イベント・舞台挨拶

『アット・ザ・ベンチ』トークイベント

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 登壇者:森 七菜(俳優)、今村圭佑(撮影)、奥山由之(監督)

 映画監督/写真家の奥山由之が自主制作でつくり出したオムニバス長編映画『アット・ザ・ベンチ』が11月15日より東京・大阪の3館で上映がスタート、現在大ヒット公開中だ。
 初日から満席回が続出の大盛況で、これまで複数回行われた奥山監督とキャスト・スタッフ陣を迎えたトークショーも全回満席。また本作の舞台となった多摩川遊園のベンチに実際に訪れたことを報告する声がSNSでも多数寄せられ、観客の間では聖地化。そんな中、口コミが口コミを呼び、「地元でも上映をしてほしい」という全国からのラブコールを受けて、現在は60館での上映が決定。この冬話題の作品となっている。

 公開5週目の12月20日(金)からは京都・兵庫・福岡・広島なども加わり全国15館へ、6週目からは全国33館に上映館が拡大する。21日(土)、テアトル新宿では本作の大ヒット&劇場拡大記念として第2弾トークイベントが開催され、[第3編]の出演者となる俳優の森 七菜、撮影の今村圭佑、そして監督の奥山由之が登壇。回を重ねるごとにリピーターの存在が多く見られるようになった本作だが、この日も満員の客席には数多くのリピーターが来場。奥山監督も「ありがとうございます」と笑顔を見せた。

 森が出演する第3編の脚本を担当するのは、劇作家で演出家の根本宗子。このエピソードでは、家出をした姉(今田美桜)と、そんな姉を探しにやってきた妹(森)が互いに感情をむき出しにしながら、激しい言い合いをするさまを描き出している。膨大なセリフ量と、ハイテンションで激しい動きが展開されるドラマということで、森自身「何よりもセリフを覚えるのが大変でした」と述懐。また根本ならではのセリフ表現についても、「たとえば同じ言葉でも、ちょっと言い回しが違うところがあったりして。“男”とか“男の人”っていう感じの“言い回し問題”があったんです。だからお風呂の中でずっと格闘してました」と振り返った。

 そして、その芝居をカメラマンとして間近で見ていた今村が「ちゃんと台本と同じことを言っているのかも分からないようなテンションだったから。本当に言っているのか、アドリブが入っているのかも分からなかった」と振り返ると、奥山監督も「完成した作品を、脚本を読みながら見返してみたんですが、ほぼそのままだった。あれだけ感情的かつ身体的にも激しい動きのあるような、うっかりすると制御が効かなくなる長回しを、丁寧に演じきることは本当にすごいことだなと思いました」と感服した様子。

 そんなふたりの言葉に「(今田)美桜ちゃんが言葉の発端をつくってくれたんで。わたしはそれについていくだけで。ある意味コバンザメみたいな感じでした」と笑う森。実際に完成した本編を観て「全部通して観た時に、わたしたちが普通だと思って叫んだりしながらやっていたんですが、実は全体の中であんなに嵐(のエピソード)だったとは。他のチームと比べても異質な感じがして。それはすごくうれしかったです」と感じたという。

 本作の基本的な撮影は、15分のシーンをぶっ通しで撮影し、それを数回繰り返し、編集でそれらの映像を組み合わせるというスタイルで行われている。そんな撮影を「普段の撮影とは違いますね。15分間、同じシチュエーションで、しかも会話だけで演じるというのはなかなかないですよね。わたしはあまり経験がないですね」と振り返った森。

 セリフを覚えるプロセスを言語化するべく、「まずは絵として覚えて。最初の段取りのときは、頭の中で覚えている状態なんです。それで段取りで動きを確認しているうちに、こういうことなんだなと。やっと身体に染みついてくる感じ」と森が説明すると、今村も「そう、俺もセリフは絵で覚えてる」と続けてドッと沸いた会場内。「だから初日とかはセリフを覚えられなくて。相手がどう返してくるのかも分からないんで」という森に、今村も「相手がいることなので。相手がどう返すのか、その間が分からないからね」と補足説明すると、まさに我が意を得たり、という感じで「そうなんですよ!」と共鳴し合っている様子の森と今村だった。

 奥山監督が森との撮影を通じて感じたことは、「現場では小さなモニターで確認していたので、細かいところは気づかなかったんですが、編集時にじっくりと見返すと、例えば姉(今田美桜)の言葉を聞いている時の表情がものすごく胸を打つ表情をされているんですよ。現場では気づかなかった目の微細な動きなども本当に引き込まれるものがあって。あらためて素晴らしいお芝居をしていただいたな」と感じたという。さらに「森さんのお芝居って常に流動性というか、不確実性に満ちている感触が、人物に実在感と説得力を持たせていて、スクリーンから目を離せない理由のひとつだと思う」とも感じたという奥山監督に、今村も「そういうの感じますよ。撮影って、台本があって、いちおう僕たちつくる側の想像ってあるじゃないですか。でも彼女は基本的にどっかに行っちゃうので。自分たちが想像してないことをしてくるんだけど、俺らみたいなのはそういうのが好きなんですよ。だから流動性を感じられるんですよね」とその意見に深く同意する。

 さらに今村は「今回は(役柄としては)どちらかというと受けるほうじゃないですか。ちょっと前なら逆だった。発散する側の役が多かったと思うんで。大人になったなと思って。謎の親戚のおじさんのような気持ちでいます」としみじみ付け加え、会場を沸かせた。

公開表記

 配給:SPOON
 テアトル新宿、109シネマズ二子玉川、テアトル梅田ほか大ヒット公開中

(オフィシャル素材提供)

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