登壇者:菅田将暉、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝、黒沢 清監督
第81回ヴェネチア国際映画祭で観客を熱狂の渦に巻き込んだワールドプレミアにつづき、第49回トロント国際映画祭への出品、そして第97回米国アカデミー賞®国際長編映画賞の日本代表作品にも決定! アジア最大級の映画祭の釜山国際映画祭では、同祭のメインプログラムでありその年の話題作や世界で影響力のある監督の新作を上映する「ガラ・プレゼンテーション部門」の上映に選出されるなど、ますます盛り上がりを見る映画『Cloud クラウド』の公開記念舞台挨拶が9月28日(土)に実施され、黒沢監督をはじめ、菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝が舞台挨拶に登壇した。
昨日27日(金)に公開初日を迎えたばかりの本作。菅田は映画を観終わったばかりの客席を見やり「公開2日目からこうやって劇場に来てくださってありがとうございます。無事に公開ができて、お客さんが入っている景色を見られて嬉しいです」と笑みを浮かべる。
奥平は「昨日から公開ということで、(ネットで)感想を見たりとかしていて、すごくいろんな感想があって、面白いなと思っていました」と述懐。
岡山は「この『Cloud クラウド』という、不思議な形をした映画が、ようやくこうして皆さんに届き始めたことを本当に嬉しく思います」と挨拶。
荒川は「すっかり秋めいてまいりました……。芸術の秋ということで『Cloud クラウド』をよろしくお願いします」としみじみと語って会場の笑いを誘い、窪田は「貴重な土曜日にこの『Cloud クラウド』のために集まってくださりありがとうございます」と満員の客席に感謝。
そして、黒沢監督は豪華キャスト陣を見やりつつ「映画の中では、みんなひどいことばっかりしましたが(笑)、このように、実はいい人たちばかりですので、そこは誤解のなきようによろしくお願いします」と語り、会場は笑顔と公開を祝う大きな拍手に包まれた。
本作は公開前に第81回ヴェネチア国際映画祭や第49回トロント国際映画祭など各国の映画祭で上映されてきたが、黒沢監督によると国ごとに観客の反応はさまざまで、ヴェネチアでは「怖い」という反応が多かった一方、トロントでは思いもよらぬシーンで笑いが起こることもあったという。そこで、この日の観客に「怖かった」と「笑えた」のどちらの印象が強かったかを拍手で問うと、圧倒的に「怖かった」という観客が多数! ちなみに、登壇陣の中で「怖かった」という印象が強かったという奥平は「窓ガラスがバーンっとなったり、家の外で物音がして、吉井さん(菅田)が『なんだ?なんだ?』みたいになるところが、『何かいるのかな?』というドキドキ感があって怖かったです」と明かし、菅田も「見られてるような背中のカメラワークが怖いよね」と同意し、奥平も「振り向いたら何かいるのかって想像しちゃって怖いです!」とうなずく。
また、窪田が怖かったシーンの一つとして「(吉井の勤務先の社長役を演じた)良々さんが、窓の外から(じっと)立って見ているシーンが怖い」と指摘すると、一同「あれは怖い!」と即座に同意。菅田は「現場でもめっちゃ怖かったですもん。しかもあの日、(荒川さんと)挨拶をしないまま、初対面だったので」とふり返ったが、荒川は「ただ『立っててください』と言われただけです、僕は(笑)」と困ったような笑みを浮かべていた。
黒沢監督は、お気に入りのシーンとして、菅田演じる吉井が最後に見せる表情に言及し「最高でしたね。あれだけのことをやっておきながら、ほんの小さな幸せにすがろうとする人間の情けなさ、愛らしさが一瞬出てくる。すごく胸を打ちました」と菅田の芝居を絶賛。一方の菅田は、自身が拘束されたシーンに触れ「“悪の軍団”のみんなが、僕が拘束されている目の前で、どうでもいいことで、揉めるんですけど、それが、人間の極限の状況での小ささや情けなさが見えて面白い」と語る。
ちなみに“悪の軍団”のひとりで、岡山演じる三宅は、顔に袋をかぶり、上から毛が飛び出しているビジュアルが予告編やポスターでも強烈なインパクトを放っているが、岡山は「何パターンかあって、目の位置なども微調整してるんですけど、まさかあんな感じとは……。ほぼ顔が出ないってなかなかないですよね」と楽しそうに述懐。黒沢監督は「美術部が作ってくれたんですけど、本当に安っぽい感じで、袋も乗っている毛も100円で買えるんです。袋だけだと味気ないので『もう一発、100円で何かないですか?』と聞いたら『毛が100円で売っています』と」と驚きの内幕を明かし、菅田も「誰でも200円で三宅になれるんだ!」と驚いていた。
この日は、映画にちなんで登壇陣に本作の現場やプロモーションで「おびえた」エピソードを尋ねると、菅田は「大兼くんの私服にはおびえました。この世の20代で一番個性があるんじゃない?」と奥平の個性あふれるファッション・センスを絶賛。「緑系で統一している日があって、カッコよかったし、(服が)本当に好きなんだろうなと感じました。ハルクみたいになってました」と語り、黒沢監督も「覚えています。何者かと思いました」と述懐。菅田はさらに「勝手に『かまされた!w』と思いました。『先輩、TシャツとGパンで来てんじゃねーよ』と言われてる気がしました(笑)。あれはぜひ続けてほしいです」と力強いエールを送っていた。
岡山は、現場でのおびえたエピソードとして「良々さんとは『はじめまして』だったので、現場でご挨拶をしに行こうとしたら、良々さんから『ひさしぶり!』と言われて……」と告白。実際には、荒川の勘違いで、この日が初対面だったそうだが、岡山は「『え? ヤバい! どこかでご一緒してるんだ?』と思って、僕も『はい』って返事して(笑)、セッティング中に携帯で“荒川良々 岡山天音”って検索しました」と当時の焦りと恐怖を明かす。荒川は「場を和ませようと思ったのかな(笑)。失礼しました」と平謝りだった。
さらにこの日のトークでは、「良い意味で裏切られたと思った人」「いまだから聞きたいことがある人」を互いに指してもらったが、菅田は、「良い意味で裏切られた人」として黒沢監督を指して「フランクにこんなしゃべってくださるのが意外でした」とふり返る。
一方、黒沢監督は窪田を指して「初めてお仕事させていただきましたが、何となくクールで物静かな印象がありました。僕は、ピストルが出てくる映画は何本も撮っていますが、現場でピストルを握って、あんなにはしゃいだ人は初めて見ました(笑)。それだけ陽気に楽しくふるまってくれました」と明かした。
続いての「いまだから聞きたいことがある人」という問いに関しては、全員の指差しが荒川に集中! 岡山は「名前の由来は?」と質問、荒川は「いまさらその話(笑)?」と笑いつつ「良し(よし)までは本名で、(本名は)良友と言うんですけど……、うちの劇団の松尾スズキがつけました」と説明。奥平は「普段、何されてるのかなと……。あまりにもプライベートが想像できないので」とストレートな疑問をぶつけ、荒川は「普通です。ゲームをしたり」と答え、2人で壇上にて大好きなゲームの話に花を咲かせていた。
黒沢監督は、荒川が演じた滝本が猟銃を扱うシーンについて「お芝居で(銃を撃った際の)反動をつけてくださいと言って、やってもらったら実にうまくて、扱い慣れたように見えましたが、相当練習したんですか?」と荒川の演技を絶賛しつつ質問。荒川は「実際に撃ったことはないですけど、使い慣れているという設定でしたので、YouTubeとかで、アメリカの人が熊を撃っているところなどを見ました」とユニークな役作りを明かした。
舞台挨拶の最後、菅田は「まだ公開したところなので、これからどんどん広がってほしいなと願っております」と呼びかけ、黒沢監督は「ご覧になった方は、あまり見たことのない映画だと思われた方もいらっしゃると思いますが、こういう映画もあると知っていただけたら嬉しいです。皆さんの記憶の奥のほうに、深くこの映画が残ってくれたらいいなと思います」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。
『Cloud クラウド』はTOHO シネマズ日比谷ほか全国公開中。ズ日比谷ほか全国ロードショー。
公開表記
配給:東京テアトル 日活
全国絶賛公開中
(オフィシャル素材提供)