登壇者:横浜流星、吉岡里帆、森本慎太郎(SixTONES)、山田杏奈、山田孝之、藤井道人監督
映画『正体』の完成披露舞台挨拶が都内で行なわれ、主演の横浜流星、共演の山田孝之、吉岡里帆、森本慎太郎(SixTONES)、山田杏奈とメガホンを取った藤井道人監督が出席して作品についてクロストークを行った。
本作は、染井為人の同名小説(光文社文庫)を映画化。一家殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一(横浜)の逃走劇を描いたサスペンス・エンターテインメント。劇中、鏑木(横浜)は自身の冤罪を晴らすために脱獄。全国に指名手配される中、顔を変え、偽名で日本を縦断する343日間が描かれる。4年がかりで完成した作品。
鏑木として脱走劇を演じた横浜は「サスペンスですが、エモーショナルな人間ドラマになっていてエンタメに仕上がっています。皆さまに観ていただきたい。4年の月日を経て完成して、本日皆さまにお届けできることを嬉しく思います。自分の中でも一つの集大成となった作品になりました」と感慨深げに挨拶した。
また、「監督やメイク部と相談してリアルを追求しました。やりすぎにならないよう注意しました」と明かした横浜は、「鏑木は自分が信じてもらえない状況に陥って、脱獄します。正しいとは思えない行動ですが、彼の真意や目的を見失わないことを一番大事にしていました。それをずっと維持するのはとても苦しかったです」と役作りに苦労したことを吐露した。
「那須」と名乗る鏑木と出会い無罪を信じる沙耶香役を演じた吉岡は「自分の人生を生きられていることがどんなに尊いか。生きている喜びを最後に感じていただけるような作品になっています」とアピールした。
吉岡は撮影中のエピソードも披露。「夏篇のクランクアップのときに出番はないのに山田(孝之)さんがたくさんのエキストラに交じって撮影に変装して参加してくれたんです」と嬉しかったというエピソードを披露した。
山田孝之は「外での撮影でエキストラさんがたくさん必要と聞いて、『じゃあ僕も行きます〜』って言いました(笑)」と説明していた。
劇中、鏑木を執拗に追う刑事・又貫役を演じた山田孝之は、「夏の時点でとんでもないストレスがかかってしまい、冬の場面ではちょっと毛量が薄くなっているかも……。刑事として追い込む立場でしたが、私も追い込まれた立場で板挟みでした。『絶対ハゲる』と毎日思っていたので、ちょっとハゲてると思います」と、長期間に及んだ撮影を振り返って、とんでもないエピソードを披露し、会場を驚かせた。
大阪の工事現場で働き、親しくなった「ベンゾー」と名乗る男が鏑木だと気づく和也役を演じた森本は「夏の撮影では滝のように汗をかいているし、冬の撮影では吐息が白い……。時間軸を大事にしたからリアルさが本当に出ていると思います」と撮影を振り返る。
「桜井」として介護施設で働く鏑木に恋心を募らせる舞役の山田杏奈は「夏編では1日だけ撮影に参加したのですが、舞としての時間経過があるので、そのときのために髪を染めました。良かったら注目して観てください」とアピール。
藤井監督は「時間がかかったからこそ、お互いにレベルアップした。流星もよく言っているんですが、4年かからなければこれだけの素晴らしいスタッフ、キャストは集まらなかったと思います。期せずして、運命がぶつかる瞬間があるんだなと思っています」と4年は必要な年月だったと、これまでの道のりをかみ締める。
後半、タイトルにちなみキャストたちが、横浜の”正体”についてフリップに書いて語り合う場面があった。
吉岡は「生身」と書いた。「アクション・シーンは、ほぼすべて横浜さん自身が演じられています。危険を顧みず、すべてを映画に捧げる感じが“生身”だなと感じて、書きました。心もむき出しの状態で演じられているのも印象的でした」と話す。
山田杏奈は「仕事人」とフリップに書いて、横浜の熱演を称賛した。森本は横浜の正体を「おしゃべり」と回答。「クランクインする前に監督たちと一緒に、食事に行ったんですが、横浜さんとは一回も目が合わなかったんです。会話も『うん……』で終わってしまった……」と話した。しかし「いざ撮影が終わってみると、笑顔でしゃべってくれて、目も見てくれて、たくさんしゃべってくれました。優しい人で大好きになりました」と明かした。横浜は、役作りのために距離感を保っていたという。
山田孝之は熟考の末、頭に浮かんだ言葉だという「水」と答えた。「何を書こうかと迷っているうちに、他のメンバーの答えを聞いてしまい、『これはもう書けない』と思い、ふと出てきたのが“水”。そう書いて、あとは流星に振ろうと決めました」と横浜に丸投げしたこととを明かし、会場に笑いを誘った。
横浜とは長編劇場映画では3度目のタッグを組んだ藤井監督は、フリップに「武士」と書いた。「侍のような魂を持っていて、ちょっとはサボりなさいよって思うくらい、仕事にストイック」と真面目な横浜の姿について話す。藤井監督は、「いつも応援しています」と横浜にエールを送った。
そんな横浜は自身の正体は「なし」と書いた。「自分から自分のことをあまり伝えたくない。役者という仕事はミステリアスでいることがいいと思うし、自分の人柄を知られて作品に影響するのも嫌なので教えません」と凛々しい顔で自身の信念を語った。
最後に横浜は「純粋な気持ちで観てほしい。『信じるとは』ということや、冤罪の怖さについて改めて考えさせられましたし、(鏑木の)希望を持って生きている姿に希望をもって生きていこうと心を動かされました。我々の覚悟や思いが込められているので、ぜひ受け取ってください」と客席に向かってメッセージを送った。
(取材・文・写真:福住佐知子)
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配給:松竹
2024年11月29日(金) 全国公開!
(オフィシャル素材提供)