イベント・舞台挨拶

映画『八犬伝』公開直前 江戸カルチャートークイベント

© 2024『八犬伝』FILM PARTNERS.

 登壇者:立川談春

 唯一無二の奇想天外な物語で、日本のファンタジー小説の原点と称えられる「南総里見八犬伝」。1842年に完結してから200年近くの時を超え、今なおマンガ、アニメ、映画、舞台、歌舞伎と多彩なジャンルで二次創作が行われるなど、現代のエンターテインメントに多大な影響を与え続けている。その傑作小説を、ダイナミックかつ緻密なVFXを駆使して実写映画化。里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士たちの運命をアクションとVFXで描いた「八犬伝」=【虚】の世界と、物語を生み出した馬琴の感動の実話【実】の2つのパートが交錯する、山田風太郎の小説『八犬伝 上・下』(角川文庫刊)を映画化した前代未聞のエンターテインメント超大作『八犬伝』は、10月25日(金)より全国ロードショー!

 八犬士たちの迫力満点な冒険を描いた【虚】パート、「八犬伝」作者・滝沢馬琴の感動の実話を描く【実】パート、2つが交錯する前代未聞の構成でも話題の映画『八犬伝』。【虚】パートでは、滝沢馬琴に役所広司、葛飾北斎に内野聖陽、馬琴の息子・宗伯(鎮五郎)に磯村勇斗、宗伯の妻・お路に黒木 華、馬琴の妻・お百に寺島しのぶと日本映画界を代表する実力派が集結。さらには立川談春、中村獅童、尾上右近といった落語、歌舞伎界の顔が重要なキー・パーソンで登場。【虚】パートでは、八犬伝のすべての始まりとなる伏姫に土屋太鳳、里見家に呪いをかける闇を司る玉梓に栗山千明、八人の剣士に渡邊圭祐、鈴木 仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久 創、藤岡真威人、上杉柊平、さらに重要な役柄で河合優実と今最も旬な注目の俳優たちが躍動している。監督は『ピンポン』や『鋼の錬金術師』シリーズの曽利文彦が務める。

 今週25日(金)からの公開を記念し、10月22日(火)に、本作に鶴屋南北役で出演している落<語家・立川談春>が登壇する映画『八犬伝』公開直前 江戸カルチャートークイベントが開催された。

 イベント会場となった「蔦屋」は、創業者の祖父が営んでいた屋号が「蔦屋」だったことに加え、写楽など有名絵師を世に送り出した、蔦屋重三郎にあやかって名付けられたという。2025年放送のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、この重三郎の波乱万丈の生涯を描くドラマも放送されることで、大きな話題を集めている。
 そんな重三郎は、「八犬伝」の作者・滝沢馬琴と、その友人にして人気絵師の葛飾北斎という、映画でも重要人物として登場する二人の偉人を“繋いだ”存在でもある。重三郎は今でいう出版社の社長、歌麿や写楽といった浮世絵を出版した江戸の剛腕・名プロデューサー的な存在だった。馬琴は、重三郎が営む日本橋の書店「耕書堂」の番頭を任され、約1年間奉公し、多数の本に触れ、劇作家としての基礎を固めていったとされている。また重三郎が刊行した作品の中には、北斎が「勝川春章」を名乗っていた若い頃に制作した、「梶原源太景季」という武者絵も含まれている。

 映画にゆかりある会場にトークゲストとして登壇したのは、本作でキー・パーソンの一人・鶴屋南北を演じている立川談春。南北は、「東海道四谷怪談」で人気を博した歌舞伎狂言作者として知られ、劇中では創作への考えの違いから役所広司演じる馬琴と対峙する重要な役どころ。そのオファーについて「監督とプロデューサーさんから、大事な役なのでと口説かれた時に、私が『やめたほうがいいですね』と言った時のプロデューサーさんの落胆ぶりと、監督の目にちょっと力が入ったということで。交渉の第一歩としては勝ちだったかなと思っております」と冗談交じりに振り返った談春。それでもこの役をやろうと思った理由について「どれだけ恥ずかしい思いをするかというよりも、役所広司さんと内野聖陽さんと一緒の空気を吸いたいという興味のほうが勝った」と振り返る。

 ここからは談春が参加した撮影の裏側について、ひとり漫談に。まさに落語家・立川談春の面目躍如たる、情景描写の巧みさ、やり取りのおかしさに会場も爆笑に次ぐ爆笑の嵐だった。

 談春が出演するシーンの撮影は、国の重要文化財に指定されている、香川県・こんぴら歌舞伎の芝居小屋・金丸座で行われたといい、「このシーンのために前乗りし、台本の読み合わせをしたんです。私はセリフを完璧に覚えていたんですが、意外にもふたりは大丈夫かなというくらいにセリフを覚えてなかった」と冗談めかして会場は大爆笑。

 そして撮影当日。現場に入った談春は、スタッフ同士が「だから上から吊るすと言ってるんだよ」「吊るすって、何で吊るすんや」と揉めている現場を目撃したという。そしてそこに続く言葉の中に「南北だよ!」というフレーズが入っており、自分のことだと気づいた談春。「奈落から吊るされている南北の姿を見た馬琴(役所)と北斎(内野)が驚くところを撮りたいということで。吊るしたいんだとは聞いていたけど……。しかもどう見ても天井まで20メートル以上ある。でも、もう引き受けちゃった後だから……」とボヤくことしきり。
 そして実際には、舞台の奈落のギリギリのところでうつぶせになった談春を、スタッフたちがロープでつり上げて、役所・内野たちに対峙する、という形になったという。そんな談春の“命綱”をまさに文字通り、命がけで支えていたという若手スタッフの誠実さに、談春は「こいつがいいやつでね……」と感謝しつつも、今度はギチギチに引っ張られているため、思い描いたぶらんとした形にならない。そこで「俺が合図したら少しゆるめても大丈夫だからとは言ったんですが……怖いでしょ」と明かす談春。さらにそのうえ、曽利文彦監督からワン・アクション多い芝居をつけられることになり、試練の連続だったという。

 「私は気は小さいんだけど、気は強いんですよ。だから後には引けない。若手スタッフも必死で支えてくれたけど、俺は人よりも頭が重いから……それは顔が大きいとも言うけれども。映画を観たら分かると思いますが、最初のほうのセリフのやり取りは、『落ちそうになったけど助かった』というだけの感情で。放心状態になっていますからね!」と明かして会場は大笑い。「イベントのテーマが『江戸文化』がどうこうとありますけど、今日はずっとこんな話ばかりですからね!」という談春の話芸を堪能できる漫談話に、会場もすっかり魅了されている様子だった。

 そしてその後は、本作のテーマである【虚】と【実】について、さらには会場に集まった観客から受け付けた「女性落語家について」「芝居は緊張する?」「落語ではどういうところを意識している?」「好きな落語は?」「高座で話すときと、演技のときとどう違う?」といった質問に次々と返答していった談春。
 本作での鶴屋南北の役づくりについては、「私は本当に運のいいことに、(本職の)役者さんでもなかなか共演できないような人たちとばかりやらせていただいています。だから役づくりについて考えるのは無駄です」と語る。「先ほど笑い話として、台本の読み合せの話をしましたが、人間って一晩でこんなに変わるのかと。本読みの時はわざとたどたどしくやっていたんじゃないかと思うくらい、役所さん、内野さんたち、役者さんは凄いんです。前日の本読みから24時間で何を考えてつくりあげてきたのか、ということに畏怖の念を抱いたぐらい。だから諦めました!」と、共演して体感した役所と内野の偉大さについて熱弁。

 劇中で馬琴と南北が言い合いになるシーンにも言及し、「僕は演技でなく素で喧嘩を始めた感じで、役所さんの凄さはそういうところだと思う。役づくりとか相手役とか全部忘れさせてくれて、『こういう言い方をされたらこう返すよな』と、自然にそれを引き出すというのが、主役の芝居なんだと思いました。『あなたはむき出しでもいいから来なさいよ』と、引き出してもらった気がします」と、役所との共演シーンをしみじみと振り返った。
 さらに、「芝居をやるなら、セリフだけは言えないといけない。だけど、なかなかそれが言えないんですよ。落語家はひとりでやってるでしょ、このテンポで、このテーマで、この句読点でと思ってやってるんです。それが役者さんは、自分の思い浮かばないところからやってくる。その瞬発力が違うな、緻密さもあって。でも皆さん凄いのは、役者じゃない僕を置いてきぼりにしたりしない。やさしいんですよ」と、名優たちの演技を目の当たりにしてきた談春だからこそ感じられた、“役者の凄味”について語った。

 イベントの最後には、談春から映画を楽しみに待つファンたちへメッセージが贈られた。「南北を演じている私がどこに出ているのか……『もしかしてこれは談春?』と分かるまで、登場してから40秒以上かかります。私も完成した映画を初めて観たときは、自分がどこに出ているか分からなかったぐらい」と笑わせながら、「『八犬伝』は老若男女楽しめる素晴らしいエンターテインメントになっていますので、ぜひご覧になってほしいです!」と力強くコメント。そして談春が音頭を取りながら、会場全体で映画公開を記念した三本締めを行い、大盛況の中イベントは終幕した。

公開表記

 配給:キノフィルムズ
 10月25日(金) 全国ロードショー

 (オフィシャル素材提供)

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