イベント・舞台挨拶

『若き見知らぬ者たち』PARCO出版50周年記念イベント

©2024 The Young Strangers Film Partners

 登壇者:内山拓也(映画監督)×嶌村吉祥丸(写真家)

 『佐々木、イン、マイマイン』(2020年公開)で、若者から圧倒的な支持を得て、各界の著名人からも大絶賛され、新人賞を総なめした内山拓也監督の商業長編デビュー作となる『若き見知らぬ者たち』が、10月11日(金)より、新宿ピカデリー他にて劇場公開となる。

 2020年代の幕開けを予感させた『佐々木、イン、マイマイン』に刻み込まれた、将来に希望も持てない閉塞感の中で煮詰まった自意識が爆発するパッションやマインドは本作『若き見知らぬ者たち』にも受け継がれ、一人の青年が、自分の中にある“最後の砦”と向き合う生き様がこれでもかと苛烈に描かれる。そして、大切な人を失った遺された者たちも、信じるべきものを信じるために闘っている。あらゆる理不尽にまみれても、自分の正義を守り懸命に生きようとする、“名もなき者たちの魂の叫び”――。内山拓也監督が身近な見聞にインスパイアされた自身のオリジナル脚本による、今を生きるすべての人たちに送る物語だ。
 また本作はフランス・韓国・香港・日本の共同制作作品でもあり、企画の段階で海外3つの国と地域での配給が決定。ポストプロダクションの最後の工程、音仕上げ(サウンド・ミックス)はフランスで行われ、内山監督も現地に出向き、文字通り日仏チームの共同作業となっている。

 一方で、現在、出版レーベル“PARCO出版”が、設立50周年(1974年7月1日設立)を記念し、50年の「歴史」を掘り起こし「未来」を感じられる架空の本屋「One Page BOOKSTORE -1ページの本屋-」を1ヵ月限定でオープン。そこでは、PARCO出版が選んだ新たな時代を予感させる50+αのモノ・ヒト・コト=Cultivators(耕す人たち)が“自身を現すもの”として世に送り出した、本やZINE、アート作品、アパレル商品、雑貨、植物などを販売すると共に、彼らの「今」を切り取った“1ページ”として展示している。
 そして、この度、9月14日(土)に、この「One Page BOOKSTORE -1ページの本屋-」に参加した内山監督と、自身初となる写真集「what is good?」 を刊行し、GALLERY X BY PARCO(渋谷PARCO B1F)にて展覧会を開催中のアーティストで写真家の嶌村吉祥丸のトークイベントが実施された。

 満員となった会場に登壇した内山拓也監督、嶌村吉祥丸。内山監督の前作『佐々木、イン、マイマイン』が渋谷PARCOにある劇場のシネクイントで上映されたこともあり、内山監督は「あの時(2020年)は、コロナ禍での公開だったので、「そもそも公開したほうがいいのか」ということを関係者の皆さんと議論しました。その中で、“2021年にしたほうがいいんじゃないか”という意見もあったのですが、僕たちが出した結論としては、『佐々木、イン、マイマイン』という作品で、あの時の閉塞感を少しでも打ち破れるようなことになれれば、という強い思いで、“仮に人が来られなくても”という思いも持って、公開に臨みました」と当時を振り返った。あれから4年。10月11日に公開する新作『若き見知らぬ者たち』について話が及ぶと「今日来てくれたお客さんは、まだ映画を観ていないのでそのことを踏まえて話しますと、この作品は、約10日間ぐらいの短いスライス・オブ・ライフを描いた作品です。その日常の中で市井の人たちがどのように生きているのか、小さな小さな世界を掬い取ろうとした作品で、家族であったり、友人であったり、恋人だったり、いろんな人たちの社会との接点において“家族ってなんだろう”とか、疑似的なものも含めて、“集団”が“社会”と接点を持って、みんなが生きているということ。名前も分からない感情とどのように向き合えばいいのか。そういった見過ごされてしまっているものを少しでも可視化させたいと思って撮った作品です」と自身の作品について丁寧に解説した。

 本イベントは、PARCO出版が選んだ「新たな時代を予感させるヒト」である2人が登壇したものであることもあり、気鋭の2人が作品作りをしていく中で意識していることについて話が及ぶと、最初に内山監督が「まず、僕たちが生きている中で記憶していることって、とてもいい加減で、ぼんやりとしたものなんじゃないかなと思っているんですね。5年前に起きたこととか、10年前に起きたこととかも、あたかも昨日も同じ事実だったかのように“あの時はこうだった”と伝播されてしまうことがよくあります。そこには、記憶の曖昧性が多分に含まれていると思っています。例えば、僕が吉祥丸さんに10年前のことを話したら、“そうだったんだ”と伝わったとしても、そのことを吉祥丸さんが誰かに話したら、吉祥丸さんを通すことで、内容がどんどん歪曲していきながら伝わっていくと思うんですね。それは話し手の僕にも聞き手の吉祥丸さんにも、それぞれ別の意味を帯びた曖昧さがあって。その中には見過ごされてしまう人たちとか、感情というのは絶対あると思っています。 だから映画では、同じ物事でも描く順番であったりとか、作劇のセオリーに左右されることなく、そういった曖昧性を嘘無く描くことが大事だと思っています」と話すと、それを聞いた嶌村は「例えば、僕が写真を撮った時、そのときの“事実”っていうものが、その1枚に収められていると思うんですね。だから、後から、その写真を見たときに、またその時に戻ることができる。でも、それは、瞬間的でもあり、断片的なものかもしれない。そこで生じる曖昧さっていうのはあって、でもそこにこそ、脚色が生まれたりとか、余白という人間らしさが宿るんじゃないないかなと思っています。映画も繰り返し観ることによって、その時に思ったことが変わったり、印象に残るシーンが異なってきたりとかもすると思うんですね。自分が好きな映画は、やっぱりそういう余白がある作品ですし、その余白にこそ、自分や作品を観た観客自身の経験や思い出が込められるんだと思います」と同調した。

 トークイベントの終盤、会場に来ていたお客さんとの質疑応答の時間が設けられ、内山と嶌村にそれぞれ映画と写真をとるきっかけについて質問されると、内山は「自分は田舎から上京してスタイリストになろうと思っていましたが、その過程で映画をたくさん観た時期がありました。そこで“映画って自由だな”と強く感じたんですね。それと同時に、自分が知らない“世界”が、東京どころか、世界中にあるんだ、といういうことを感じ、自分と“世界”を接続してくれたのが映画だったんです」と話すと、嶌村も「自分にとっても写真が“世界と繋がるツール”でした。僕は、写真を始めてすぐに海外に留学に行ったんですけど、その時、英語もしゃべれない中で 写真を通じてコミュニケーションが取れたりとか、かなり写真に救われたことがありました。当時は“表現する”とか何か強く思っていることもなくて、写真が撮れれば面白い人たちと仲良くなれるかも、って漠然と思っていただけなんですけど、あの経験を経て、自分の中に1つ役割ができたというか、自分は“世界”の人たちとこの社会の中で“写真を撮る人”として存在できるんじゃないか、と思い始めて、そういうところから少しずつ自分が求められ始めて、それが仕事になってしまった、という感覚です」と話し、双方共に、生業としているものが“世界とつながるツール”であるという共通認識を示していた。

 内山拓也監督の最新作『若き見知らぬ者たち』は10月11日より、新宿ピカデリー他にて全国公開。

 嶌村吉祥丸の写真展 「what is good?」 は、GALLERY X BY PARCO(渋谷PARCO B1F)にて2024年9月6日(金)〜9月23日(月)の会期で開催中。9月25日には、本企画は、PARCO出版が刊行する書籍、嶌村吉祥丸 写真集 『what is good?』が発売される。

公開表記

 配給:クロックワークス
 10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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