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現役日芸生による第14回映画祭「声をあげる」予告編完成!

 日本大学芸術学部映画学科3年映像表現・理論コース映画ビジネスゼミでは12月7日(土)~12月13日(金)の一週間、ユーロスペースにて学生主催の映画祭「声をあげる」を開催し、 計14プログラム全15作品を上映する。
 今年で14回目となる現役日芸生による映画祭。テーマ設定、企画から作品選定・上映交渉・ゲスト交渉 ・チラシやパンフレットのデザイナー探しから制作、そして会場運営に至るまで、全て3年生15名の学生主導で行っている。

声明

 今年で14回目を迎える日芸生主催の映画祭。これまでも「領土と戦争」(2022)や「移民とわたしたち」(2023) など、その時々の社会情勢を踏まえ、学生が重要と捉える問題に目を向けてきました。今年のテーマは「声をあげる」。
 2023年10月のハマスとイスラエルの軍事衝突以来、ガザ地区を中心に犠牲者は4万人を超え今も増え続けていまする。さらにイスラエルは、レバノン各地への空爆による攻撃を始め、新たな土地で子どもや女性を含む多くの民間人が現在も犠牲になっています。また、2年前に始まったロシアによるウクライナ侵略は、いつ終わるともしれません。昨年11月末、アメリカ各地の大学ではイスラエルに対して反戦を求めるデモが起こり、若者の勇敢な行動が大きな話題を呼びました。学生たちは、大学に対し、大学基金や授業料を通じたイスラエル軍関連企業への投資を中止するように求めました。彼らの抗議の声は瞬く間に世界に広がり、日本の大学でも東京大学をはじめ、各地で声が上げられています。しかし、それはごく一部の学生に限り、私たちを含む大半は「自分の問題ではない」と静観しました。この現実に起きている問題に対して、目を向けないことへの危機感こそがこの 企画の発端です。学生として学びながらも選挙権を持つ社会の一員として、私たちが歴史を受け継ぎつつ現状を直視し、間違っていることに対して「声をあげる」ことはとても重要なのではないでしょうか。

 今回の映画祭では、これまでに起こった古今東西のさまざまな事件や現在にも通ずる社会問題について「声をあげる」人々を扱った映画に焦点を当てています。当時の学生や市民は何に対して怒り、どのような方法で声をあげたのか。私たちがいま「声をあげる」ことを考えた時に、どうしたらいいかを教えてくれるきっかけがありそうです。そして、世界で起こっている事件を自分たちにも関係のある問題として捉え直し、どのような行動を取るべきなのかを改めて考え直すきっかけにしたいと考えています。映画を学ぶ私たちにとって、こうした映画を集めて上映す ることが、最初の「声をあげる」行為だと信じています。

各方面からのコメント

宇多丸(RHYMESTER)
 何しろラインナップの縦横無尽ぶりが素晴らしい。新旧問わず、硬派なドキュメンタリーとビッグバジェットのジャンル映画をあえて並列にキュレーションすることで、より鮮やかに普遍的な問題意識が浮かび上がる……つまり確かにどれも、押しつけられた社会的不条理に対して、もうこれ以上スルーも泣き寝入りもしないと、「声をあげる」作品なのだ。今この瞬間、この並びで観るからこその、貴重で豊かな鑑賞体験となるに違いない。

重信房子(著述家・歌人)
 おかしくないでしょうか? 「ハマースのテロ撲滅」の名でイスラエルのジェノサイドが続き、「自衛権」の名でそれを許す世界。76年以上の占領と民族浄化に立ち向かうパレスチナの抵抗の権利はテロではない。
 常識や前提を問い、語り、声をあげよう!
 今、声を挙げなければ、いつのまにか米・中・ロに囲まれた核戦争勃発の危機の最前線の、この日本の足元から戦争が始まっていくでしょう。「声をあげる」日芸生が主催する映画祭で共に過去を観、知り、声を挙げる一歩としたい。

四方田犬彦(映画誌 ・比較文化研究家)
 Easy to be hard という歌があった。60年代後半、アメリカがベトナム戦争と黒人差別で揺れていた時代に作られ、一世を風靡したミュージカル『ヘアー』のなかの一曲だ。
 ハードに、つまり頑なに構えていると、イージー、つまり楽なのよ。ノーといって目を閉じてしまえばいいだけの話だから。そりゃガイジンや社会正義を気にする人はいるけど、あれは特別な人。わたしには関係ない。でも、わたしだって友だちがほしい。ハードでいるだけでいいのかしら。
 ここに集められたフィルムは、どこかでこの歌に繋がっている。頑なであってはいけない。自分の知らない人のために声をあげるのだ。

上映作品15本一覧

『蟹工船』(山村 聰/195/日本/110分/モノクロ/配給:北星/所蔵:国立映画アーカイブ)
『日本解放戦線・ 三里塚の夏』(小川紳介/1968/日本/108分/16 ㎜→DCP/モノクロ/配給:小川プロダクション→アテネ・フランセ文化センター)
『日大闘争』『続日大闘争』(日大全共闘映画班/1968/日本/58分+55分/16㎜/モノクロ)
『水俣‐患者さんとその世界』(土本典昭/1971/日本/167分/16㎜/モノクロ/配給:シグロ/上映素材提供::Pala bra)
『憎しみ』(マチュー・カソヴィッツ1995/フランス/95分/35㎜→DCP/モノクロ/配給: Le Pacle/上映素材提供:イスラーム映画祭)

『ソビブル、1943年10月14日午後4時』(クロード・ランズマン/2001/フランス/98分/35㎜→ DCP/カラー/配給:Why Not Productions/上映素材提供:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム)
『沈黙を破る』(土井敏郎/2009/日本/130分/DVCAM→Blu・ray/カラー/配給:シグロ)
『マイ・バック・ぺージ』(山下敦弘/2011/日本/141分/35㎜/カラー/配給:アスミックエース)
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー/2015/アメリカ/120分/Blu・ray/カラー/配給:ワーナーブラザース映画)
『首相官邸の前で』(小熊英二/2015/日本/109分/DCP/カラー/日本語[英語字幕付き]/ 配給:アップリンク)
『1987、ある闘いの真実』(チャン・ジュナン/2017/韓国/129分/DCP/配給:ツイン)
『燃えあがる 女性記者たち』(リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ/2021/インド/93分/DCP/カラー/配給:きろくびと)
『時代革命』(キウィ・チョウ/2021/香港/158分/カラー/ 配給:太秦)

© Haven Productions Ltd.

『SHE SAID /シー・セッド その名を暴け』(マリア・シュラーダー/2022/アメリカ/129分/DCP/カラー/配給:東宝東和)

 映画祭では、様々なかたちで声をあげてきた人たちを追った映画を劇映画6本とドキュメンタリー9本から計15本取り上げる。
 今回の上映作品で最新のものは「#MeToo」運動が世界に広がるきっかけとなった告発事件を映画化した、マリア・シュラーダー監督の『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)。性的暴行やハラスメントを受けた被害者の声を社会に届け、不当な権力者に対抗する姿勢が描かれる。同じく最近起こった、香港民主化デモを描いた 『時代革命』(2021)は、自由と民主主義を求め戦い続ける市民や学生の様子を多角的に捉える。2021年カンヌ国際映画祭で特別上映され、国際的に注目を集めた作品である。
 今回日本での上映権が切れていた2本の作品をフランスの権利元と交渉の上、特別に上映が決定した。1995年のカンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞した マチュー・カソヴィッツ監督の『憎しみ』(1995)は、パリ郊外(バンリュー)に住む若者たちの社会的格差や暴力による葛藤を描く。『SHOAH』(1985)でその名を知らしめた、クロード・ランズマン監督の『ソビブル、1943年10月14日午後4時』(2015) は、ナチスの収容所で唯一武装蜂起が成功したソビブル収容所で、数少ない生存者の1人が、当時の計画から実行、生還までの記憶を語る。
 本映画祭の企画の発端であるパレスチナ問題を取り上げた作品では、土井敏邦監督の『沈黙を破る』(2009)を上映。イスラエル軍によるヨルダン川西岸に対する侵略の一部始終を捉えている本作は、これが更に悲惨な形となって現在行われていることを浮き彫りにする。韓国民主化闘争を実話形式で描いたチャン・ジュナン監督の『 1987、ある闘いの真実』(2017)では、軍事政権という巨大な権力により自由を奪われた市民の、我慢の限界に達した声が湧き上がる。ドキュメンタリー映画としてさまざまな賞を受賞したインドの『燃えあがる女性記者たち』(2021)は、社会の声を拾う女性ジャーナリストたちに焦点を当て、反社会勢力の存在や警官の怠慢を追求していく。ジョージ・ミラー監督の『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』(2015)はハリウッドの娯楽大作だが、全編を通して繰り広げられるカーチェイスの中で 、女たちが自分たちの権利を守るために戦う姿を描く映画として選んだ。
 また国内で声をあげた人たちを描いた作品では、日大生日大全共闘映画班が自ら撮影した『日大闘争』と『続日大闘争』(1968)を 同時上映。街中が行進するデモ活動を行う学生で埋め尽くされ、学生と機動隊が武力衝突する光景は印象的である。同じく学生運動を題材にした 山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』(2011)は、実際に起きた朝霞自衛官殺害事件を元に、学生とジャーナリストの間で「正義」とは何かという葛藤の様子を現代の若手監督が描く。本映画祭 のなかで 最も古い作品である 山村 聰監督『蟹工船』(1953)は、小林多喜二の原作で、不況の中仕事にあぶれた労働者たちの過酷な労働環境、階級差による無慈悲な暴力を生々しく描く。
 また、日本映画史に残るドキュメンタリー作品として、小川紳介と土本典昭という二人の巨匠による、それぞれのシリーズの第一作品を上映する。小川紳介監督の『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968)は、千葉県の成田に国際空港建設を強行する行政に反発する農民と学生の姿を記録し、鬼気迫る様子で抵抗する農民たちが持つ凄まじいエネルギーを描く。また、当時奇病と呼ばれた水俣病を世界に知らしめた土本典昭監督の『水俣-患者さんとその世界-』(1971)を上映。現在も声をあげ続ける水俣病患者たちの最初の闘いの記録であり、爆発する患者たちの叫びの声が印象的である。
 歴史社会学者である小熊英二が監督した『首相官邸の前で』(2015)は、今世紀に参加者が20万人に達した大規模な抗議運動により、原発再稼働政策に大きな影響を与えた様子を捉える。
 これらの作品は、まず学生たちが作品を見て、2か月にわたって議論するなかで選んでいった。今、私たちに必要な行動は何かを広い視野で見つめなおせるラインナップだと自負している。この映画祭を通して私たちにとって「声をあげる」とはどのようなことか、私たちは何に目を向けるべきなのかを観客の方々と共に考える機会にしたい。

映画祭「声をあげる」開催概要

□主催:日本大学芸術学部映画学科映画学科映像表現・理論コース映画ビジネスゼミ、ユーロスペース
□会期:2024年12月7日(土)~12月13日(金) 1日4回、各作品2回ずつ上映
□会場・一般のお問い合わせ:ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS3F TEL:03 3461 0211)
□公式ホームページ:https://www.nichigei-eigasai.com/top(外部サイト)
  X:https://x.com/nua_eigasai2024(外部サイト)
  Instagram:https://www.instagram.com/nua_eigasai2024/(外部サイト)
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(オフィシャル素材提供)

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