沖縄発のオムニバス映画『ココロ、オドル』の完成披露試写会がアップリンク渋谷で開催され、主演の尚玄と岸本 司監督が舞台挨拶に登壇した。また、第二話に出演した仁科 貴も飛び入りで参加した。
本作は、沖縄の慶良間諸島に属する、美しくも雄大な自然に恵まれた座間味島を舞台に、不器用ながらも互いに想いを伝え合おうとする3組の家族の心模様を描いている。生きること、愛する人と向き合うことにもがきながらも、島の人々の大らかな愛とユーモアに包まれ、沖縄の“アオ”に身を浸し、“ココロ”が解きほぐされていく者たち。その生はやがて、ゆるやかに、自然と生きとし生けるものに感謝を捧げるかのような“オドリ”に讃えられ、観る者の魂も至福の“トキ”にいざなわれてゆく。心と目に深く染み入る美しい作品だ。
SSFF & ASIA 2015「ジャパン部門」優秀賞、LA映画フェスタ・コンペティション「ゴールデン・ジパング賞」を受賞した短編映画をベースに、見事な長編作品に仕上げた岸本 司監督はまず、「本日は試写会に足をお運びくださいまして、ありがとうございました。この映画は短編「こころ、おどる」から始まって、長編として完成しました。いま沖縄では短編がよく撮られていて、例えば(ガレッジセールの)ゴリさんが監督した映画『洗骨』(本名の“照屋年之”名義で発表)も短編から長編化作品になったものです。“沖縄映画”というジャンルを創ろうとみんなで頑張っているところですので、この場にもしも映画関係者の方がいらしたら、ぜひ沖縄で撮影してください。ロケーションもすごく魅力的な場所が多いですし、沖縄で撮るのは実に面白いです。よろしくお願いします」と沖縄を熱くアピール。3話のオムニバスをつなぐ重要なキーパーソンを演じた尚玄は「皆さん、こんばんは。今日はお越しいただいてありがとうございます。沖縄では2月1日から上映中で、別府、大阪と回り、ようやく今日が東京で初披露となります。どういう反応があるか、すごく楽しみにしていました。ありがとうございます」と感慨深げに挨拶した。
沖縄出身の俳優である尚玄は、これまでも沖縄を舞台にした作品に出演してきたが、意外なことに、沖縄の監督とのタッグは岸本監督のみだと言う。ちなみに、岸本作品への出演は本作で5本目となる(長編『アコ―クロー』、TVドラマ『ハルサーエイカー2』、短編「こころ、おどる」、短編「遠い時間、月の明かり」)。それほど深い信頼で結ばれた岸本監督を中心に、沖縄出身のキャスト・スタッフと心をこめて創り上げた本作にははやり、格別な思いがあるようだ。「まず何よりも、方言で芝居をするというのが僕にとっては圧倒的に違います。あとは、特有のテンポ感ですかね。特に、岸本さんの作品には欠かせない存在である“おばぁ”を演じた吉田妙子さんとの芝居のテンポはとても気持ち良くて、楽しく演じられました」。
また、座間味島での撮影の思い出を聞かれると、尚玄は「今回は短編があって長編になりましたし、僕は全3話に出ていたこともあって、結構長期で滞在しました。撮影地に行ったときに僕がいつも最初にするのは、まずは地元の人々とよく話をして打ち解け、その土地の空気とテンポ感を肌身に馴染ませていくことです。今回も、地元の方たちには出演していただきましたし、一緒に飲みに行ったりしましたね。あと、沖縄には各地に“御嶽(うたき)”という神にお祈りをする聖域がありますが、この島の“御嶽”でも、地場の力をお借りして映画を撮らせていただきたいと、心をこめて手を併せました」と語った。
ちなみに、本作の第三話「家族になれない父と娘」には、沖縄出身ではない俳優・加藤雅也が本来のダンディーさを封印し、ワケありで余所から流れつき定住した果てに、妻子に翻弄されるくたびれた初老の男役で出演している。悲哀をたたえながらも、深い愛情を胸に秘めた男の生き様を体現、滋味溢れる好演で強烈な印象を残している。実は加藤のデビュー映画『マリリンに逢いたい』(88、加藤昌也名で出演)も、まさに座間味島を舞台にした作品で、デビュー30周年という節目に、また同島に戻って映画に出演することになったという不思議な縁に、岸本監督も「とても感慨深い想いをされている様子だった」と明かした。
ここで、観客に混ざって映画を鑑賞していた俳優・仁科 貴がMCに促され、飛び入りで登壇した。仁科は、息子を兄夫婦に預けたまま姿をくらまし、犯罪に手を染めた末に5年ぶりに突然帰郷した男の役で、第二話「心の通じない親子」に出演している。仁科も加藤雅也同様、関西出身の役者だ。「これまで僕は沖縄と全く縁がなかった人間でして、この度はひとえに、尚玄さんとのご縁で参加させていただきました。ある日突然、電話がかかってきて、“なんか、仁科さん、沖縄人に見えるんですよね”って言われて(笑)」と出演の経緯を明かし、会場の笑いを誘った。「そのお誘いがきっかけで出演させていただきましたが、何より難しかったのは方言でした。普通に会話する分にはいいのですが、実際お芝居をしてみると独特の間とかテンポがありますので、なかなか地元の方たちのようなわけにはいかず……。短い間でしたが、僕なりに頑張らせていただきました。ありがとうございました」と感謝の言葉を添えた。
最後に、岸本監督は「『ココロ、オドル』はようやく東京でも公開が決定し、新宿K’s Cinemaさんで6月22日(土)から上映します! 今回ご覧になった方々も、皆さんにお勧めいただけますようよろしくお願いいたします」と挨拶。尚玄は「本日はご来場いただきまして、本当にありがとうございました。岸本さんが口ベタなんでね、もうちょっと飲ませてきたらよかったな、と思うんですけど(笑)。『ココロ、オドル』は、いつもやっているチームで一生懸命創り上げた作品です。ゴリさんの『洗骨』は大健闘していますが、沖縄の映画が東京でヒットするというのは簡単なことではありません。今回ご覧になって、気に入ってくださったら、SNSや口コミで宣伝していただけたら大変ありがたいです」と熱くアピールした。
また、今回MCを担当した宮島真一も沖縄出身で、MCやラジオDJとして地域に根差した活動をしている。「今日は、映画『ココロ、オドル』をぜひ皆さまに知っていただきたく、また、これから東京での上映を控えて、この映画を全国に広げていきたいという想いで試写会を催しました。沖縄ではいま、沖縄を舞台にした映画をサポートするためにさまざまな取り組みが行われています。本日は、沖縄県のフィルムオフィス、そして、沖縄県沖縄市KOZAフィルムオフィスのスタッフも来ています。沖縄で映画を撮りたい方たちとつながりたいという想いもあって、この上映会に駆けつけました。この場限りではなく、映像の力を通して、皆さまと沖縄を結ぶパイプがどんどん太くなっていけばいいなと心から願っています。僕は沖縄市内で『シアタ―ドーナツ』という小さな映画館を運営しています。映画は映画館で観ようという思いをこめつつ、“沖縄映画”をどんどん上映して、地域の皆さんに愛されるような場を提供しようと奮闘しています。サポートしていく側として今後とも、創る側・発信する側の方たちとつながっていきたいです」と、“沖縄映画”に懸ける関係者全員の想いを代弁する形で会場に語りかけ、沖縄愛に満ちた親密な雰囲気のなか、舞台挨拶を締めくくった。
登壇者:尚玄、岸本 司監督、仁科 貴
MC:宮島真一
(提供素材より文・構成:Maori Matsuura、写真:オフィシャル素材)
公開表記
制作・配給:株式会社ファンファーレ・ジャパン
沖縄県那覇市桜坂劇場にて大ヒット中ほか 全国順次公開!
6月22日より、新宿K’s Cinemaにて公開ほか 全国順次公開