登壇者:近藤良平(コンドルズ主宰)
運動神経抜群のストリート・ダンサーだったムンバイに住む青年マニーシュ。偶然入ったダンス・スクールで気難しいイスラエル人のバレエ・マスター、イェフダに出会い、バレエの魅力にとりつかれた彼は短期間で驚くような成長を見せるが、バレエ・ダンサーとして活躍するためには、マニーシュはすでに年を重ねすぎていた――。マニーシュの想いに答えるため、共に苦悩し、努力を続けるイェフダ。彼らは、自分たちが<何者であるのか>を探し求めながら、互いの人生を変えていく。
世界のドキュメンタリー映画賞を席巻中! 数々の困難にも、師を信じ、一歩ずつ前進するマニーシュの姿に熱く胸を打たれる、感動のドキュメンタリー『コール・ミー・ダンサー』(11/29公開)。
ムンバイで大学に通うマニーシュは、ストリート・ダンスに興味を持ち独学で練習を始める。ある日、あるダンスの大会で注目を浴びた彼は、出場していた他の選手にダンス・スクールに通うことを勧められ、決して豊かな家庭環境ではないながらもマニーシュに一生懸命、教育を施してきた両親からは反対される中、ダンス・スクールの門を叩くが、そこでバレエを教えるイスラエル人イェフダと出会い、バレエの虜になってしまう。優れた運動能力とたゆまぬ向上心を持つマニーシュに、必死で応えるイェフダ。しかし、バレエダンサーとして活躍するには、マニーシュは年を重ねすぎていた……。
この度、本作の先行上映を11/25(月)に開催、トークゲストとして日本最高峰の舞台人の賞である芸術選奨文部科学大臣賞を受賞!映画やCMなどでも振付や出演を手がけるなど、日本のコンテンポラリー・ダンスを牽引しながら世界で活躍。2022年には彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督に就任、2024年度には日本舞踊芸術の発展に著しく功績のあったアーティストに贈られるニムラ舞踏賞を受賞、池袋の「にゅ〜盆踊り」の仕掛け人まで! 各方面で活躍目覚ましい近藤良平<コンドルズ主宰>を迎えたトークイベントが開催された。
本編上映後に開催された舞台挨拶。会場からの大きな拍手に迎えられ登壇した近藤は、映画について「とてもピュアな部分が描かれているドキュメンタリーだなと思いました。とにかく家族愛の部分も含めて、いろいろなメッセージがあって。僕はそこがとても良かった」とコメント。近藤自身、ダンスを始めた時期が大学時であるなど、本作の主人公マニーシュとの共通点があると指摘されると、「ここだけはマニーシュと一緒だと思うのですが、僕は高校の時に少年隊にあこがれて。バク転、バク宙を極めようと思ってずっと練習していました。その結果、大学でダンスをやるようになったんです。勝手にマイケル・ジャクソンを師匠にしていました」と述懐。「マニーシュもそうですけど、僕もクラシック・バレエの世界や、ダンスの領域の深さというものにはなかなか接する機会がなかったので。そこから目覚めていったという感じですかね」と付け加えた。
富裕層の趣味であり、ダンスで生計を立てていくのは非常に難しいと言われるインド。マニーシュ自身もパトロンの資金援助を頼ることで、海外のカンパニーに進出することが可能となった。そんな状況について「劇場でお金をとって見せるダンスというのはヨーロッパやアメリカの方がたくさんあるので、(ダンサーになれる)分母も多い。一方、ダンスを見るという環境は日本では少なくて。おそらくインドも少ないでしょう。そういう意味で、舞台芸術としてのダンサーとして生きていくのは難しいのではないでしょうか。もちろん(舞踊シーンが特色の作品が多い)インド映画などもあるので、そう単純ではないかもしれませんが」と説明する近藤。
さらに男性がダンサーとなることについても「今はそんなに男性の役割、女性の役割といったところではない踊りもたくさんあるので、前よりは良いと思うんですが、それでもインドからダンサーとして成功していくという道は、この映画を観ても、本当に大変なことなんだなと思いました」としみじみ。さらに自身の若き日を振り返り、「僕が若いときは男性で踊る人は少なかった。今はブレイク・ダンスとか、いろいろな踊りが増えたので男性のダンサーも少しは増えてはいます。ただバレエ教室というのは本当にたくさんあるんですけど、その中で男性舞踊師は少ない。そういう状況は続いています」と明かす。
プロとしてやっていくためには大学時代から踊りを始めるのは遅いとされているクラシック・バレエ界。インドではいわゆる体育の授業にあたるものがないという側面もあり、彼の身体能力に注目される機会が遅かったという。しかし、マニーシュのダンス上達スピードは目を見張るものがあり「映像で観る限り、抜群の跳躍力と、素直さがある。だからどんどん吸収していって、みるみるうちに上手くなっていきました」と近藤は指摘。またマニーシュが通っていたスクールでは、マニーシュのライバルである年下のアーミルがその才能を開花させ、ロイヤル・バレエ学校にインド人として初の入学を叶えていった中、アーミルへの嫉妬心についてマニーシュは「バレエをはじめたタイミングが違うのだから、そこは考えても仕方がない」と語っていたという。
そのエピソードを聞いた近藤は「本来は『ガラスの仮面』みたいに大変なことになるのかもしれないですけど。でも彼にはそういうのを感じさせなかったですね。まっすぐとしていて、いい意味で<自分のことに対して悩む>ということでしたね」と指摘する。
年齢というクラシック・バレエに対する壁にぶち当たったマニーシュに対して、師匠であるダンス教師イェフダはコンテンポラリー・ダンスへの転向を提案することになる。「僕もそこがとても面白かったんです。やはりダンサーをやっていく上で、クラシック・バレエだけを目指すというのはものすごく勇気がいることですし、それを持続するのも勇気がいることなんです」「特にクラシック・バレエで要求されることは、コンテンポラリー・ダンスの世界にいくと、急に崩れてしまう。つまりまったく違うことを要求されているということに近いんです。だからマニーシュにとっては、それまで正しいと思ってやってきたこととまったく違うことをやることになったわけなので。そこを選ぶのは勇気がいることだと思いました」と感嘆。
バレエの話でありながらも、家族、師匠との絆の物語でもある本作。特に、マニーシュの才能を信じて、彼を支えていく、ダンスの師匠・イェフダについて「現在も、インドで若いダンサーたちの才能を育てているらしく、すごいなと思いますよ」と感服。その流れで「近藤さんにとっての師匠とは?」という質問が寄せられると、「僕には残念ながら師匠という存在はいないんですが、そういう意味ではマイケル・ジャクソンが師匠ですね。お会いしたことはないんですが」と笑いながら付け加えた。
ストーリー
ムンバイで大学に通うマニーシュは、ストリート・ダンスに興味を持ち独学で練習を始める。ある日、出場したダンスの大会で注目を浴びた彼は、出場していた他の選手にダンス・スクールに通うことを勧められ、決して豊かな家庭環境ではないながらもマニーシュに一生懸命、教育を施してきた両親からは反対される中、ダンス・スクールの門を叩くが、そこでバレエを教えるイスラエル人イェフダと出会い、バレエの虜になってしまう。優れた運動能力とたゆまぬ向上心を持つマニーシュに、必死で応えるイェフダ。しかし、バレエ・ダンサーとして活躍するには、マニーシュは年を重ねすぎていた……。
(原題:Call Me Dancer、2023年、アメリカ、上映時間:87分)
キャスト&スタッフ
監督:レスリー・シャンパイン、ピップ・ギルモア
製作:レスリー・シャンパイン
出演:マニーシュ・チャウハン
オフィシャル・サイト(外部サイト)
SNS:@CallMeDancer_JP
公開表記
配給:東映ビデオ
11月29日(金) 新宿シネマカリテほか全国公開
(オフィシャル素材提供)