毎年、新しい出会いに満ち、映画の未来を照らしてきた国際映画祭「東京フィルメックス」。2024年、「第25回東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2024」を11月23日(土)~12月1日(日)にて開催。本映画祭は、アジアを中心に世界から新進気鋭の監督たちの作品を集め、どこよりも早く、ここでしか観られない注目作品が ラインナップされる国際映画祭。これまで、『時代革命』(第22回特別招待作品)の特別上映、今や世界に名を知られた濱口竜介監督の初期作品『PASSION』(第9回コンペティション部門)や、気鋭の監督、奥山大史の『僕はイエス様が嫌い』(第19回特別招待作品)などを一早く上映するなど、まさに映画を通じて”世界”とつながる、映画祭としての意義を発信し続けている。
このたび、いよいよ本会期も翌日までとなる11月30日(土)に「第25回東京フィルメックス」授賞式を実施! 各賞が発表され、受賞者からは喜びの声が届いた。
最優秀作品賞は、デア・クルムベガスヴィリ監督『四月』(フランス、イタリア、ジョージア)
「この大胆で冷徹な長編映画は、保守的な農村地帯で女性が直面する厳しい現実を突きつけている。彼女たちの自由は、それが身体に関わるものであろうと欲望の表現に関わるものであろうと、絶え間ない闘いである。監督は、骨太なリアリズムとシュールレアリズム的なホラーを融合させ、吸い込まれるような挑発的な体験を生み出している。緻密で丹念に作り込まれた撮影は、観客の視線を捉え、私たちの視点や関わりを積極的に考えさせる。この作品は、形式的な勝利であるとともに計り知れない関連性と共鳴性をもつ作品である」と評された本作が見事、<最優秀作品賞>を受賞!
残念ながら、クルムベガスヴィリ監督の登壇は叶わなかったが、ビデオメッセージが到着。「この受賞は、私にとっても、スタッフ全員にとっても大きな意味がある。この映画は制作に参加した全員の努力と献身の結晶だからです。映画を作ることは決して容易な道のりではありませんし、特にこの映画に関しては多くの制約があり、ジョージアでこの映画の制作を手伝ってくれた人々は非常に勇敢でした。この受賞は私にとって大切です。なぜなら、この映画に寄与してくれて、この映画の存在を可能にしてくれた全ての人と分かち合えるからです」と、会場に集まった観客と審査員たちへ喜びを伝えた。
審査員特別賞は、サンディヤ・スリ監督『サントーシュ』(インド、イギリス、ドイツ、フランス)、スペシャルメンションは、チャン・ウェイリャン監督&イン・ヨウチャオ共同監督『白衣蒼狗』(台湾、シンガポール、フランス)
「容赦ないストーリー展開のダーク・スリラーで見事に演じられた女性キャラクターを通じて、社会の硬直性と不平等を痛烈に描き出している。舞台は現在のインドではあるが、世界中に蔓延している妥協と呼応している」作品として『サントーシュ』が受賞!
学生審査員賞とダブル受賞となったスリ監督からは、「本作で日本に帰ってくることができたのは、私にとってとても意義深いことだった。インドに関する多くの問題について多くを語ると同時に、サントーシュにとって非常に個人的な、そして非常に普遍的な映画を作りたかった。そして、東京でこのような素晴らしい上映会を開催し、素晴らしい観客がたくさんの興味深い質問に熱心に応えてくれたことは、本当に素晴らしい経験でした」と感激の気持ち溢れるビデオメッセージが届けられた。
そして、「この映画は、その説得力のある映画言語によって、闇、汚辱、残酷な現実を力強く描き出し、人間の本性の深さに立ち向かう勇気を示している」と評された『白衣蒼狗』には、スペシャルメンションが贈られた。
登壇したチャン・ウェイリャン監督とイン・ヨウチャオ共同監督は「私たちのことをこのように温かく受け入れてくださってありがとうございます。容易な映画ではなかったですが、この映画に付き合ってくださったお客さん、ずっと見てくださった方、その時間にも感謝したい」と何度も御礼の気持ちを挟みながら話していた。
学生審査員賞は、サンディヤ・スリ監督『サントーシュ』(インド、イギリス、ドイツ、フランス)
「サスペンスフルなドラマの面白さとそこから浮かび上がる社会構造の描き方に驚かされました。人物の魅力を引き出すカメラワークからは、映画の持つ繊細で挑戦的な力強さを感じました。終盤、通り過ぎる電車越しでコマ送りのようになるふたりのショットが、息を飲むほど素晴らしかったです」と、学生たちが選んだ本作。スリ監督からは、同賞についてもビデオメッセージが届いており、「この賞を受け取ることは、私にとても大きな意味がある」「26年前、私は1年間英語の教師をしてしたときに、たまたま山形ドキュメンタリー映画祭で観た映画に感銘を受け、すぐにカメラを買って映画を撮った」と、日本での”映画”との偶然の出合いからこそ、今があると振り返った。そして、その“映画”で日本に戻ってきて嬉しい、と受賞の喜びいっぱいの笑顔を浮かべていた。
観客賞は、ロウ・イエ監督『未完成の映画』(シンガポール、ドイツ)
会期中の行われた2回の上映は完売、Q&Aでも熱心な質問が途切れず、山中瑤子監督との対談イベントも満員になるなど高い人気を見せたロウ・イエ監督作が、見事観客賞に! ロウ・イエと脚本・プロデューサーを務めたマー・インリーが共に登壇。マー・インリーは「非常に感謝しています。 観客賞という賞は、ロオ・イエ監督にとっては“初めての賞”なので、本当に皆さんへありがとうを申し上げます」と、これまでも数々の受賞を受けてきたロウ・イエにとって、まさかの“初”受賞だったというサプライだったことも明かした。
またステージには、共同プロデューサーのアレックス・ローも登壇。マー・インリーから紹介を受け挨拶、同じく受賞の喜びと観客への感謝の気持ちを伝えた。
「タレンツ・トーキョー・アワード」受賞者も登壇!
映画分野の人材育成プロジェクト「タレンツ・トーキョー2024」。東京都、アーツカウンシル東京、タレンツ・トーキョー実行委員会の共催、およびベルリン国際映画祭との提携、ゲーテ・インスティトゥート東京の協力によるこの事業として11月25日から12月1日の7日間にわたり、アジアから17名の映画の未来を担う人材が参加。11月28日(木)に実施された「公開プレゼンテーション」の審査を経て見事「タレンツ・トーキョー・アワード」に選ばれたのは、マイ・フエン・チー『The Rivers Know Our Names』。また、今年は、ハグヴドラム・プレヴオチル「The Vision of Lonely Mountains」、畠山佳奈『Dollyamory』、ヤン・ハオハオ「Naked in Glendale」の3企画にスペシャルメンションが与えられた。
ロウ・イエ「我々の世界を、夢を、広げてくれた」と参加し全ての監督たちを賞賛!
授賞式の最後には、国際審査員を代表して、今年を講評したロウ・イエ。
「今回はこのお2方と一緒に審査を担当させていただき、本当に光栄で、とても楽しい時間だった。そして作品を届けてくれた監督の皆さんに心から感謝したいと思う。この監督たちの視線でもって、世界を色々と見ることができた。我々の世界を、夢を、広げてくれた。ありがとうございます」と、映画祭で観たすべての作品との出合いが素晴らしい時間だったと、かみしめるように話していた。
その言葉を受け、場内からも惜しみない拍手が送られ、授賞式は終了した。
「第25回東京フィルメックス」開催概要
名称:第25回 東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2024
会期:11月23日(土)~12月1日(日)
会場:丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町
上映プログラム:東京フィルメックス・コンペティション、特別招待作品、メイド・イン・ジャパン、プレイベント
公式HP:https://filmex.jp/(外部サイト)
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