イベント・舞台挨拶

『徒花 -ADABANA-』初日舞台挨拶

© 2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 / DISSIDENZ

 登壇者:井浦 新、水原希子、永瀬正敏、甲斐さやか監督

 映画『徒花 -ADABANA-』の初日舞台挨拶が都内で行われ、主演の井浦 新、共演の水原希子、永瀬正敏、メガホンを取った甲斐さやか監督が登壇してクロストークを行った。

 本作は、2019年に長編監督デビューを果たした甲斐監督の最新作。20年以上もの構想を経て、甲斐監督は脚本も手掛けている。限られた上層階級の人間が病に侵されたときに、延命治療として自分と全く同じ見た目の「それ」を保有できるという近未来を舞台に、手術を前にした新次(井浦)と臨床心理士のまほろ(水原)、治療のために人間に提供される「それ」との物語が描かれる。永瀬は新次の担当医に扮している。

 本作で新次と“それ”の2役を演じ分けた井浦は、満員の客席に向かって「『徒花 -ADABANA-』の世界を全身で楽しんでください」と呼びかける。井浦が甲斐作品に出演したのは2作目となる。

 臨床心理士のまほろ役を演じた水原は3年ぶりの映画出演。客席を見渡し、「今日はこの満席を見ることができて、心がいっぱいです。興味深い作品で、チャレンシングな役どころでした。人間のどこか怖い部分が描かれていて、私の好きな要素が詰まっている作品。甲斐監督の世界に入ることができて嬉しかったです。夢のような現場でした」と尊敬する先輩俳優たちとの共演に喜びをかみ締める。

 永瀬は「作品を十分楽しんでください」と客席に伝えた。

 甲斐監督は「スペシャルなキャストが出演してくれました」と望みどおりのキャストがそろったことに満足げな表情を見せた。

 進次とAIとの2役を演じた井浦は、役作りについて、「僕は新次と“それ”という存在の2人の役を演じ分けるというよりも、新次が生まれ育ってきた環境と、“それ”がどんな環境でどんなものを食べながらどんな人たちに見守られて育ってきているのかという、2人の役の周りの環境や生活などを勝手に想像して膨らませて撮影した感じです。お芝居でテクニカルにやるよりも、それぞれが生きてきたものを映したいと思って演じいました」 と説明した。

 水原は「“それ”と新次を行ったり来たりしなければいけない撮影の方法というか、新次のパートを終わらせてから“それ”を撮るということでなくて、どっちも交互にやらなければいけなかった。そばで見ていて、『どうなっちゃうんだろう?』って思いました。『自分だったら泣いちゃうな』と思っていました。本当に俳優さんってすごいなと思ったし、本当にたくさんのことを学ばせていただきました」と2役を演じ分けた井浦の演技を絶賛した。

 井浦は「僕が進次と“それ”の間を行ったり来たりするほど、監督がケラケラ笑って楽しそうにしてくれてたので、『やったー!』という気分でした」と話す。

 甲斐監督は「想像を超えるお芝居をされると嬉しくなっちゃって。爆笑してすみません。私が想像していたものを皆さんが超えて演じられたので嬉しくて――」と撮影時を振り返る。そして、「新さんが新次の夢と“それ”の夢、どっちも見たという話を聞いて、本当に大変だったんだろうなと思いました」と井浦の苦労をねぎらった。

 井浦と水原は初共演となる。水原について井浦は、「映画でもお芝居を観ています。さまざまな分野で妥協のない自己表現をされる方。想像もつかないものがうまれると思いました」と話す。

 永瀬については「20代の頃から良きタイミングにお芝居をさせてもらっていて、一緒のシーンがあるたびにいつも衝撃を食らわされています。永瀬さんにいただいたきっかけや悔しいという思いを、消化させて自分でも何かしたいと思わせてくれる方」と強調して話した。

 水原について永瀬は「静けさの中の炎というか、熱い中の静寂を持っている人」と評した。自身の役作りについては「今作では、なるべく目立たないようにと意識しながら撮影に臨みました。初めて脚本を読んだときに『僕はいないな』と思ったんです。遠目の存在でいたいと思っていて……。僕の役どころは新次の心の中の葛藤を具現化したものではないかと考えていました」と話した。

 井浦は、「何が生まれるか分からない希子さんと、積み重ねてきた永瀬さんと、こうやってお芝居できてすごく嬉しかった」と話す。そんな井浦に永瀬は「めっちゃいいこと言ってくれますね。新くんはずっといいやつです」と井浦に笑顔を向けた。

 作品について、甲斐監督は「いろんな正解があります。観てもらった人の中にあります。いろんな答えを出して欲しい」と伝えた。井浦も「映画を観た後に語りたくなる映画っていいですね」。永瀬は「この映画はいろんなきっかけを与えてくれます」と伝えた。

 最後に井浦は、自身の恩師となる故若松孝二監督について話す。「若松監督と甲斐監督は作風も人物像も違うけれど、(若松監督の作品に参加した時と同様に)甲斐組は居心地がよい」ときっぱり。

 「甲斐監督本人からは激しさとか凶暴さを感じませんが、作品からは溢れています。だけどそれは観客を傷つけたいんじゃなくて、僕らに問い続けたいんだろうなと感じるんです。答えはたくさん出ると思います。甲斐監督の小さな改革を、作品を全身で感じて楽しんでください。何度でも足を運んでください」とメッセージを送った。舞台挨拶を終了した。

 (取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:NAKACHIKAPICTURES
 10月18日(金) テアトル新宿他全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました