北海道の小さな町の自然を背景に、息子を失った父親と、夫を亡くした妻、そして自閉症の娘が織りなす、失われた家族の再生の物語『美晴に傘を』が、2025年1月24日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA ほかにて公開する。
『底なし子の大冒険』『狼少年タチバナ』などで知られる劇団牧羊犬を主宰し、短編映画では国内外の数々の賞を受賞してきた渋谷 悠の初長編作品。家族の再生という、映画では幾度となく語られてきたテーマを新鮮な物語へと昇華させ、魅力的な登場人物たちが観る者を心地よく包み込む。主演には、息子を亡くし後悔の波に溺れる漁師・善次に升 毅、言葉少なに圧倒的な存在感を見せつける。障がいを抱える娘を懸命に守ろうとする母・透子の心の機微を田中美里が繊細に演じる。聴覚過敏によって聴こえてくる様々な音を擬音語に変えられる才能を持つ美晴役には『麻希のいる世界』主演の日髙麻鈴が挑んだ。その他、和田聰宏、宮本凜音、上原剛史、井上 薫、阿南健治らが脇を固める。
この度、『美晴に傘を』で透子役を演じた田中美里のインタビューを解禁。
本作は、喧嘩別れをしたまま息子・光雄を亡くし、後悔に苛まれる父の善次(升 毅)の元に、光雄の妻・透子が二人の娘を連れ、突然訪れてくることから物語が始まる。田中が演じた透子は、朗らかな性格ながらも娘を守ることに必死な母親という役どころだ。田中と主人公・善次を演じた升毅は舞台「浪人街」(2004)以来、21年ぶりの共演となるが、田中は升について「20代の頃に舞台でご一緒したことがあり、すごくエネルギッシュな印象がすごく残っていました。月日を経て私も結構大人になってまた共演させていただけたのですが、升さんが演じる善次は善次そのものにしか見えなくて、初めて作品を見た際に『升さんのような深みのある演技を、私はあと何年経たらできるんでしょうか』とお伝えしたほどでした。“そこにそのまま存在する”というのは役者としてとても難しいことだと思うのですが、ただ座っていたり、ただ見つめているシーンが本当に善次さんそのものでした」と升の演技にいたく感銘を受けたことを明かした。
また、透子の娘の美晴は、聴覚過敏のある自閉症を持っており、透子は美晴に対してつい過保護になってしまうのだが、美晴を演じた日高麻鈴については、「すごく難しい役柄だったと思うのですが、細部まですごく研究をされていて、そしてすごくまっすぐに演じてくださっていました。美晴を見守る母親として、本当に心配になってしまったり、美晴が自分の手を離れられるように頑張ろうという気持ちを自然と持てるような演技をしていただいたので、すごく感謝をしています」とコメント。透子が美晴とその妹の凛に夫が遺した絵本を読むシーンは、作中でも印象的で母親・透子の温かさがたっぷりと感じられるシーンであるが、田中にとってもお気に入りのシーンであると語った。
本作は“言葉を紡ぐこと”を大切に描いた作品だが、田中自身が大切にしている言葉は、デビュー以来変わらず「丸と書いて“まる”」という言葉だという。「あまり角のあるものは得意ではなくて、丸くて柔らかい人間関係や話し方、接し方ができれば良いなと思っていて、好きな言葉です」と田中の人柄がわかるような理由と合わせて語っていた。
本作はいよいよ来週・24日(金)から公開となるが、公開に向けて「家族はいろいろな形があっていろいろな悩みや関係を抱えていたりすると思います。本作はそういったものがぎゅっと詰まった作品になっていると思います。きっと皆さんも登場人物の誰かに自分を重ねられるような気がするので、そういったところを見ていただけたら嬉しいです」と、たくさんの方々に見ていただけたらと、メッセージを寄せた。
公開表記
配給:ギグリーボックス
2025年1月24日(金)より、YEBISUGARDEN CINEMA ほか全国公開
(オフィシャル素材提供)