真夜中の図書館で⽬を覚ました瞬介は、なぜか外に出られぬまま、旧友の⾏⼈、貴織と再会する。いつまでも明けない夜、学⽣時代の演劇仲間だった3⼈は、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは⾏⼈が作演するはずだった「ピアニストを待ちながら」であった――。
10⽉12⽇(⼟)シアター・イメージフォーラムでモーニング&レイトショー上映が決定した『ピアニストを待ちながら』。本作は、『のんきな姉さん』(04)でデビュー後、『眠り姫』(07)、建築家との共作『DUBHOUSE』(12)や「⾳から作る映画」プロジェクト、『背吉増剛造×空間現代』(22)などを撮り、今年デビュー20周年となる異才・七⾥ 圭が、世界的な建築家・隈研吾が⼿掛けた村上春樹ライブラリーの館内で全編撮影した待望の最新作。2022年10⽉に早稲⽥⼤学にて45分版が初披露、翌2023年1⽉に舞台挨拶付きで特別上映されたが、この度、61分の劇場公開版として⽣まれ変わった。
瞬介を演じたのは、若⼿実⼒派の井之脇海。9歳からスタートさせた役者のキャリアと、⼤学で映画制作を学んだ経歴も持つ豊かな知⾒で脚本を咀嚼。『東京ソナタ』(08)で天才ピアニスト少年を、『ミュジコフィリア』(21)でも現代⾳楽に⽬覚める学⽣を演じた井之脇は、その実績を更新するように本作でも吹き替えなしでピアノの演奏を披露している。瞬介の⼤学の同級⽣・貴織役には、『わたし達はおとな』(22)、『福⽥村事件』(23)、『熱のあとに』(23)などの話題作で⽖痕を残してきた⽊⻯⿇⽣。瞬介の友⼈で演劇⻘年の⾏⼈には、『ミスミソウ』(18)、『劇場版 美しい波〜eternal』(23)の⼤友⼀⽣。また、瞬介よりも上の世代にあたる謎めいた存在感を持つシングルマザーの絵美を『王国(あるいはその家について)』(23)。『ナミビアの砂漠』(24)の澁⾕⿇美、中年男の出⽬には『夜明けのすべて』(24)。『蒲団』(24)の⻫藤陽⼀郎がつとめ、変化球のクインテットを奏でる。
この度、ポスタービジュアルと予告編が完成した。
ポスタービジュアルは、グランドピアノを弾く井之脇の後ろ姿と⽊⻯と⼤友の美しい横顔の写真をバックに、世界的建築家の隈研吾が⼿がけたエントランスの曲線を模したタイトルロゴと、⽊材をアーチ状に配したトンネル状の⼤屋根の⼀部を⼤胆にレイアウト。そして予告編は、井之脇が奏でるピアノの旋律にのせて、“出られない図書館”の中で舞台の稽古をするキャラクターの姿や、「なぜ彼らは出て⾏かないのか︖」という問いかけなど、本作の迷宮的世界観を凝縮させた⼀編となっている。
また、本作を⼀⾜先に鑑賞した岡⽥利規さん、荻野洋⼀さん、関⽥育⼦さんの絶賛コメントも到着。岡⽥さんは「図書館という空間が演劇によって異化されるのを、この映画を観る者は目の当たりする。そこで演劇のリハーサルが繰り広げられること。しかも真夜中に、それによってそこによってそこに結界が生じる。そこがまぎれもなく異界になる」と、本作の魅⼒について演劇作家ならではの視点で解説。
そして早稲⽥⼤学国際⽂学館開館3周年と『ピアニストを待ちながら』の公開を記念し、10⽉8⽇(⽕)、物語の舞台となった村上春樹ライブラリーにて七⾥監督とアメリカ⽂学研究者・翻訳家の柴⽥元幸さんによる“映画と⽂学”にまつわる対談イベントの開催が決定。さらに9⽉28⽇(⼟)より、イメージフォーラムにて七⾥監督デビュー作『のんきな姉さん』と、15年間毎年上映が繰り返された伝説の作品『眠り姫』が再上映。『のんきな姉さん』は、9⽉28⽇から10⽉4⽇(⾦)まで、『眠り姫』は10⽉5⽇(⼟)から10⽉11⽇(⾦)まで、連⽇21時より1週間限定レイトショーとなる。
コメント
岡⽥利規(チェルフィッチュ主宰/演劇作家/⼩説家)
図書館という空間が演劇によって異化されるのを、この映画を観る者は目の当たりする。そこで演劇のリハーサルが繰り広げられること。しかも真夜中に、それによってそこによってそこに結界が生じる。そこがまぎれもなく異界になる。劇場でなく空間が演劇によってまざまざと異化されるさまが、そのような演劇の上演そのものに立ち会う以上にそれを捉えた映画、つまり、この『ピアニストを待ちながら』という映画を観ることによって、よりまざまざと味わうことができるように思われるのは、しかし、なぜなのだろう?
荻野洋一(映画評論家、番組等構成演出)
死の舞踏のフィニッシュが永遠に先送りされる。七里 圭は原題映画をバロック化させた。ノイズと風景の反復によって、かつてはここに誰かがいたはずなのにとブツブツ唱えながら「誰(た)が袖」を素描し続ける。「誰が袖」とはエンプティショットであり、七里映画にあっては、誰かが写っているショットも、本質的にはエンプティショットなのだ。エンプティショットがリフレインされ、延滞され、ふっとマークが貼り直される。。
関⽥育⼦(ユニット[関⽥育⼦]代表/脚本家/演出家)
『ピアニストを待ちながら』は、現今の社会を意識した実験的な作品であると同時に、遥か昔から問い続けられてきた「存在」の問題に、ある視座をもって応答する作品だと感じた。しかし、観客の⽬に映るのはユーモアに溢れたシーンの数々であるために、肩の⼒を抜いて鑑賞するのが得策です。笑ける余⽩のある時間を過ごしたい⽅におすすめです!
イベント情報
【早稲⽥⼤学国際⽂学館開館3周年×七⾥圭監督『ピアニストを待ちながら』公開記念イベント】
「物語を待ちながら」映画の物語と⽂学の物語を巡って〜
『ピアニストを待ちながら』劇場公開記念トーク・柴⽥元幸×七⾥ 圭監督
⽇時︓10⽉8⽇(⽕) 18時30分開場 開演19時 終演20時30分
場所︓早稲⽥⼤学国際⽂学館(村上春樹ライブラリー) 定員︓50名
七⾥ 圭監督の代表作である内⽥百閒「⼭⾼帽⼦」を原典とした映画『眠り姫』(07)を熱く⽀持し、以後、七⾥監督と対談などを続けて来たアメリカ⽂学研究者・翻訳家の柴⽥元幸さんをゲストに迎えて送る映画と⽂学についてのトークイベント。
本作は“図書館の外に出たつもりがまた戻って来る”というル―プする空間の中で展開。村上春樹⽒の「図書館奇譚」に着想を得ている。
今回は作品の⼀部をロケが⾏われた村上春樹ライブラリーで特別に公開。「図書館奇譚」と『ピアニストを待ちながら』はどのようにつながっているのか︖ 村上春樹さんとは翻訳における⻑年の“盟友”であり、共同著作もある⽇本を代表するアメリカ⽂学の研究者の柴⽥元幸さんをゲストに迎え、⼀部先⾏上映を交えながら本作に内在する⽂学性について語る。
(オフィシャル素材提供)