそのまま入れてもらった」と明かすと、櫛島は「あれはあれで大変でした(笑)。撮影で癖をやるってなると。癖って勝手に出てくるものなので」と苦笑した。
「あおいの」での“ジャングルジム”役を「うれしいと思いました」と話す楠田が撮影で印象に残ったのは「自分で歌を歌ったこと」。リハーサルでは歌を嫌がることもあったが、本番では一発OKを出したという楠田のエピソードも明かされた。
同じく「あおいの」に出演する宇乃は、共演する佐藤有里子との撮影前の読み合わせで「どういうふうにやるかというのを話し合ったり、(役柄の)2人が積み重ねてきた年月の話をして、2人で泣いちゃった」と打ち明け、「短いシーンなんですけど、軽いものにならないように大切に演じました」と伝えた。
「レンズ」で磯西と共演する柴田は「私も彼女も劇団に入っていまして、別の劇団なんですけど『こういう芝居を見たか』『昔見た』とか、そういう話を合間にやっていました」と撮影裏の出来事を報告。磯西は「海外公演のお話とか、そういう話を休憩になるとずっとしていました」とうなずき、柴田は「僕はあの時は(別の舞台の)本番直前で、(映画の)撮影が終わってすぐに稽古に行ったりしまして。これだけ良い映画に出させていただいたんですけど、劇団内での風当たりは相当強かった(笑)」と自身のハード・スケジュールぶりを冗談交じりに伝えて笑わせた。
「ロージン」で志村と親子役で共演した安宅は「私は割と早い段階でこの役を決めていただいたので、半年近く『息子役はどんな子が決まるんだろう』と考える時間がすごいあったんです。それが、“出産する時に『この子はどんな顔なんだろう』と想像するお母さんの気持ち”と重なった」と吐露。さらに「『この子だよ』と写真を監督から見せてもらった時に、『あ、君なんだ』と納得できた」と続けた。
志村も「現場でも結構『似てる』ってスタッフさんとかに言われた(笑)」と笑い、「現場でもずっと撮影を見守っていてくれて。映っているシーンはないんですけど、ずっとベンチとかで(他の出演者の)親御さんに交じって見守ってくれていて、本当に心強かった。『お母さんがいるな』という感じになりました」と本当の親子のような撮影期間であったことを報告した。
最後には、本作が台湾、韓国へ配給されることを司会が発表。東監督は「うれしいです」と笑顔を見せると、台湾旅行に行くはずだったのに行けなかった本作の登場人物にも思いを馳せ、「2人を連れていけるなと思って、それもうれしいです」と喜びを噛み締めた。
『とりつくしま』は全国順次公開中。
公開表記
配給:ENBUゼミナール
2024年9月6日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)