登壇者:池松壮亮
日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督(『月』、『舟を編む』)の最新作『本心』が11月8日(金)に全国公開。原作は、「ある男」で知られる平野啓一郎の傑作長編小説「本心」。キャストには、池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中 泯、綾野 剛、妻夫木聡、田中裕子らが集結。本作は、“リアル”と“リアルではないもの”の境界が今よりもさらに曖昧になった世界を舞台に、亡くなった母の“本心”を知るためAIで彼女を蘇らせることを選択する青年・石川朔也と、彼を取り巻く人間の【心】と【本質】に迫る革新的なヒューマン・ミステリー。
ついに待望の公開が来週8日に迫る中、主演の池松壮亮が来阪、ハロウィンで賑わう大阪・難波にある劇場、TOHOシネマズなんばにて行われた先行上映会に登壇した。
大阪での舞台挨拶を実施するのは5年ぶり!という池松。上映後、作品の余韻に浸っている観客の前に「ハッピーハロウィン!」と挨拶をして会場の雰囲気を和らげ、「映画を観てもらえるだけでも嬉しいですが、大阪に来て皆さんにこの映画を手渡しできて嬉しいです!」と続けた。
前日から大阪に入り、関西のローカル番組に生出演したり取材を受けるなどしていて、「大阪を感じる暇がなかったのでは?」とMCに聞かれると、「昨日の夜と今日のお昼は外に出て、食事をすることができました。大阪の街を回りたい気持ちと、ドジャース戦があったので(気になって)なかなか取材に身が入らなかった(笑)」とジョークを交えて、大阪キャンペーンでの“本心”明かした。「お昼ご飯に道頓堀の今井さんへ行って、うどんすきを食べました。美味しかったです! そこでドジャースの優勝を見ながら……」と大阪を満喫したことを語り、大阪の街を歩いた際は、「仮装した人もいて、とにかく人が多く、いつも活気があるが、いつも以上に活気に溢れていた」と大阪の街の賑わいに驚いた様子。
さらに、MCから「ハロウィンは『死者の魂が家族のもとへ帰ってくる日』とも言われていて、今回の映画に通じるところがあるのでは?」と問われ、「無理やりですね」と苦笑いで返していた。
原作の小説を池松が読み、石井監督へ映画化の提案をしたとこについて聞かれると、「監督からすぐ、メールで『これはすごい、ぜひやろう!』と言われて一気に進んだ」と映画化のきっかけを伝えた。そしてマスコミに向け「明日のニュースはドジャース一面になるだろうから」と笑いを誘いつつ、映画について「2020年、映画製作も世の中も止まって、こんな状態はいつまで続くのか? そんな中、原作に出合い、コロナは描かれてなかったけど、アフター・コロナで起こるようなことがすべて描かれているような気がして、それくらい強いインパクトがありました。原作と合わせて映画を観てもらって同時代の人たちと対話ができる映画になれば良いなと思います」と真剣に本作への想いを語った。
「本当にコロナ以降、テクノロジーが急速に進化していて、この映画は昨年ならまだ難しく、しかし、来年だったら遅くなる。今年がベスト」とAI監修の専門家たちから言われた言葉も明かし、まさに今描かれるべき作品であることを強調。朔也を演じることについて聞かれると、「自分たちもまだ入っていない未来に観客の皆さんとシンプルな感情で向き合っていくことが重要。朔也の肉体、感情を通して少し先の未来を一緒に迷子になって、遠回りして生きる実感を伝えることが自分の役割かな」と思いを語った。そして、母親役の田中裕子との共演については「母が亡くなってからの再会と生活と別れ、全シーンしびれる記憶が残っています」と田中の圧巻の演技を称賛した。
続いての客席からの質問コーナーでは多くの質問が飛び交った。
「池松さんがリアル・アバター(※)を使うとするならば、自分の代わりに何を体験させますか?」という問いには、少し悩んで、「代わりに宣伝してもらいたいです。なかなか慣れないので」と苦笑い。(※=劇中で登場する“リアル・アバター”:カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル【現実】のアバター【分身】として依頼主の代わりに行動する業務)
「でもやっぱり(宣伝で)大阪に来たりはしたいので、宣伝はアバターに任せて、僕は裏で(指示出して観光して)」と回答。
他にも「本作の中で気に入っているシーンは?」との問いには、「母との一連のシーン、静かなエモーションのある三好とのダンス・シーン」を挙げた。また「キャストを決めるのに池松さんは意見をされたのか?」との問いには、「基本的には提案したところから、なんなら普段よりも俳優に徹しようと、脚本作りや撮影の際にも石井監督、プロデューサーのいい話し相手になれればと、隣で話を聞いていました。キャストに関しては実は原作を読み終わったとき、なぜか母親だけは田中裕子さんが浮かんだんです。田中裕子さんといえば自分からすると伝説のような方でまさか自分が共演できるとは思っていませんでしたが、石井監督には伝えました」と裏話も披露。
また「作品のなかでリアルが変わっていって自分自身が追い付けないシーンがあったけど、そんな時に池松さんはどう落とし込んでいるのか聞きたいです」との問い、かなり考えて、「どうなんでしょう、どう答えたらいいんだろう。俳優をやっていると、現実と虚構と物語の中で変な感覚になることは実際にあって、頭から抜けないことはあります。(そんな時は)時間がたつのを待つだけですね、何かをしているということはないですね。いかにして生きるかというのが今作のテーマなんですが……どうしましょう……」と観客に投げかけ、「うーん……パスで」と茶目っ気たっぷりのパスの回答に会場は笑いに包まれた。その他、ネタバレを含む質問も出て、「こんなにネタバレしていいのかな」との一幕もあり、観客とのやりとりも楽しんだ。
最後に「また大阪に戻ってこられて、うれしかったです。皆様の中に良い余韻が残って、何か生活に持ち帰っていただければなぁと思います」と締めくくった。
大阪のアットホームな雰囲気からか、キャンペーン最後の行事だったからか、池松はとてもリラックスした様子で挨拶を行い、ハロウィン仕様となったポスターパネルと観客と一緒に笑顔でフォトセッション。男女幅広い年齢層の観客に向けて、今年唯一の単独主演の意欲作『本心』をアピールした。いよいよ、来週8日(金)から全国公開。
公開表記
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
11月8日(金)より全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)